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31話 意外な犯人

 夕方、クラリッサの家に帰ると妙な雰囲気を感じた。キッチンの方がガヤガヤと騒がしい。


「どうしたの?」


 キッチンに行きとアビーとジーンが大泣きしていた。デレクやクラリッサは子供たちを宥めているが、プラムは目を釣り上げて怒っていた。


 キッチンにはきのこが散乱。作りかけのシチューの鍋もあるが、すっかり冷めてしまったようだ。


「デレク、なにこれ。どうしたの?」


 一番キッチンにいる直時間は長いデレクに聞く。


「アビーちジーンがイタズラしたんだよ。僕が目を離した隙に鍋に毒きのこを入れてしまったんだ」

「えぇ、本当に?あなた達、なんて事をしたの?」


 叱るつもりはないが、びっくりして大きな声を出してしまう。お陰でアビーとジーンはさらにギャン泣き。耳が痛くなるほどで、クラリッサは呆れて食堂の方に行ってしまったが、プラムは容赦なく怒っていた。


「あなた達、泣いたって許しませんよ。奥様やみんなが毒きのこで病気になったらどうしてくれるんです?」


 プラムがクラリッサの事を奥様呼ぶときはかなり怒っている。デレクがクラリッサに色仕掛けをして居た時のことを思いだす。デレクもその事を思い出したようで、居心地悪く咳払いをして居た。


「うわーん!」


 特にアビーは大泣きしていたが、プラムは容赦せず、二人を地下の牢屋に連れて行ってしまった。


「ちょ、プラム少しやりすぎじゃない?」

「デレクの言う通りよ、可哀想よ」


 私とデレクはドン引きしたが、プラムは聞く耳を持たない。


「このままあの子達を甘やかす方が可愛いそうですよ。このまま甘やかしてあの子達は一体いつ反省するんです?奥様やみんなに被害があった後では遅いんですよ」


 プラムの言うことはもっともだった。やっぱりアビーとジーンは少し厳しくされた方がいいかも知れない。この異世界は思ったより厳しい世界だし、ここで甘やかすのが良いこととも思えず、私も教師モードでプラムに同意する。


「そうね、あの子達も甘やかすのが良いこととは思えないね」

「マスミは学校の先生だから話が通じるわね。全くその通りよ」


 すっかり怖いモードに入ってしまったプラムと私にデレクは頬うぃピクピクさせて怖がっていた。


 夕飯は、シチューがダメになってしまったので田舎パンと青菜、生ハム、それにチーズというシンプルなものになった。


 アビーとジーンがいない食卓は、ちょっと静かになってしまったが仕方ない。


「それにしてもあの子達が、毒きのこを入れるイタズラをするなんてね。やっぱり、あのきのこ祭りの時にもあの子達が毒きのこを入れたのかしら?」


 クラリッサは渋い顔を見せながら、田舎パンに生ハムを乗せて食べる。クラリッサの言っている事は、私も考えていた事だった。


 もしアビーとジーンのイタズラであのきのこ祭りのときもシチューに毒きのこは混入したとなれば、少なくとも牧師さんの濡れ衣は脱がせられる。


 だからといって犯人は見つかるわけではないが、マークの死因も別の原因の可能性がある事も証明できる。つくづく日本の様な科学的な調査が出来ないのは嘆かわしいが、ここは異世界だし仕方ない。


「たぶん、あの子達が毒きのこを入れたんだろうね。チャンスもあるし」


 デレクもクラリッサの意見に同意する。


「でも、マークを殺すためにそんな事するわけないわよね」


 プラムは苦い表情だ。やっぱり子供達を叱り過ぎた事ではいい気分にはなれないようで、彼女はあまり食欲が無い様子だ。田舎パンにもほとんど手をつけていない。私もアビーやジーンが牢屋にいると思うと、呑気に夕食を食べる気分にはなれない。子供を叱る方もかなりのエネルギーを消費する。やっぱり仕事で生徒を叱る事とはわけが違う。


「そうさ。あの子達がマークを殺すわけないだろ。たぶんイタズラだよ。大人達が忙しそうで、構って貰いたかったんじない?」


 デレクは呑気にそう言って田舎パンをムシャムシャ食べていた。一同デレクの意見に頷く。やっぱり子供達が殺意を持ってシチューに毒きのこを入れたとは考えにくい。きのこ祭りの前は母親とそっくりなケイトに会って情緒不安定だったし、あの日はバタバタと忙しくアビーやジーンの事の事をよく見てあげられなかった。やっぱり、子供のこんなイタズラは大人達に態度に関係していたのだろう。


 アビーとジーンは地下室の牢屋で反省しているわけだが、私も反省する事は多いかも知れない。


「そうね。私もあの子達について、あまりよく面倒見られてなかったかも。食事が終わったら、二人を出してあげたいけど、どう?」


 私に提案にみんな頷く。あんなに怒っていたプラムも深く頷いていた。


「それに図書館の本で読んだけど、あの毒きのこでは人を殺せないと思う。やっぱりマークの死因は別のところにあるんじゃないかな?」


 あんまり食欲はなかったが、田舎パンを齧った後に言う。推理とも言えない憶測だが、やっぱりこの謎に行きついてしまう。


「今日、ソニアに会ったんだけど、事件の日、マークとケイトが会っていたみたい。やっぱり毒を仕込みなら奥さんが一番やりやすいと思うのよね」

「でもマスミ、証拠ある?」


 プラムの指摘はもっともである。今の段階ではケイトが一番怪しいが、証拠は見つけられない。それなのにケイトを疑っているのは、単なる妄想になってしまう。


「やっぱりマークの家に行って何か探した方が良いわよ」


 クラリッサはけしかける。完全に他人事であるし、後で小説のネタにしようと企んでいる事がありありと伝わってくる。


「不法侵入は気がすすまないわ…」


 杏奈先生の部屋やカーラの部屋も捜査の為に勝手に入ったが、やっぱり申し訳ない気持ちになって憂鬱だ。


「そんな事いってる場合じゃないわよ、マスミ」

「そうだよ。のうのうと犯人が彷徨いている方が嫌だよ」


 プラムやデレクにもこう言われてそまい、結局明日マークの家に探りを入れる事になった。ちょうどジミーも用事があって王都に出かけているし、時間はあった。それにプラムも一緒んk来てくれるという。だったら安心だ。やっぱり一人で不法侵入するのは気が重い。


 その間、クラリッサとデレクは警察署に行きアビーとジーンの事を話す事に決まった。


「じゃあ、決まりね! そろそろアビーとジーンも出してあげましょう!」


 クラリッサが明るく言った。

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