四月十一日
朝から学校があるというのはこれほど辛いことだっただろうか。
いつもより昨日は早く寝てるんだぞ、それでも億劫な朝、眠いというのは人を殺せる毒だ。
今日は初めての授業のある日で、そしてそれは一限目からだったのでした。私の寮から学校までは片道一時間はかかるところにありますから、朝は大体八時までには全ての支度を終わらせねばなりません。それが辛いのです。
今日の一限目は初めてということもあり、アイスブレイク的なオリエンテーションから始まりました。座っている席で3~5人程度の組を作って、各自自己紹介しつつそれをランダムで指名された一人が紹介するという流れでした。
私達の班ではどこに住んでるかや好きな映画、芸人なんかを聞き合っていたりしましたね。三人程度で小規模ではありましたが、無難にこなせたと思います。紹介者に選ばれることはなく、代わりに入学式の時から付き合いのあるSくんが私達のことを紹介してくれました。
一時間を超え、九十分を越え、オリエンテーションの後も授業は続き、先輩が登壇されて学部についての説明を受けました。うちの学部は他の所よりも毛色が違うらしくて部活やサークル、アルバイトに本気になれるほど時間は作れないらしいです。正直昨今の大学は、入ってしまえば後は遊び放題、人生の夏休みなんて言われてる具合でしたからこのクラスだけその夏休みが味わえないのかぁ、と憂鬱と言うか絶望的な気持ちになりました。
遊ぶことは若い時以外でも出来るという人はいるでしょうが、健康なまま、かつ丼大盛りで食べた後に運動できるのは若いうちだけなのです。大学ではゆっくりしたかったのですが、残念です。まぁ、元々知っていたのでショックはそこまで大きくはなかったと言えばなかったですが。
今日は壱限しかとってなかったのでその後は友達とだべりながら定食屋を見つけようとぶらぶらしてました。この大学のある街にはパッとした商店街もないし、本当に穏やか過ぎて目移りするような店もないのです。きっと町自体の対象年齢が私達よりも上振れしていたのでしょう。通り過ぎる住民も家族連れよりもご老人の方が多かったように思います。
私と友人の二人で駅の近くで見つけた定食屋に入りました。個人営業の小さな店で壁には料理の写真が並べられています。どれもこれもお世辞にも綺麗に盛り合されている感じはしませんでしたが、従業員のおばあちゃんが丹精込めて作って写真を撮ったと思うと中々味わい深いものがありました。写真だけなんですけれど。
私も友人も同じカツカレーを注文しました。出てきたのは学食のワンコインどんぶりよりも、あの壁に掛けられていたどの写真よりもおいしそうに盛り付けられたカレー。正直、壁掛けメニューの写真はどれもこれも同じ料理なんじゃないのか? って思うほどグチャグチャでしたが、このカツカレーは見た目良し味良しのうまうま飯でした!
腹も膨れて、友人とは駅が別なので分かれ、その日は早めに寮に帰りました(確か壱時くらい)
どうも眠たくなってきましたが、一念発起して溜まり始めていた洗濯物を洗おうと決めました。まだ選択するには早いかもとは思ってたんですが、それでもなぜか籠が埋まり始めてて、自分でもびっくりです。
それで参時くらいには洗濯も終わって、干してたんですけど、どうやらポケットにティッシュが入ってたらしくて、繊維が服にこびりつきまくりです。何回も叩いて叩いてどうにかその繊維地獄から脱しましたが、必要以上につかれました。
その後は気持ちよくなってしまって、寝てしまい気づけば夜の八時になっていました。自分のことながら随分と寝てしまっていたんだな、と。
とりあえず夜食は親戚が持ってきてくれたお肉を焼いて、マヨネーズと一緒に食べようと思っていたアスパラガスを炒めました。肉の焼き方をちゃんと調べてなかったので弱火でじっくりやろうと思っていたのですが、ネットで調べたところによると強火で短時間の方が良いらしいですね。後は赤身と白身の間の筋をフォークや包丁で切っておくと反り返らずに上手く焼けるとか。
そんなこんなでキッチンに立っていた私のところに唐突に四階の住人のアメリカ人のお姉さんが現れて、私は有無を言わせぬように連れ去られてしまったのです。その時偶然にも後でみんなに分けようと思っていた手土産を持っていたのが幸いでした。四階には5~6人の女子軍団がいて圧倒されました。元々高校は共学でしたし、部活も女子が多かったので耐性はあったのですが、キラキラって感じの女子軍団には流石に物怖じしました。軽く自己紹介した後、カルパスと山形限定牛肉ポテチを献上品として差し出し、彼女らの神域から退出することが許され、私はちゃんと三階に戻ることが許されました。
ですが、戻ったら戻ったで今度は三階の住人が現れていました。姉妹の如きタッグプレイヤー、これもまたカルパスのお供え物で許しを請い、やっとのことで肉にありつくことができました。
あぁ、料理と言えば、キッチンにある腐った餃子の具とゆで卵、誰のですか……
洗濯物も無事取り込めたし――なぜかバスタオルだけ生乾きだったけど――今日はこのくらいにして歯磨きして寝ようと思います。だって、明日も一限からなので。
それでは、また。