Prologue
__世界の法則が乱れた、そんな地域が世界のそこかしこを埋めている。
__その、乱れた地域をひとは崩壊地圏と呼んだ。
__崩壊した地圏にはそれぞれ特性がある。
__そのために崩壊地圏内で生まれる民のことを特性保持者と呼ぶのだ。
『崩壊地圏』より。著者〈嘆きの巫女〉。
初めて、地図を見たのはいつのことだっただろうか。
そう、いつもの商人が街に持ってきたのをチラリと見たのが初めだった。みたこともないものに興味を示して近寄れば、その商人はそれを台の上に広げてくれたのだった。
ボロボロで茶色く変色した、かつては丈夫だっただろうことがわかる布地。大きさは商人の腕を広げた以上のものだ。
緑がかった色に変色した、かつての黒いインクらしきもので線が引かれ、場所の名前が書かれて、注意書きも添えられたもの。
当時ならばかなりの珍品で、高級品だったはずだ。……今でも中産階級でなければ手は出せないだろうが。
ただ、それだけのものといえばそれだけのものだ。けれどそれは、見たこともない世界を表していて、その広さを示していて。
それに心惹かれたのだ。否。奪われたのだ。




