35話 悪に悪で返してはいけない
チェリーの家からプラムと一緒に帰った。クラリッサの家に戻りと、なんと牧師さんがいた。
リビングでブラックティーを啜っていた。デレク、クラリッサと一緒に談笑していた。子供達は庭で遊んでいたが、あまりにもいつも通りの牧師さんの姿に私はとても安心した。エリマキも嬉しい様で、牧師さんの首にモフモフとした身体を纏わりついていた。
「あなた、本当に釈放されたのね」
プラムも少し驚きながら、ソファに座る。
「ええ。アビーとジーンの証言により、僕と事件の関与は無い事になりまそたよ」
「つくづくこの土地の警察はゆるいよなぁ」
デレクは呆れていた。
私も適当過ぎるこの土地の警察に呆れるばかりである。まあ、今までの事件は杏奈先生が全て解決していたし、仕方がないのかもしれない。
「それで、犯人はわかった?」
クラリッサが、ちょっ目を輝かせて言う。私とプラムは顔を見合わせ、今日までわかった事を全て言う。
「犯人はおそらくケイトね」
私はちょっと自信持って言うが、デレクや牧師さんの男性陣は顔を顰めていた。
「でもさ、その憶測では証拠ないよ?」
デレクは珍しく冷静だった。
「そうですよ。いくらアラン保安官でも、それなりの証拠が無いと動かないでしょうね」
牧師さんはため息混じりである。この様子ではアラン保安官にウンザリさせられることが多かったと察する。牧師さんはいつも通りに見えたが、やっぱり少し痩せているように見えた。アビーとジーンのイタズラで誤認逮捕されたと知った時はさぞ、脱力した事だろう。
「でも状況は、どう考えてもケイトよ」
プラムははっきりと言う。
「そうねぇ。ソニアも変な女性だけど、動機は無いのよね」
クラリッサもソニアの良い印象はない様であるが、殺しをするほどとは思っていないようだ。それに関しては私も意見が一致いる。ソニアは殺人犯には見えなかった。
「私はケイトを自白させようと思ってる。難しいかしらね?」
クラリッサも、デレクは難しい顔をして首を振る。プラムはもはや呆れていた。
「でも、私も下手にアランに言うよりマスミに説得させた方がいいと思うよ」
牧師さんだけがニコニコ笑って私の考えに同意した。心なしか彼の首に巻きついているエリマキも頷いているように見えた。
「全く牧師さんもお人よしね。私だったら縄で縛って無理矢理吐かせるか、自白剤でも打つわ!」
「こらこら、プラム。そこまでしなくて良いじゃない。ケイトも糞な夫の被害者かもしれないのよ」
物騒な事を言うプラムをクラリッサが嗜める。クラリッサに頭の上がらないプラムは、渋々彼女の言うことに頷いた。こんな二人のやりとりに一同。苦笑するしかない。デレクはプラムをさらに怖がった様でわざとらしくプルっと震えていた。
「悪に悪で返してはいけません。聖書にも書いてますし、善意を持って誠実に行った事はきっと神様が見てますよ」
そう牧師さんに言われると、やっぱりケイトには誠意を持って接するのが良さそうだ。
「牧師さんはどうするの? 村の人達はもうあなたの事は嫌ったりしていないと思うけど?」
クラリッサは微笑み言う。
「この後は村に人達を一人一人会おうと思います。占いや霊媒に手を出してしまった村人がいるのは、僕の力不足ですよ…。私の責任です」
素直にそう言う牧師さんに私はキュンとしてしまった。どう見てもマークが火種をまいていたというのに。
「牧師さんは、謙虚だよな〜。なんか、俺は牧師さんに勝てないかも…」
デレクはそんな彼に呆れた様に呟いた。その後、牧師さんは夕食を食べ、アビーとジーンを連れて帰って行った。
牧師さんは一切アビーとジーンを叱っていなかったが、そんな親代わりの彼に何か感じ取ったらしい。終始俯き、今までのヤンチャさが嘘のように大人しかった。しかもアビーは疲れて眠ってしまい、牧師さんに背負われて帰っていった。




