8話 準備完了です
きのこ狩りをする土曜日はすぐにやってきた。
よく晴れ、暑くも寒くもないちょうどいい気候だった。
リュックサックお弁当と水筒、きのこ図鑑、メモ帳、ペン、軍手、きのこを取るための専用の小さなナイフも入れる。これは、プラから借りたものだ。
服装も動きやすい格好にし、帽子も被る。最後に狩ったきのこを入れる専用にバスケットも持って準備は完了である。
玄関先でデレクに見送られた。お弁当も彼が作ったものである。どうやら私にまだ気持ちがあるらしいデレクは、朝早く起きてまめまめしく作ってくれた。気持ちはちょっと思いが、ありがたく受け取る。
「マスミの好きな生ハムのサンドイッチをお弁当に作ったよ」
「ありがとう、デレク!」
「あとは、あの変なパン屋には気をつけて」
デレクはいつも笑っている男だが、この件では妙に心配しているようだった。
「そういえばリリーやアナがあのパン屋と一緒にういる所を見たんだよ」
「嘘、どうして?」
勝手にあの二人は胡散臭いパン屋に興味は無いものと重いこんでいた。
「やっぱり、なんとなくあのパン屋は怪しいよなぁ」
顔を顰めてデレクはため息をつく。
「まあ、気をつけるわよ。そんな悪霊なんていないって」
「まあ、そうだよな」
「うん、じゃあ行ってきます!」
「夕飯はきのこ料理あてにそてるよ」
「わかったよ、じゃあね」
デレクは夕飯にきのこスープやきのこ料理を作ってくれると約束した。新しいパン屋の話題はちょっと憂鬱にさせたが、せっかく晴れたし今日はきのこ狩りを楽しもう。
教会に行き、牧師さんはアビーとジーンとも合流する。三人とも動きやすい格好に帽子、リュックサック姿だった。
「みんな、おはよう!」
「マスミ、おはよう」
牧師さんは笑顔だったが、アビーやジーンは不機嫌そうだった。
「またあの二人はケンカしたんですよ…」
「そうなのね…。でも、こうして来たんだから一緒に楽しみましょう、ね?アビー」
私は牧師さんからアビーに視線を合わせて言う。
「それにレアきのこのウオンウオンダケを見つけた子にはご褒美をあげましょう」
「本当?」
不機嫌そうだった子供達二人の目がきらりと光る。
「レアきのこは大人でも探すのが大変そうよ、ね、牧師さん」
「うん、探せたらすごいよ!アビー、ジーン!」
牧師さんはアビーとジーンを褒める。
ようやくアビーとジーンはニコニコと笑いはじめ、霧の森へ向かった。