ヲタッキーズ72 原爆U-boatを探せ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第72話"原爆U-boatを探せ"。さて、今回は太平洋戦争の末期、秋葉原沖でU-boatが沈没します。
U-boatが運んでいた重要戦略物資を狙うトレジャーハンター、喜び組、CIA、そして、死の商人が入り乱れて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 人類悪寒計画
万世橋の下、川面に近い船着場跡にキッズの声が弾ける!
「はい、静かに!今日の校外授業では、都会の川にいる生き物を調べよう。今から神田リバーは、僕達の水族館だ!」
"まんぼう"延長下だが、万全にコロナ対策をした上で、今日の環境学習は久しぶりの校外実習。
マスクに三密にお喋り禁止(のハズw)の芳林小キッズを前に引率の先生も白衣姿で張り切ってる。
「今日のために、先生は昨夜、ココに網を仕掛けておいた。今から引き上げるぞ。網に入った"いきもの"を出来るだけ多く観察ノートに書き出そう!男子の背の高い方から3人。網を上げるのを手伝ってくれ!名前のワカラナイ"いきもの"がいたら、先生に聞くんだぞ!」
浄化の進む神田リバーでは、最近ではウナギの稚魚なども見つかっている。さて、網の中身をシートに広げると…
「うわぁ!センセ、スゴいゃコレ何?」
「おお!ソレはオイカワ、いやカワムツかな?鯉の1種だ」
「センセ、藻や水草も観察ノートに書いて良いの?」
「良いとも!最初に10コ以上書き出したら先生の給食のデザートをあげるぞ!」
今どき食べ物に釣られる小学生もレアだが…大歓声が沸くw
「センセ!観察ノートに書き出すのは"いきもの"じゃナイとダメですか?」
「と言うと?」
「この人、死んでますけど!」
網の中からゴロリと転がり出たのは…ダイバーの死体w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
15分後。現場には黄色い規制テープが貼られ、制服警官も配置され、神田消防の救急車や万世橋の鑑識でゴッタ返す。
通報からの初動がヤタラと早いのは現場が署の対岸だから。まさかパトカーにも乗れず署員が橋をワラワラ渡って来る。
「あら?マリレとエアリ、いらっしゃい。メイド服のヲタッキーズが、どーゆー風の吹き回し?」
「ヤメて、ラギィ。ソチラだってリバーは桜田門の所管でしょ?」
「テヘペロ。所轄の意地ょ。恐らく合同捜査になるわ。よろしくね!」
ヲタッキーズは、僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団で、マリレとエアリは、そのヲタッキーズの精鋭だ。
ラギィは、万世橋警察署で特捜班を率いる敏腕警部。僕とは彼女が前任地で"新橋鮫"と呼ばれてた頃からの付き合い。
「水中に16〜24時間って感じ?恐らく死んだか殺されたかした後に水中へドボン」
「弾痕がアルわ。殺人で確定ね」
「マリレ。ベルリン医大での4年が役に立ってるわね」
「ヒヤかさないで、ラギィ。5年。M5でベルリンが陥落してw」
「発見場所は?」
「理科の校外実習で仕掛けた底引き網の中に"いた"らしいわ」
「やれやれ。小学生には少し過激ね。トラウマにならなきゃ良いけど」
「問題なさそうです。全員、元気に給食を食べてるとのコト」
制服警官から報告が入る。
「さて、このウルトラマンみたいなウェットスーツだけど?」
「明らかに業務用ね」
「先月発見された、東京湾底油田の作業ダイバーかしら…あら?タグを見て」
「"モッズ・サルベージ"社。サルベージダイバーが網にかかったの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ジャドーのラボではルイナが"3次元チェス"の駒を磨いている。
ジャドーはアキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る秘密組織。
ルイナは国宝級IQを誇る超天才だ。
「あら、ルイナ。チェスを始めるの?」
「チェスはチェスでも"3次元チェス"ですょマグナ司令官代理。コーヒーブレイクに早指しでどーですか?」
「え。貴女には勝てそうにナイわ。必死に考えてるのに退屈そうにされたり、見下されたような態度をとられるのも凹むし」←
「お寂しいのかと思って。テリィたんが結構上手いらしくてトーナメントで優勝出来そうなら、コミコンに連れて行ってくれるって。もしかしてお泊まり?キャッ!」
「ソレで急にチェスを…テリィたんとのデートしたいがタメの…私は練習台?」
「尊い犠牲です。司令官代理の分まで頑張りますので…」
「ある意味、科学者らしい発想ね。私と似てるカモ…でもね、ルイナ。"3次元チェス"は1回1回が真剣勝負なの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、万世橋の捜査本部。
「警部!死体ダイバーの身元が判明しました!ヴァン・クンツ。元海自のダイバー。ソマリア後に除隊、民間ダイバーとして5ヶ月前からモッズ社に転職…うーん就職先を間違えたカモ」
「あら?どーして?」
「経営者は、クリラとロバナのモッズ姉妹です。窃盗に暴行の前歴アリ。海難救助が得意なサルベージ会社だけど、所詮は湾岸のゴロツキ。経営者がガールスカウトなハズがナイ」
「警部。聞き込みの結果です。どーやら最近、東京湾岸に巣食う連中は、みんな宝探しで殺気立ってるようで」
「宝探し?何を探してるの?」
「U-007」
「何ソレ?セールNo.?競技用ヨットかしら」
ココで、元"時間ナヂス"で、今はヲタッキーズのマリレが咳払い、話に割り込み蘊蓄を御披露。
あ、"時間ナヂス"は、1945年、陥落寸前のベルリンからタイムマシンで脱出して来た連中だ。
「U-007は、第2次世界大戦末期に東京湾で沈んだ遣日潜水艦です。敗色濃いドイツを脱出して地球を半周、秋葉原ブンカー到着寸前に撃沈されました。排水量769t、全長67.1m。オープンクラス外洋巡航艦隊の主力潜水艦Ⅶ-C2型の7番艦です」
さらに、僕が引き継ぐ。僕こそ真打ち←
「U-007が東京湾に浮上したのは、ちょうど東京大空襲の夜だった。炎上スル東京を目指し、手探りで神田リバー河口へ向かう途中、久我山の新型15cm高射砲の直撃でバラバラにされたB-29の垂直尾翼が直撃。河口の2キロ沖で沈没した」
「世界を半周して秋葉原の目前で撃沈w艦体は未発見なの?ってか、テリィたん。隠れU-boatヲタク?」
「何でも聞いてくれ!海の狼、あの船団を追え…」
が、ジャドーから会議アプリで参戦中のルイナに遮られるw
「当時のエレクトロU-boatは、世界でも最先端の潜水艦だったわ。設計には最新の数値流体力学が使われてたの」
「空気力学みたいなモノ?」
「空気を薄い液体と考えてる。水中を移動する物体には摩擦が生じる。でも、数学的に設計すれば摩擦を極限まで低減させるコトは可能。抗力を減らし、イルカのように水中を滑らかに移動、速度も上がるわ」
ココで、僕は強烈なる咳払いを連発、主導権を奪還スル。
「さらに、終戦間際にドイツ本国から出航したU-007には、枢軸陣営の敗戦処理に必要な2千万マルク相当の財宝が積まれていたらしい」
「どーりでみんなが血眼になって探すワケね」
「海事法では、財宝の所有権は発見者にアルとされている」
その場の全員が、億万長者になった自分を妄想←
「東京湾に眠る2千万マルクのお宝ね!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、早速僕も現場に同行←
神田リバー沿いの船着場w
「こんにちわ。私は万世橋警察署のラギィ警部。コチラはコンサルタントのテリィ氏とマリレさんです。モッズ社の人は?」
「今日は見てないな」
「最後に見たのはいつ?」
「覚えてないな。でも、モッズのサルベージ船は、昨夜帰港したようだょ」
油まみれで船外エンジンを修理してた男が対岸を指差す。
僕達は、お礼を逝って別れ、ふれあい橋を渡って対岸へ。
「どう思う?」
「ダイバーの殺害時、サルベージ船は東京湾に出ていたワケね…"黄金"って映画、見た?みんなで宝探しの旅に出るけど、次第に疑心暗鬼になり、宝の配分をめぐって殺し合うストーリー。あ、ネタバレ」
「今回は、3人で出掛けて2人で山分けってトコロかw」
サルベージ船は、無人のようだ。
「わ!コレを見て」
キャビンの中の無線機にベッタリと血がついているw
「フィンガーペインティング?」
「まさか。でも、アートの可能性もアルな」
「やれやれ。鑑識を呼ぶわ」
ソコへ、僕達に遅れて乗船してくるミニスカポリス…
「やあ!リルラ!」←
「テリィたん、元気?」
「君は?なぜココに(ソンなコスプレで?)」
首都高HPのリルラだ。
「今、秋葉原で調査案件があって」
「ホント?」
「うふ。ウレシそうね。実は…もう3週間になるの。忙しくて連絡出来なかったわ。ゴメンね」
「今からでも全然遅くナイな」←
「そうね。こうして会えたモノね…実は、麻薬の密輸経路を捜査中ょ。首都高の上から神田リバーに落として漁船やサルベージ船で引き上げてる。もしかしたら、この事件も関連があるかと思って」
「おおっ!絶対的かつ切っても切れない図太い関連がアルと思うな!」
なかなか良い滑り出しだが、ココでお邪魔虫が入る。
「テリィたん、鑑識が来るわ…あら?リルラ捜査官?」
「どーもー、ラギィ警部」
「操舵室に写真があったわ」
ラギィが色褪せた写真を見せる。浮上航行中の潜水艦だ。
「コレが…U-007か」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
海、財宝、トレジャーハンター、ビキニ!
まぁ海から一気にビキニに飛んでもOKだけどw
で、目の前にカチューシャ装着のビキニ美女…
「おかえりなさいませ、テリィたん!」
「やぁジョナ!元気してた?」
「トレジャーハンターカフェ"ラー"へようこそ!ミユリから話は聞いてるわ。微乳のミユリから」
ディープなビキニの谷間を魅せるのはジョナ。
"ラー"は、お宝系ヲタクの集まる御屋敷だ。
「徳川埋蔵金の次は"U-007"ょね。国家予算を積んだママ沈んだンでしょ?モッズ社は、特に誰とも組んでなかったって聞いてる。誰でも探すのは自由だしね。先月辺りから、トレジャーハンターがハエのように群がって盛り上がってるの。お陰でウチの"ビキニの裸女フェア"も大当たりょ。テリィたんもフェア特製カクテル"アンジェリーナ・ジョイナーの涙"飲んでみる?中身はカルピスだけど」←
「no thank you。ソレに"ビキニの裸女"はBBだろ?」
「そーなの?サスガは昭和ね…でも、探す人は多い方が楽しいわ。確か艦長さんが行方不明になったのょね」
「U-007のサラン艦長?」
「YES。沈没直前まで超長波無線でドイツ本国の"狼の巣"と連絡を取り合ってた最後のU-boatエース…実は、私のおじいちゃんなの!と言う設定にしてみたw私はU-boatエースの孫娘だぞ、なんちゃって」
「…沈没の原因はB-29の残骸直撃だって?」
「でも、設計ミスの疑いもアル。航海日誌がオカルト雑誌"ラー"のお正月号特大付録で出てルンだけど、ボンベイの秘密ブンカーを出て3日目までは順調だったのに、突然キールが異常に軋み浸水し始めたとあるの。でも、おじいちゃんは引き返さなかった。東京湾で全員退艦を命じた時も、艦長であるおじいちゃんは、最後まで艦に残ったのょ」
「乗組員の数は?」
「全部で70人。救難信号を受けた帝國海軍の駆潜艇が救助に当たった。でも、艦長は見つからなかった」
「多分、艦と運命を共に…」
「7分後、無線が途絶えてビーコンも消えた。勇敢なU-boatエースの伝説は、東京湾の波間に消えた」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ビキニに関心の薄いマリレはルイナに捕まってるw
「マリレ?聞きたいことがあるの。マデラ司令官代理のチェスの腕前って知ってる?」
「1回、相手したコトあるわ。上級者ょ。プロね」
「しまったー。少し強がりを言っちゃったカモ」
「もしかして…ルイナは初心者?」
「え。で、でも、タダの素人じゃナイわ!ズブの素人ょエッヘン!とにかく、ルールは知ってる。ゲームは得意だし。駒はクインとクラウンと…」
「嘘でしょ?」
「だって、テリィたんが教えてあげるとか言って、ソレっきり放置なのw」
マリレは、東京湾より深い溜め息をつく。
因みに、2人ともワケあってメイド服だw
「…あら?ソレは財宝探しの地図?」
「いいえ。沈没したU-007の設計図ょ」
「設計ミスとかあった?」
「ソレが見当たらないの。多分、設計には問題がない。乗組員数と燃料の重量も正確だし…なぜキールが軋んだのかは不明だわ」
「私もヨットなら経験があるけど…」
「あら、意外。詳しく話して」
「休暇を3カ月間とった時に大学院時代の友人とバルト海を競技用ヨットで旅したの。心配しないで。要点は、ちゃんとあるから。海では先が読めない。予測不可能な事態に遭遇するコトもあるわ。例えば、ヨットと言う限られた空間で友人の意外な面を知るとかね。自分の声に魅了され永遠に歌い続ける音痴とかいて、ホント息をつくのも忘れるわ…」
「マリレ。結論プリーズ!ソレとも結論レス?」
「結論アリます!よく聞いて。海では、船に膨大な力がかかる。引張応力や圧縮クリープ。素材疲労とかも考えなきゃ」
「…もちろん材料破壊の可能性は計算した。あらゆる海況に耐え得るかを何度も計算したわ。でも、どこにも欠陥が見当たらナイのょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「警部、新情報です!モッズ社のサルベージ船にあった血痕の予備分析では3人の血液が出ました!死亡したダイバーと残り2人は…」
「もしかして、モッズ姉妹?」
「YES。血液型が一致」
「モッズ姉妹も殺された?一体誰が殺したの?」
「財宝目当ての別のサルベージ会社?」
「ソレともトレジャーハンター?」
首都高HPリルラも鼻息荒く割り込んで来る。
「麻薬取引が関連してるなら、ディーラー筋もあり得るわ。何か得体の知れない恐怖を感じる。3人は、見てはイケナイ何かを見てしまったのね。うぅ悪寒がスル」
「人類悪寒計画…なんちゃって。ねぇダイバーが撃たれた時、サルベージ船は何処にいたのかしら?」
「ナルホド。ソレがわかれば、何か別の動きがわかるカモ。ルイナ、聞いてる?」
第2章 CIAがやって来た
もちろんルイナは聞いている。
会議アプリで捜査本部と連携。
「はいはい、わかりました。サルベージ船の航路履歴ね?殺人現場が移動スルって厄介ね」
「殺されたのも3人に増えたしな。先ずは場所の特定からだ。必要なデータはラギィにリクエストしなょ」
「テリィたん?あぁそう、場所は簡単に割り出せるわ。ソレより…」
うっかりジャドーに顔を出した僕はルイナに捕まるw
「ねぇ首都高HPのリルラ捜査官と会ったの?」
僕は、会議アプリの先にいるラギィを睨むw
「あ。ごめんなさい、テリィたん。口を滑らせたカモ」
「前回の"第0使徒教団"事件で仕事した時に見初めたの?ミユリ姉様という推しがいるのに突然のDD、テリィたんって不潔よっ!」
「随分とレトロな論法だなw」
「で、コレからリルラとはどうスルつもり?」
「いや、彼女も多忙だから、どうなることやら…って何でソンな話になるンだょ。僕は、ミユリさんのTOだぜ?」
「だから?テリィたんの気持ちはリルラに傾いてる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ねぇラギィ。リクエストしたいデータが山ほどアルの」
僕とマリレが去った後、ルイナはヤタラと元気だ←
「みんなが気づかないヒントは山ほどあるわ。燃料の消費量でしょ、航行時間でしょ、ソナーの使用、アンカーチェーンの使用部分の長さ、チェーンに付着した藻の種類…」
「え。流水算ってソンなにむずかしかったっけ?苦手だったのょ中学受験の時。A君は速度は6ノットで漕ぎ、逆風は8ノット…」
「ソレだけで、もう前には進まないわwソレにもっと簡単ょ。そもそも、データには制約がある。例えば、航路は必ず制約に従う。その制約から航路を絞るコトも出来る。私は、仮のデータリストを作るわ。みんなは証拠探しをお願いね」
ココで捜査本部の刑事達から声がかかる。
「ジャドーのパツキン姐さん!燃料消費量と航行時間のデータなら手元にあるぜ!」
「ソレ、教えてくださーい」
「えっと257リットルと16時間だ。報告書にはそう書いてあった。コレで航路がわかるのか?」
「と言うより、調べる必要のない海域がワカルって感じ?U-007の沈没はこの辺でしょ…」
捜査本部のモニターに海図が写り、ソレにマーカーが走る。
「燃料消費量と航行時間からサルベージ船の航行範囲がわかるわ。最大でも32キロの往復距離しか航行してない。いずれもU-007の沈没点からは遠い」
「ナルホド」
「私達、モッズ姉妹も沈没船を探してると想定してたけど…もしかして、見当違いだったのかしら…」
「姐さん!U-007じゃないなら、モッズ姉妹は何を探してたンだ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナが会議アプリで万世橋の刑事達とやり合っていると、マデラ司令官代理がチョッカイを出そうとラボに顔を出す。
「ルイナ、リモート会議中?未だ沈没したU-boatを探してるの?」
「YES。でも、刑事さん達と話してたら、話が別の方向に進み始めたわ」
「今度は何?」
「サルベージ船の航路を計算中ょ」
「どうして?」
「殺害現場がサルベージ船上らしいの。航路がわかれば、容疑者も絞り込めるわ。つまり、殺人犯がね」
「セックスアピールのない話…あら?チェスの本?」
ルイナは、一夜漬け用の本を平積みしているw
「え。あ、激ヤバ…ま、まぁ少し復習しとこーかなって…」
ソコヘスーツ姿がヤタラとキマってる外人2人組が登場。
「素敵なお客様ね。私はジャドー司令官代理のマデラ」
「マデラ代理。我々はルイナさんと話がしたい」
「まぁ御挨拶ねwどうぞ御自由に。ルイナ、今宵は手加減ナシょ」
マデラが肩をスボめ、思わせぶりな素振りでラボを出ると、外人2人組は、ソソクサとドアを閉めて施錠してしまうw
「ありがとう!完璧なタイミングだったわ。危うくマデラにチェスが素人とバレるトコロだった。助かったわ!」
「ルイナさん…我々はCIAだ。問題が起きた。協力して欲しい」
「ええっ?!CIAって…あのピッグス湾事件の?」
「古いな。アレから色々やってルンだが…」
「喜んで、と言いたいけど国益優先ょ。今は、国内の事件で手一杯なの。その後なら空いてるけど」
「承知している。貴女が沈没したU-007を捜索中なのも」
「あら筒抜け?まぁ霊南坂は最大の同盟国だしね」
「我々もU-007をゼヒ見つけてもらいたいのだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「え。あの東京大空襲が陽動だった?」
「YES。知られざる事実だ」
「そんな…許されるの?1晩に10万人が死んだのょ?!」
CIAの2人は、驚愕の事実を語る。
「第2次世界大戦末期、連合国側は日独の暗号を完全に解読してた。最後の遣日潜水艦となるU-007の航海も全て筒抜けだった。問題は、積載される"重要戦略物資"で、コレをナキモノとするため、特殊作戦が起案された。東京大空襲を陽動とし、東京湾で浮上するU-007を超低空精密爆撃で仕留める。いわゆる"東京ゴースト作戦"だ。しかし、可変翼爆撃機B-1.5は、旧軍が久我山に配備した新兵器により撃墜され、プランBで東京湾内でスタンバイしてたガトー級潜水艦"東京フィッシュ"がU-007を仕留めた。しかし、直後にコントロールを失ったB-1.5が"東京フィッシュ"に突っ込み、同艦は轟沈。B-1.5からの脱出者もなく、作戦部隊は壊滅、生存者は皆無だった。コレが"東京ゴースト作戦"の顛末だ」
「ナンてコト…」
「先月、我々は2隻の船を出し、24時間ソナーを使って周辺海域の海底を捜索し尽くした」
「え。半世紀近く経った今、ナゼ捜索を再開したの?」
「質問には答えられない。我々は、U-007が最後にベルリンと交信した超長波ビーコンの発信地点を探したが、何も見つからなかった」
「あのね。もう1度聞くわょ?何でCIAがU-007を捜索スルの?その思わせぶりな"重要戦略物資"って何?」
沈黙が回答だ。
「"国家の機密"なのね?了解」
ルイナは、冷たく言い放ちヤニワにノートの白いページを破ると…ん?折り紙?紙飛行機を折ってCIA目掛けて飛ばす。
「アンタ達。探す場所を間違えてる。でも、何を間違えてるかは教えてあげない。"乙女の機密"だから」
鼻の前をかすめて飛んだ紙飛行機を目で追いながら、ニワカに不安になったCIAは、薄気味の悪い愛想笑いを浮かべる。
「ルイナ…さん。我々は、貴女が秋葉原のヲタクを賭けて負けられないチェスの試合に出るとの情報を得ている」
「ソ、ソンなコトまで知ってるの?」
「今年度の世界チェス選手権のチャンピオンは、実はCIAのエージェントだ。当日は、貴女が彼の指示どおりに指せば、理論的には貴女に勝てる相手は世界に存在しない」
「マジ?チェスの世界チャンピオンがスパイなの?まるで、007の世界じゃないの!」
「今回のstoryに合わせて思いついた小細工だ。因みに、ターゲットの弱味につけ込むのは、この世界の常套手段」
「貴女達の企みの中にミユリ姉様は、どうハマるの?」
「ハマらない。何処にも」
首を振るCIAを見て、露骨に喜ぶルイナ。
「あのね!アンタ達は、捜索場所を間違えてるの。アンタ達が探してるのは多分ココ」
ルイナは、クシャクシャに丸めた紙をポトリと落とす。
「でもね、実際は…アンタ達の鼻先をかすめて飛んだ紙飛行機が落ちた辺りなワケ。つまり、恐らくU-007は東京湾内の水中を移動しながら沈没したと思う」
「え?水中を前進しながら沈んだ?」
「YES。ソレもかなりのハイスピードでね。U-007のような精巧な設計の潜水艦は、水中を飛ぶように進むの。超概算だけど、30cm沈むゴトに4.3mは前に出る。数値流体力学の知識とU-109の設計図がアレば、ある程度の位置は計算出来るわ。東京湾底に着底スル直前までの移動距離がわかれば、アンタ達の捜索範囲はかなり変わるハズょ」
背広姿のCIAは、大きくうなずく。
「ルイナ…さん、計算に要する時間は?」
「アンタ達がチェスのチャンピオンに話をつける時間と同じぐらいかしら」
「了解した。なお、本件はチェスの世界チャンピオンを巻き込む八百長試合となるので、口外禁止でお願いしたい。無論、日本の警察やジャドーにも秘密だ。ソレさえ守れば、貴女はゲームの勝者となり、秋葉原の(しょーもないw)ヲタクにチェックメイトだ!」
ルイナの瞳はキラキラ光り、恋スル乙女の顔にナル←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「モッズ姉妹が財宝探しナンかスルかしら?ねぇ麻薬取引だと思わない?」
「落ち着いて、リルラ。密輸業者って、一般的に国際水域にとどまるモノょ。例外もアルけど」
「警部、鑑識の結果が出ました!残りの血痕はモッズ姉妹のモノでした」
「とゆーコトは、2人も殺されたとゆーコト?姉妹は何処に沈んでるの?検視報告書を見せて…先に魚網に引っかかったヴァン・クンツの足首に圧迫痕?モニターに写して」
捜査本部のモニターに水死体のふやけた足首が映る。
「あら、縄目?ロープによる圧迫痕ね。漁網じゃナイみたい」
「足首を縛られて重しと一緒に沈めたけど、ヴァン・クンツだけロープが外れて東京湾内を漂流、漁網に絡まった?コレって南米の麻薬シンジケートのやり口よっ!」
「待ってリルラ、落ち着いて…で、もしそうなら、モッズ姉妹は、未だ東京湾の何処かに重しと一緒に沈んでそうょね?でも何処かしら?」
「ルイナ、聞いてる?遺体の場所を計算出来るかしら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ!ルイナ!聞こえてる?何で応答しないの?」
いつもなら、オンラインで繋がってる会議アプリから即答があるハズで、捜査本部の全員が聞き耳を立てているのだが…
「…ルイナ?」
「…あ、ごめんなさい。忙しくて」←
「何か進展があったの?」
「え。いえ、別に。あ、サルベージ船の航路分析は、後回しになったわ…」
「ナンですって?!」
「他にやるコトが出来たの」
「な、何?」
「今は言えないわ」
「あのね!ゴロツキだけど、2人も海底に沈んでるの!ルイナがサルベージ船の航路を割り出すって言ったのよっ?!」
「わかってる。わかってるわょラギィ。なるべく早めにヤルわ」
「なるべく早く?」
「ごめんなさーい。ちょっとワケありで…」
「何なの?理由を言って、ルイナ!」
ジャドー司令部からマデラ司令官代理が割り込む。
「あらあら。いったいどーしたの?」
「私が知りたいわっ!ルイナが私達との合同捜査を邪魔してる!」
「待って!どうしようもない状況なの。わかって!」
「ルイナ?」
「マデラ。私、やるコトがアルけど、内容は言えないの」
「わかったから落ち着いて。貴女は超天才。何をスルかは、貴女が決めれば良いわ」
「待って!マデラ、どーゆー意味ょ?」
「そのママょラギィ」
マデラはマデラで、温和な口調だが1歩も引かないw
ラギィは絶句、ルイナもやるせない気持ちになる←
「ヤメて!ケンカはヤメて!あんな仲の良い秋葉原の仲間同士が何でケンカをスルの?わかった。ラギィの命令に従うわ。でも、その前に晩ご飯を…いいえ、ご飯抜きでとりかかります!」
ルイナは、ワザと乱暴に海図を広げるw
第3章 乙女の弱味につけ込んで
「ジャドー司令部。コチラ"死海ダイバー"。浦賀水道に侵入。湾奥部に向かう」
"死海ダイバー"。ソレはジャドーの海底部隊。その前部には"死海1"と呼ばれるロケット機が装備され…
まぁつまり最新式の原子力潜水艦ナンだけど、今回はロケット機は出番ナシ。東京湾底で深夜の死体探し←
因みにU-boat7Cの前部にMe-163を装着した艦影。
「ジャドー司令部。グリッド4に侵入。水中カメラの画像をアップリンク」
「"死海ダイバー"、絵が入った。画像鮮明」
「今から面舵を切りルート072を回る」
ジャドー司令部の全周モニターに東京湾底の画像が写る。
画像はリアルタイムで万世橋の捜査本部にも流れている。
「グリッド4をサルベージ船が航行した確率は83%だったわね、ルイナ」
「YES。マデラ司令官代理」
「ルイナ!つまりサルベージ船が通ってナイ確率が17%ってコトかしら?」
会議アプリで捜査本部から話に割り込むラギィ警部。
「警部。貴女、少し悲観的過ぎるわ。83%は、この世界じゃホボ確実という意味ょ」
「なら、そー言ってょマデラ」
「ウチのルイナをイジめないで。国宝級の天才ょ繊細なの」
早くもルイナは泣きそうだw
「ヤメて!ケンカはヤメて…艦長、今のは」
「YES mom。私も気づきました。ニィナ、3番カメラをズーム」
「アイアイ、艦長。カメラを回します」
海底から立ち上がる不気味な人影?2体のゾンビ?
「水死体か?」
「3番カメラ、も少し右に振れ…"死海ダイバー"から司令部。海底に2体の死体を確認!」
「モッズ姉妹だわ!スゴい!私達、ズッと貴女を信じてたわ、ルイナ!」
ラギィのハシャギぶりにジャドー側はシラけた顔w
「ルーン艦長、水中レーダーに別の反応。2時の方向」
「別の死体?艦長、カメラを回して!」
「ヘドロで水中が濁ってる。サーチライト点灯!」
ソーラレイのような図太い光芒が暗い水中を貫く。
「沈没船のようです…ま、まさか?」
「…U-007?」
「そんなバカな!計算では…」
ルイナの顔に困惑が広がる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東京湾岸にある第3新東京電力の某LNG火力発電所。
「おかしいわ。私の計算では、U-007は神田リバー河口から64キロ沖の海底に着底したハズ…」
「ソレがナゼ、こんな湾奥部に沈んでたの?」
「しかも、恐らくモッズ姉妹は、誰かから聞いて、この位置を知っていた(そして、殺された?)」
発見されたU-007は、深夜の内に引き揚げられ発電所の物揚げ場から臨時艇庫となった体育館に引き揚げられている。
自分の目で確認したいとルイナが言い出し、国宝級天才であるルイナを護衛スルため特殊部隊と戦闘ヘリが出動スルw
「ねぇコレは?"モッズ・サルベージ"ってロゴが入ってるけど…」
ルイナがU-007の舷側に引っかかってる浮き袋を指差す。
「沈没した船を引き揚げる時に使う浮き袋ね。誰かがU-007を1度引き揚げてる?」
「そして、2千万マルクの財宝をゲットし、再度沈めた?」
その時、臨時艇庫の入口でモメごと発生w
「責任者は?我々は嶺南坂の者だ」
CIAが無理に入ろうとし完全装備の特殊部隊と揉み合うw
「あ、いいわ。入れてあげて」
唯一事情を承知のマデラ司令官代理が特殊部隊に目配せ。
「ルイナ!アンタ、ズルい手を使ったな!」
「えぇ何ょ?」
「我々にはニセの情報を流して撹乱し、その間に国益を優先させるとは。最低の腐女子だっ!」
「違うわ。私も驚いているの!ソレに腐ってナイ…」
「アンタの機密情報への特権を剥奪スル。もちろん、チェス名人の話もナシだ。フラれろ、バカ」
ワッと泣き出すルイナw
「チョ、チョ、チョ!何ゴトょ?チェス?」
「私は何もしてないわ!」
「でも…どうしたの、ルイナ。大丈夫?」
「アンタがラギィ警部か?秋葉原の警察は最低だ!中でもアンタは最低のゲス女だ!」
「知ってる。で、アンタは誰?」
「…CIA」
泣き腫らすルイナ。ウンザリ顔のマデラ司令官代理。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「どれだけの税金が無駄に使われたのかワカッテルのか?」
「アンタ達の人件費?アンタ達より、マックのバイトの方が未だマシょ。とにかく、ルイナは何も知らないの!」
「私は、U-007ではなく、サルベージ船の捜索をしてただけよっ!」
「そして、偶然U-007を発見したと?フザけるな!ソンな話、誰が信じるか!バカ腐女子!フラれろ、ブス!」
「ヒ、ヒドい…腐ってナイのに!」
再びワッと泣き出し、ルイナは駆け出す!その瞬間…
「逃げるな!射殺スルぞ!」
CIAが拳銃を抜くのと、特殊部隊が短機関銃、音波銃、擲弾筒、手榴弾、ロケットランチャーを構えるのがホボ同時だw
上空から戦闘ヘリの爆音も聞こえCIAはホールドアップ←
「ふ、腐女子たった1人を護るために、ココまでスルのか?この国はcrazyだ!」
「どの国がcrazyか押しつけ合うのは、東京裁判で終わり。ねぇ追ってるのは同じ事件でしょ?この際、国の違いは無視しない?CIAがU-007を追う理由は何なの?あ、両手はそのママで。全然信用してないし」
CIAは、ホールドアップしたママ、顔を見合わせるw
「お願いょ。ウチのルイナは飛び級で、アンタ達のラスボスとはハーバードで同窓だから。今でも電話でタメ口出来ちゃう間柄だけど?」
「ラスボス?誰だ?CIA長官?」
「大統領」←
CIAは、恐らく来日して以来の最も長い溜め息をつくw
「OK, you win。マデラ司令官代理。我々が追ってるのは、国際的な武器商人ハシム・アジズだ。世界中のテロ組織とつながりを持ち、あらゆる戦争の陰にいて、マネーで血を買い大儲けをしている」
「この件とは、どういう関係が?」
「2ヶ月前。モッズ姉妹からハシムに国家予算レベルの送金があった」
「国家予算レベル?モッズ姉妹って、湾岸ゴロツキのサルベージ屋じゃナイの?」
「彼女達は、元"喜び組"の秘密工作員だ。送金理由は不明だが、半島の北にあるテロ国家は、何か重大な買い物をしたようだ」
「そして、ハシム・アジズはU-007を引き揚げ、積荷の何かを姉妹に売ろうとした?」
「恐らく。シナリオでは、そうだったのだろう。だが、何かトラブルが起きて姉妹は殺され、積荷は消えた」
「どーやら、U-007が運んで来たのは金銀財宝の類では無さそうね」
「YES。でも、中身が何かはワカラナイ」
誰もが頭をヒネる中、首都高HPリルラだけが元気だw
「どーやら麻薬の線は消えたわね。じゃみんな、頑張って!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部に戻ったラギィは、部下の刑事達を集める。
「何だか知らないけど、CIAが出て来たわ。そして、2週間前に海洋捜索をして、ハデにカラぶった。で、CIAが捜索海域を特定した根拠はタダ1つ」
「ビーコンが途絶えた地点ですね」
「YES。今までビーコンは沈没で途絶えたと思ってたけど…」
「実は、意図的で後々現れる探し手の目をクラますタメの策謀だったのカモ」
「U-007のサラン艦長は、そのタメに艦に残った。なるべく浅瀬で沈めれば、後々の回収もスムーズに行く。そして何より、自分以外の全員から、U-007の沈没場所を秘匿出来る」
「ソレで乗組員と別れ、ビーコンを切り、神田リバー河口を目指した…果たして、U-007は河口で発見された。一方、元"喜び組"のモッズ姉妹は、誰かからU-007の沈没場所を聞いていた…」
「警部。誰かからって…ソレ、誰ですか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ラギィ警部。貴女達の計算をCIAの後回しにしてゴメンナサイ」
「いいのょルイナ。どーせCIAに拳銃で脅かされたんでしょ?」
「実は、テリィたんとのデートをエサに…」
「ええっ!もっとシッカリみんなに謝って!」
裏アキバの芳林パークに、笑い声が上がる。
ルイナとラギィを取り囲む特殊部隊も笑顔。
恐らく、上空にいる戦闘ヘリのヘリパイも…
「ルイナ。U-007は何か"重要戦略物資"を輸送していたらしいの」
「うーん2千万マルクの財宝は"重要戦略物資"を秘匿スルためのカモフラージュだったのね?」
「何を密輸してたのかしら」
「"ラー"新年号付録のU-007の航海日誌を読むと、ボンベイ出港時からキールが軋んだとアルの。でも、艦体に設計上の欠陥はなかった。キールが軋んだのは、積載量オーバーのモノを積んだからょ。あと、U-007は、ボンベイ寄港後に著しく航行速度を減速してるわ」
「やっぱりボンベイで何か積み込んだのね。ルイナ、何を積んだかワカラナイかしら?」
「航行速度やらナンやらから積載量の増加分を算出するのは出来ます。ソコから、みんなで推測してくれない?でも…」
「でも?」
「CIAとラギィがケンカするのを、もぅ見たくナイの。胸が張り裂けそうにナルのょ」
「わ、わ、わ、わ、わかったわ。貴女はソンなコト心配せズに、安心して方程式でも何でも解いて。私達はオトナょ?心配しないで。奥の手がアルわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
実は、予め嶺南坂から話を聞いていたマデラ司令官代理の案内で、CIAはパーツ通りのジャドー司令部を表敬。
司令部は、路面ゲーセンの地下深く秘密裡に作られており、そのため全員ゲーセン店員のコスプレで勤務中だ。
因みにマデラ司令官代理は、ロマンスカーEXの車掌さんw
「マデラ!CIAは…ええっ?貴方達なの?プ、プフフ…」
ゲーセンのトイレは秘密のエレベーターで、中から出て来たラギィとルイナ(と護衛の特殊部隊)の前に黒忍者が現れるw
「実はソレがしは、来日前から忍者に憧れていた…でござる!」
「お、おぅ似合ってるわ…でござるわwそりゃ秋葉原に来たらコスプレでござるでしょ」
「いかにも。汝らも何と艶やかな…」
確かにラギィはミニスカポリスで…
ルイナは、いつも趣味でメイド服←
一気に場の空気が和む。コスプレは国境を超えるw
「ねぇCIA。U-007は、ボンベイで何か積んだわ…で、ござるわ?」
「ボンベイ?インドの?なぜわかるでござる?」←
「出港後のU-007の巡航速度が落ちてるの…でござる」
「なーるホド!ルイナ姫。マコトか?」
「え、姫?メイドだけど…」
「立派なヲタサー姫でござる。拙者に心当たりが…第2次世界大戦当時、英連邦軍ボンベイ要塞の秘密武器庫には"爆縮レンズ"が…」
「"爆縮レンズ"?プルトニウム原爆の起爆剤だっけ?」
「YES。"爆縮レンズ"は、原爆のプルトニウム・コアを爆薬で包んだモノ…でござるょ。爆薬を爆発させた時の衝撃波がコアに対し瞬時かつ完全均一にかかり、コレにより核分裂連鎖反応がスタート、つまり核爆発が起きるのでござる。文字通り原爆の起爆剤であり、マンハッタン計画のキーとなるテクノロジーだ、でござるのだ。しかし、極めて高度な数学理論を駆使しての計算が必要であり、実はロス・アラモス秘密研究所は、ボンベイに分所を設けて対応していたのでござる!何しろ"爆縮レンズ"は超高等数学の産物ゆえ!」
「左様か?!で、でも、なんでインドなの?…でござるの?」
「ガンダーラ!古くはゼロの発見、最近では2桁の掛け算九九。インドは昔から人類の最先端をゆく数学王国なのでござる!欧米人もビックリ!」
「何と!カレーが美味しいだけではナイ?」
「さらに2016年、半島にあるモッズ姉妹の祖国は、4回目の核実験で水爆の開発に成功したでござる。水爆の起爆剤は原爆。原爆の起爆剤は"爆縮レンズ"と心得る」
「しからば"爆縮レンズ"の目方は?」
「容器も入れると180kgを超えるでござる」
「拙者の計算では190kg」
「ドンピシャ!サスガは姫!アッパレ!」
「かたじけない!」
「家来にしてくだされ!一生お供スルでござるよっ!」
スッカリ打ち解けてるw
第4章 SEX AND THE AKIBA
僕の推しであるミユリさんは、本人は嫌がるけど、アキバではメイドの大御所みたいなトコロがアル。
だから、冒頭登場の不思議カフェ"ラー"のジョナとは彼女が渋谷から流れて来た頃からの付き合い。
「わぁジョナ!ホントにビキニなのね?」
「おかえりなさいませ、お嬢様…あら?ミユリなの?何メイド服ナンか着てるのょ?ビキニに着替えて手伝って!」
「大当たりね?去年の"沖縄フェア"以来?あの時はスク水だったけど」
いつものメイドが全員ビキニとあって"ラー"は大繁盛だ!
「忙しそうね。じゃ手短に済ませるケド…ジョナ、貴女ってリアルでU-007サラン艦長の孫娘ょね?」
「え。…ヤメてょミユリ。洒落ょ洒落。そーゆー設定にしただけょ。単なるネタだから!」
「ヤメて。初めてアキバに流れて来た時、助けてあげたのは誰?貴女、谷中の墓地でおじいちゃんのお墓に"デスラー総統、バンザイ"式の挨拶をしてたわょね?アレってナヂス式のハイル…」
「アレは"ジーク・ジオン!"よっ!おじいちゃんは好きなの、宇宙戦艦。私は、ファースト・ヤマトなんか見たコトないし」
「ファーストの時は、ジョナは生まれてナイし、おじいちゃんは亡くなってる。ねぇジョナ、貴女は十分に犠牲を払って来たわ。おじいちゃんは、核テロリストとして扱われる恐れがアル。おじいちゃんを庇えば、貴女もテロリストになり、当局は貴女を(ビキニのママw)拘束スルわ」
「え。ビキニのママ(ウレしいw)?」
「蔵前橋でメイドカフェでもヤル気?ねぇソコまでして庇うおじいちゃんなの?おじいちゃんなら、貴女をソコまで庇うかしら?」
ハッとして目線を上げるジョナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室(にビキニ美女がいるw)。
「ごめんなさい!ミユリに言われて、初めて目が醒めました!おじいちゃんは、どーだか知らないけど、私はテロリストではありません!逮捕しないで(ビキニのママw)!」
「わかった!わかったから落ち着いて!私はラギィ警部。貴女からは事情を聞くだけ。で、先祖伝来の"重要戦略物資"は今、何処にアルの?月夜の晩に男が現れたトコロから、もう1度、話してくれる?」
「彼は…数日前から"ラー"に何回か顔を出し、あっという間に私の太客になった。よくいるトレジャーハンター気取りの巨乳好きだと思ってた」←
「ソレ、顔を見た人間は24時間以内に必ず殺されるという、国際的武器商人のハシム・アジズだから」
「でも、黒のサングラスにコロナのマスクで、人相とかは全然ワカラなかったの!」
「だから、アンタは生きてるの!で?」
「先週の満月の夜、谷中の墓地に忍び込んで、おじいちゃんのお墓を掘り起こした」
「はい?」
「実は、ウチの谷中のお墓って元々お骨は入ってナイ。ホントのお墓は麻布十番で永代供養にしてアルのエッヘン」
「ナンでイバるの?その月夜の墓あらしに貴女も立ち会ったワケ?」
「YES」
「ビキニで?」
「まさか。で、私の太客は、おじいちゃんのお墓を掘り起こすと、中に埋まってたモノを手下に運ばせて、黄色いバンに積み込んで走り去ったわ」
「え。何を掘り起こしたのかしら。行き先は?」
「モチロン知らないわ。聞かなかったし」
「だから、アンタは…」
「生きてるワケね。確かに行き先は聞かなかったけど、埋まってたモノが何かは知ってるわ。だって、今際の際に、おじいちゃんから教えてもらったンだモン」
「ナンでイバるのか再び謎。で、お墓には何が埋まっていたの?」
「原子爆弾。水爆の起爆に使える奴」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
死の商人が原爆+起爆剤の爆縮レンズを手中に!
「ハシム・アジズはプロだ。恐らく最高値をつけた奴としか商売しない。恐らく元"喜び組"は、最後の最後で価格が折り合わズ、消されたのね」
「現時点で、新たな買い手がついてるのかしら?」
「…ジョナの話だと黄色のバンですけど」
ムーンライトセレナーダーだ。僕の推し、ミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿。
白のヘソ出しセパレートのコスプレ。今回はヲタッキーズと共にジャドー司令部にいる。
「でも"先週谷中にいた黄色いバン"だけじゃ探しようがナイわ。秋葉原の外じゃジャドーの量子コンピューター衛星の守備範囲からも外れるし」
「CIAなら探せるハズ。確か、アジア上空には同盟国を監視スル衛星ネットワークがあったわょね?」
「YES、ムーンライトセレナーダー。考えてはみたが、情報量が逆に多過ぎて…現在も4機の偵察衛星が刻々と…」
「5機でしょ。先月、YAQ-379が加わってるし」
マデラがシレっと訂正スルとCIAは頭ポリポリw
「かたじけない、5基。しかし、画像は1万平方kmをカバーするので、情報過多で30年かけても見つからナイ…」
「だって。ルイナ、聞いてる?」
「聞いてます、ミユリ姉様…じゃなかった、ムーンライトセレナーダー」
「何とかなるかしら」
「目標識別アルゴリズムを使います。簡単な話です。5歳児でもわかるわ…男の子がおもちゃ箱から黄色のトラックを探すとします。箱には、他のおもちゃも入ってて…先ずヌイグルミ、飛行機、フィギュアをよけます。後は、サイズ、色、重さで分類して黄色いトラックを見つける。衛星画像でも同じコトをすれば良いの。アルゴリズムがデータを識別する。不要な変数を除き、ノイズをとれば、目的の黄色いバンを探し出せます」
ラギィ警部が捜査本部から話に割り込む。
「ルイナ、必要なモノは?何でも揃えるけど!」
「CIAのコンピュータネットワークへのアクセス権」
「拙者にお任せを」
黒装束の忍者がスマホを抜く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「識別フィルタに条件を追加したら、捜索効率が72%上がったわ…現在、画像を取得中。出たわ。神田リバーの艇庫前に黄色いバンが止まってる」
「え。リアルタイム?間違いナイの?」
「タイムスケールを遡ると、そのバンはモッズ・サルベージに立ち寄ってる。間違いナイわ」
「OK。ヲタッキーズGO!みなさんも全員出動です!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田佐久間町に昔からアル古い艇庫だ。
ヲタッキーズに警官隊にジャドーの特殊部隊にCIAが全員、ゾロゾロと思い思い?の武器を手に突入準備。
艇庫前には…黄色いバンが2台。既にバックドアが開いているが…特殊部隊が張りつき、荷台の中を確認!
「クリア!」
「原子爆弾も爆縮レンズもナイ。艇庫に運び込んだ後だ。南東の角に2人」
「アルファチーム、南東の2人を排除し裏へ回れ。残りは、正面から突入スル。戦闘工兵、前へ!」
ドアノブに火薬を巻き付けて点火し爆破!
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
吹っ飛ぶドアと共に突入スル警官隊にヲタッキーズに(以下省略w)…中にいた武器商人一味とたちまち激しい銃撃戦!
弾丸、手榴弾、ロケット弾、殺人音波が飛び交い、爆煙と硝煙が巻き起こる阿鼻叫喚の現場に強力なヘッドライトが…
「ボスが原爆と逃げる!お前ら盾になれ!」
「ハシム・アジズが逃げるぞ!」
「逃すなっ!」
3台目?の黄色いバンがエンジンをかけ強行突破を図る。
そのバンの目の前に飛び出すムーンライトセレナーダーw
どっかーん!
ムーンライトセレナーダーの必殺技"雷キネシス"一閃w
萌える車から転がり出る男にラギィが拳銃を突きつける。
「死の商人ハシム・アジズ、万世橋警察署が所轄の意地で逮捕スル!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「超流動ヘリウムの実験で"量子渦"を作り出した時に、永続的に続く次元ジャイロを思いついたの。時空を過冷却液と考えれば、核運動量を永続的に保て、システム全体も安定すると思うの」
「確かに"量子渦"のアンピニングが1.1から1.3以内に抑えられてるのなら、マグナス効果の問題は無視しても大丈夫カモ」
「でしょ?この時空ナビゲーションシステムでは、システムに"量子渦"をジャイロとして使うンだけど"渦"が量子状態だから、ジャイロの効果は時空を超えて永遠に変わらないワケ…はい。チェックメイド、じゃなかった、チェックメイト」
コレはチェスだったのかw
ジャドーのラボで行われたマデラ司令官代理とルイナのチェスの盤面を、みんなで覗き込んでいる。
スッカリ油断していたマデラは、チェックメイトをかけられてヲタヲタと盤面を眺め回す。うーんw
「何むくれてるの?」
「別に」
「いつもは温和な司令官代理が、チェスの時は色々顔に出るのね」
「信じられないわ。ルイナ、貴女はチェスをわかってない。戦略と予測の芸術的なゲームなのに!」
「勝ったの?私、勝ったのね?マデラ、ごめんなさい。私、
ミユリ姉様に教わって、コッソリ貴女の表情を読んで、次の手を指してたの。あぁ!コレで姉様公認でテリィたんとのデートが実現ょ!」
「でも、コミコンに逝くだけょ。お泊まりはナシ」
ミユリさんに釘を刺され、ナンだそーなのかと思う僕←
「あーあ私が手加減してあげたのょ!」
「まぁお優しいコト」
「お洒落なヒラメキに楽しいデートか。まるで、SEX AND THE AKIBAの世界だね」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"U-boat"をテーマにトレジャーハンター、首都高ハイウェイポリス、元喜び組のスパイ姉妹、U-boatエースの孫娘、国際的な武器商人、犯人を追う敏腕警部、防衛組織の司令官代理、超天才、ヲタッキーズのヒロイン達などが登場しました。
さらに、主人公に恋するヒロイン達の不運や人生の機微をチェスになぞらえて、サイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第6波コロナまんぼう延長中の秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。