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大学生日記  作者: 江戸銀(エディ)
退寮後編
50/60

一月八日 同窓会


 昨日こんど大学の文芸部の部誌用に送る予定の小説を書いていたら朝四時まで起きてしまって、そのせいで、十時からの成人式に行く気力をなくしてしまった。前夜に父に、成人式に行くことを伝えていたから、少し悪いことをしたもんだと後ろめたく思いながら一時まで眠った。二時半に同窓会があって、急いで支度した。


 おとといの夜に渋谷のアニエスベーで母に勧められた皮のネクタイを結んで、大学入学式の時に着たスーツに腕を通した。久々で少し肩の位置がずれている気がして、もしかしたら身長が大きくなったのかもしれない。大学生でもまだ成長している。まだ私は青い。


 きっちり決めて渋谷で買ったJ-scentの珈琲の香水をつけた。ただ最後にぽかをやって革靴を履くことを忘れてスニーカーで行ってしまった。不幸中の幸いは革靴みたいなスニーカーだったことだろうか。それはそれでワンポイントで可愛かったかもしれない。


 会場には遅れて付いたと思っていたが、実はそんなことはなくて結構早めについていた。

 

 小中学校の同窓会。久々にあった仲のいい女子は元の顔立ちがハーフみたいだったが、美麗に美麗を重ねてプラダを着た悪魔の主演をやっていたアン・ハサウェイみたいになっていた。新成人の晴れ着姿じゃなくて、もっとシックな感じだ。和風感漂う煌びやかなそれだったら印象はもっと埋もれていたかもしれないが、彼女は海外モデルのようだった。


 旧友と彼女と三人でしばらく話しつつ、他の過去の同級生たちの入場を見届けた。


 だんだんとにぎやかになる会場。まるで変った新成人たちに目を凝らし、幼き日の面影を見る。みんな変わって、変わらない。


 酒を飲んできたのか一部のやつらは熱気が凄く、怖かった。


 担任の先生方まで集まったのはびっくりした。

 つい一年か、二年前に旧友とともに学校を訪問したことがあって会話をしていたから久しぶり感はなかったが、もしあの訪問が無かったら驚いてぶっ倒れていただろう。


 来てくれたのは諸島部の時に美術を担当してくれた先生や、小学一年生の時のクラスを受け持ってくてくれた先生や音楽の先生なんかだった。本当に会えてよかった。嬉しかった。でも、かつて大きく見えた背中は丸くなり萎れ始めているのが分かった。怒気を発した熱気がまろやかになる姿は、どうしてだろう。かの先生にはいつまでも私たちを叱ってくれる怒りっぽい先生でいて欲しかったと思った。


 一人二十秒のスピーチが始まり、私は幸か不幸か、トリを務めることになった。56という突拍子もない数字は私の順番を示すと同時にこの会場に来た懐かしい面々の数も象徴していた。少ないような、多いような。


 私はかつて働いていたディズニーでのことを思い出し、キャストになり切ってなんとか乗り越えたが、あの時のビデオを見返すとすごく恥ずかしくなる。自分の声が存外高く聞こえたし、フラフラしていた。見返して改善点を上げたいが、恥ずかしすぎて悶え地んでしまうために無しだ。


 それでも、現場では百点満点の締めとしてたたえられていたことだけは併記したい。その後はディズニーキャストという掴みを得て、みんなにつっかかってもらった。土日を喜捨し、私の高校の文化祭や行事やサークル活動にいけなかったバイトの日々は無駄じゃなかった。


 日は傾き、色々な人と写真を撮り、連絡先を交換した。


 その後は五時に解散し、二次会は一番親しい奴の家がやっているバーで色々なものを飲んだ。ウィスキーをウォッカで割ったやつ? 名前はゴッドファーザーとかいう劇薬も試してみたりしたが、口の中の全細菌が駆逐されるみたいなアルコール度数をしていた。他はいろいろちゃんぽんしながら酒のみを楽しんだ。


 結局有意義な話をしたことなんて全く覚えていないし、なんなら私は終始酔っ払いすぎてまったく建設的な話をしていなかった気がする。しゃべってばっかりで適当なコボケばっかり発しているのが悪い癖だ。


 六人で飲んで食べて、歌ったりした今日を忘れない。


 新成人おめでとう、私。

 また会えてよかった、みんな。



 









 

誤字報告ありがとうございました。2024/1/9

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