41話 ジェイクの女の趣味が悪いと思っていたがブーメラン刺さりました
次に目が覚めた時は、ものすごい頭痛がした。まだ夢の中にいるような気がしたが、どうやら現実だった。頬をつねると痛い。
私はジェイクの医院のベッドに寝かされているようだった。杏奈先生の事件に時、犯人び放火された時もこの医院に運ばれた事があったので、今いる場所がすぐにわかった。
窓の外は、昼間だった。綺麗に晴れている秋の空が見えた。どうやらあれから1日以上眠ってしまったようだ。
ちょうどそこにジェイクとアラン保安官が入ってきた。
「マスミ、大丈夫ですか?」
ジェイクが私の顔を覗き込む。杏奈先生の事件の時は、こんなジェイクにいちいち反応していたが、今は全く何も思わない。健康ヲタクである事はともかく、女の趣味はかなり悪いが判明したし。
「ええ、ちょっと頭は痛いけれど大丈夫よ」
私はジェイクやアランにニッコリと笑う。二人はホッとしたように安堵のため息をついた。
「事件はどうなった? ケイトは捕まった?」
二人とも頷いた。
「マークを殺したってようやく吐きましたよ。ずっと事故死を主張していたんですが、包丁を振り回してあなたを殺そうとしていましたね」
無能なアラン保安官もケイトを捕まえて自白させたようで私もホッとする。
「ところでアラン保安官、出世はどうなった?」
ちょっとジェイクは面白がっていた。
「そんなの取り消しですよ! 全く、コージー村の事件はもう僕はノータッチを貫きたい!」
アラン保安官はぶつぶつと愚痴を言い、私達は苦笑するしかない。
「ところで、アラン保安官、チェリーの家のノートは見た?」
私気になる事を言った。
「ノート? なんだ、それは」
「チェリーの家の本棚にあるの。そこにはマークがケイトを殺す計画が書いてあったのよ」
もうケイトには全く同情は出来ないが、その事は伝えたかった。このゆるい警察組織のあるこの国でも正当防衛を立証するのは、難しいだろうが、
一応伝えておくべきだと思った。
「そっか。マークもなかなか酷い男だね」
ジェイクはプンスカ怒っていたが、これはソニアを取られた嫉妬もあるかもしれない。
「まあ、ケイトはちょっぴり可哀想かもね」
「そうか?」
「人の命を奪うのは、良くないですよ。医者としても許せない。やっぱりマスミはお人好しですね」
二人に呆れられたが、やっぱりそう簡単に自分の頭の呑気さは変わらないようである。
「あと、これはケイトに書かされた遺書だよな。この英語とは全く違う言葉は、マスミの国の言葉か?」
アラン保安官は制服にポケットから、あの時ケイトに書かされた遺書を取り出す。
そこには日本語でバッチリと「犯人はケイト」と書いてある。今となっては、こにダイイイングメッセージは無駄になってしまったが、安堵する他ない。問題は、その下に書いてある「牧師さん、好き!」という文言である。あの時は死ぬ思いであったが、冷静になった今は恥ずかしくて仕方ない。この場には日本語を読める人物がいない事が救いである。顔から火が出そうだ。
「ええ、それは日本語よ…。別に大した事は書いていないから、無視して良いわ」
「そっか。聞きたいのはそれだけだったんだよ。じゃあな」
アラン保安官は、あの遺書を再びポケットに入れて去っていった。
「ジェイク、他のみんなは大丈夫?アビーとジーンは、ケイトの事でショック受けてない?」
犯人はこうして捕まったが、村人は大丈夫だろうか。やっぱりアビーとジーンの事を思うと、完全には喜べない。
「うん、アビーとジーンは元気だよ」
しかも今度はリリーに懐いているという。そういえば、リリーは彼らの絵を修復して上げていた。それがきっかけになったのかも知れない。
「他のみんなは?」
「うん、もうみんな悔い改めて、教会に帰ってくるってさ」
「よかったわぁ」
「事件で賭け事やってた連中もいたんだよな。でも、もう反省してしないって。牧師さんの必死の説得がきいたね」
「そうなのね、よかったわ」
一時はみんなマークに騙されて、教会の礼拝も人がいなかった。さすがにマークが魔術師でケイトや子供を殺そうとしていた事を知れば、牧師さんの言葉に耳を傾けるだろう。
「あなたはどう? ソニアの事は、大丈夫?」
この事を聞くのは少し戸惑ったが、気になる。ジェイクに女に趣味は悪いが、ソニアの事であまり思い詰めて欲しくはなかった。
「うん、まぁね…」
ソニアと聞いてジェイクは苦い顔だった。
「まあ、あんなマークと気が合っていたソニアはちょちょね…」
「まあ、ソニアは悪い子ではないと思うけど」
「そうなんだけどなー」
ジェイクは顔を覆って、悩んでいる素振りを見える。どうやらジェイクの恋の病は重症のようだ。つける薬もない。ソニアの悪い面もこの件で知ったはずなのに、未だに彼女に未練があるようだった。
「まあ、元気出してよ」
「マスミが僕のお嫁さんになってくれたら良いんだけどな〜」
「は?」
思わず目玉が飛び出そうだった。イケメンだが中見はかなり残念な男である。こも男がこんな事を言っているのはどういう事だろうか。
「ね、どう? 良い提案だと思わない?」
ジェイクはちょっとヤケクソのように言う。意外と冗談を言っているような雰囲気はない。杏奈先生の事件の時にイケメン医者のジェイクにこんな事を言われたら、頭は一生お花畑だっただろう。
「いいえ。あなたは女性の趣味が悪いし、かえって馬鹿にされている気分なんですが」
「そっか〜」
「私はそんな簡単じゃないんだけど?」
私は胸を張って言う。どう考えても失恋のヤケクソでの提案だし、いくらイケメンにモテてもこんな理由では嬉しくない。
「でも、そんな風にキッパリ否定できるマスミは素敵だよ。たぶん、マスミと一緒になる男は幸せだと思うよ」
「そうかしらねぇ…」
突然褒められてもあまり嬉しくはなく、戸惑うばかりだった。
「まあ、とりあえず今日泊まってく?特性の芋粥をご馳走するよ」
「いえ、いいわ」
私は苦笑して断った。
この土地の料理はもう慣れたが、あの芋粥はとても不味かった事を思い出す。たぶん健康には良いものだろうが、積極的には食べたくない。おそらくあの芋粥に慣れる日は永遠に来ないだろう。こに村の人でもあの芋粥は独特な味で苦手な人も多いと聞いた。
「そっかぁ。ま、あの芋粥はソニアには好評なんだけどね!」
「そ、そうなんだ…」
やっぱりソニアは、変わり者の女だと思った。




