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37話 村の同調圧力

 翌日、私はジミーでの仕事が終わるとあの変な名前のパン屋に向かった。


 ケイトを説得出来るどうかは分からなかったが、もう後は無い。


 少し曇った空に不安を持ったが、プラムから怪しいスプレーも借りてスカートのポケットに入れていたし、無事事件を解決したら、牧師さんからのご褒美も有る。怖いが、もう後には引けなかった。


「あらら、マスミじゃない?」


 そんな決意を揺らがすように、ソニアが現れた。ジミーの家から出たところ、牧場の近くの道を歩いてたらソニアに出会してしまった。


「そんな嫌そう顔をしないでよ」


 上目遣いにぶりっ子してきた。目はウルウルと潤み、やたらとテンションが高い。やっぱり男性はこう言った女性が好きなのだろう。ロマンス小説のように地味で冴えない、我慢ばっかりしているような女がある日突然ハイスペヒーローに見染められるのは、夢のまた夢だろう。


「聞いたわよ。牧師さんが出てきたんですって?」

「ええ」


 一体どこでその話を聞いたんだろう。女性陣に嫌われているソニアでもこの噂を耳にしているという事は、よっぽどこの村で噂が広がるのが早いと思わされる。


 そんな事を考えていたら、牧場の羊が鳴き始め、少し驚く。ぶりっ子ソニアにしては珍しく羊を見て顔を顰めていた。


「羊嫌いなの?」

「ええ。田舎くさくて嫌になるわね?」


 同意を求められたが、この田舎のスローライフにすっかり染まっている為あまり同意ができない。


「噂好きの田舎者ばかりよ。下らない。出る杭は打てって感じ。同調圧がすごくて嫌になるわ」


 明かに愚痴ではあったが、シニアは遠い目をしながら羊を眺めて、どこか上の空だった。


 ちなみに英語で出る杭は打たれるといことわざ的な表現はない。英語では「A nail that stands will be hammered down.」と言うだけで、日本の独特な集団意識や同調圧のニュアンスをそれほどまで表現はしていない。でも何故か、ソニアの言葉には村社会の行きにくさが滲んでいた。また田舎者は英語でhickやclownともいう。これらはだいぶ嫌らしいニュアンスが含まれている。ソニアはclownを使っていた。


 自業自得とはいえ、ここまで女性達に嫌われていたら生きにくいだろう。カーラもそうだった。そう思うと、ソニアに対して一方的に嫌な印象を持ちすぎていたかもそれない。犯人はおそらくケイトだろうし、ソニアに対して嫌な感情を持ってしまった事を反省したくなった。


「ソニア、何か困ってる事でもある?」

「別にないけど、田舎者の連中が心底嫌になったわよ」

「何で?」

「実はね」


 ソニアは、今日の午前中、アナやローラ、それに農業を生業にそている村人何人か会ったらしい。しかし、彼らはマークの事件の事を面白がり、誰が犯人か賭け事をやっていると言う。賭けで一番人気だった牧師さんが出てきて、彼らはとてもガッカリし、大穴扱いのソニアが犯人かと揶揄われたらしい。


 それには私はドン引きだった。まさか事件をネタに賭け事をしていたとが予想外だった。


「冗談じゃないわよ。私は人殺しはやってないわ」


 この怒り方だとやっぱりソニアは犯人には見えない。


 ・賭け事をやっている連中を後でやめさせないと。


 いくら田舎者でも趣味が悪すぎる。この村人にはいい印象が強かったが、何事も表と裏があるようで有る。田舎らしい嫌な面が全く無いわけでは無いようだ。こんな事でネタにされたソニアに同情しか無い。


「ソニア、他に困った事はない?相談ぐらいは乗れるわ」

「あ、あなたは確か相談業みたいなこと事やっていたのね」

「別に仕事抜きでもいいよ。お金払いたかったら払ってくれてもいいし」

「はは、面白いわね!」


 ソニアは豪快に笑っていた。この笑顔は不自然なぶりっ子っぽさが無く、少し可愛かった。ジェイクがソニアが好きな理由が少しわかるような気もする。


「いいわね。私も自分の作品の作成中は、自信が全く無いからずっと私の絵を褒めていて欲しいわね」

「そうなの?それぐらいはお安い御用よ。実際あなたの絵は素敵だった」


 芸術的な事はわからないし、好みの絵ではなかったが、あの絵の良いところはいくらでも思い浮かぶ。色遣いも綺麗だし、独創性あるし、目をひくオーラのようなものもある。ソニア自信の雰囲気によく似た絵だと思う。


 ソニアは、私の言葉になぜか泣きそうな顔をしていた。唇を噛み、少し目が赤くなっている。やっぱり芸術家肌の人間の悩みは私のような凡人には計り知れない悩みがあるのだろう。


「そう言ってくれるとありがたいわ」

「別に大した事は言って無いけど?」

「あなたは素直でいい子ね。私は全く逆だからね」


 今のソニアは少し声も低く、ぶりっ子演技をしていないようだった。


「そうかな…? あ、そろそろ私も行かなくちゃ」

「まだ事件の捜査しているのね。犯人の目星はついた?

「ええ」


 私は頷く。


「私はケイトじゃないかって思ってる。ねえ、ソニア。ケイトについて何か知っている事ある?」

「そうね…。そういえば、ゴミ捨て場でゴミいっぱい捨てて居るのは見た」

「ゴミ?」

「なんかお菓子みたなもの捨ててたかも?何か関係ある?」


 お菓子といえば、ちょっと前にケイトに子供達が手作りのクッキーをあげた。もしかしてそのクッキーだろうか。嫌な予感が襲う。


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