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26話 可哀想な妻にお見舞いです

 翌日私とアビーとジーンは、マークのパン屋に向かっていた。


 一応ケイトにお見舞いに行くという体だが、事件調査のつもりだった。


 アビーとジーンは懐いてるケイトに会えると大はしゃぎだった。あのパン屋に行く道すがらずっとそうだった。


「ケイトは、クッキー喜ぶかな?」

「僕も一生懸命作ったんだよ。絵だって一生懸命描いたんだから!」

「こらこら、あなた達。ケイトは旦那さんを亡くしたばかりだからあんまり騒いではダメよ」


 一応注意してみたが、アビーとジーンは無視して笑っていた。


 元気そうではあるし、アビーは嘘をつく事はなむなったがこの落ち着きの無さは気になる。やっぱり保護者がわりの牧師さんが捕まった事に何の影響が無いとは言えないらしい。


「ねえ、牧師さんが居なくて寂しい?」


 子供達に牧師さんの話題を出すには少しはためらわれたが、やっぱり気になる。


 アビーもジーンもちょっと顔をしかめ、何とも言えない微妙な表情を浮かべる。何かこの子達も知っているのだろうか。子供とはいえ、一応聞いても良いだろう。


「あなた達、毒きのこを鍋に入れた犯人とか知らない?」


 あからさまに子供二人はギクっとしていた。この質問は言われたく無いようで、さっきまではしゃいでいたのに無言になる。


「何か知ってるのね? 言いなさいよ」


 私は教師モードになり、子供二人を見つめるが、結局何も答えなかった。


 ・アビーとジーンが何か知っている模様。子供の事とはいえ、後で事情を聞かなくちゃ


 変な名前のパン屋はシャッターが閉まっていたが、私が裏口のドアをノックするとケイトが出てきた。


 顔は真っ青、髪がボサボサ、ノーメイクで憔悴していた。夫がなくなったらこんなものだろう。


「あの、どちらさまでしたっけ?」

「ああ、この子達の保護者の藤崎真澄というものです。この子達がどうしても貴方心配で来たんですが…」

「あ、そうなの」


 ケイトは小さな声でそう言うとアビーとジーンを一瞥する。心底子供に興味が無いという態度だったが、アビーは心配そうにケイトを見る。


「ケイト、大丈夫?」


 さすがに子供に純粋に心配されて、ケイトも何か感じとったらしい。少し泣きそうな顔を見せた。単純に子供になれていないだけで、サイコパスでは無さそうだ。


「どうぞ、上がって。でもろくにお茶の支度もできないけど」

「ええ。気にしなくていいわ」


 こうして私達は、住居スペースがあるぱの二階に上がる。

 もともとはロブの家だった事が信じらて無いぐらいファンシーな雰囲気のリビングだった。ぬいぐるみや絵がごちゃごちゃと飾ってあり、カーテンもピンク色でヒラヒラしている。


「どうぞ。牛乳ですけど」


 お茶は出せないと言ったが、ケイトはミルクを持ってきてテーブルの上に乗せる。


 子供達は意外にも大人しくしていた。他人の家が珍しいのか、落ち着きなくキョロキョロしていたが、一応静かに座ってはいる。


「これ、僕たちが描いたんだよ」

「私も描いたんだから!」


 子供二人はさっそくケイトの絵を渡す。ケイトはちょっと困った表情を見せながらも絵を受け取った。


「これはクッキーなんですけど」


 私も紙袋からラッピングされたクッキーを出して、ケイトに渡す。ますますケイトは困惑し始めた。心底どうすれば良いかわからないという顔を見せ、渋々クッキーを受け取る。クッキーを持って来たのは失敗だったかもしれない。やっぱり夫が亡くなったショックなのか、ケイトは心が痛んでいるように見えた。たぶん子供の絵やクッキーではその傷は癒やさないだろう。


「これは何?」


 ケイトは貰った絵に描いてあったエリマキを指さす。アビーが描いたもので背景に我が家のモフモフ小動物も描いたらしい。


「これ? うちにいるエリマキだよ」


 アビーが無邪気に答える。


「エリマキってこちらの動物のマリエなんです。知ってます?」


 私が言うと、ケイトは頷く。


「ええ。確か霊性が高い動物だとか。でもこの村の森には居ないってお客さんから聞いたわ」


 その理由は、杏奈先生の事件の時に知ったが、別にケイトにわざわざ話す理由は無いだろう。


「ケイトは大丈夫? 顔色悪いけど、ご飯食べてる? パンケーキぐらいなら作れるけど」

「パンケーキ?」

「私の地元で人気だった料理。もしかしたら転移者であるマークも知っているかもしれないけど」


 ケイトはなぜか無表情になった。


「ごめんなさい、今は旦那の名前を聞きたく無いの」

「あぁ、ごめんなさい」


 ケイトはイライラし始めたが。情緒不安定である様だが、ちょっと様子がおかしい。ケイトはミルクを一気に飲み干し、ゲップを吐く。


「ミルクで酔えやしないわね」

「そ、そうね…」


 やっぱりケイトの所に来た事は失敗だったのかもしれない。子供達はケイトの真似をし牛乳を飲み始めた。やっぱり母親に似ているケイトに懐いている様だが、私はこの人を信用できない。


「もう、マークも死んだしどうなってもいいわ」

「そんな」


 自暴自棄というか、ケイトの絶望感が伝わってくる。子供達も思わず押し黙っていた。


「マークはね、不倫の常習犯だったのよ。悪霊追い出すとか言って、金銭を脅す事もあったけど、最終的には不倫関係に持ち込むのよね」


 そう聴くと、やっぱりマークには同情出来なくなってくる。ジャスミン、リリーもそこまでの関係になって無いのが救いである。


「何か知っている事はない?」

「何あなた。何か調べてるの?」


 私は頷いた。ここで嘘を吐くよりもケイトから何か知っていないか聞き出す方が良いような気がした。


「そうねぇ。あの人を恨んでる女は多いんじゃない。不倫して居心地が悪くなって街や村から追い出されるのが、いつものパターンね。さすがにこんな風に死ぬのは初めてだったけど」


 ケイトは薄く笑っていた。心がやんでいる様子がありありと伝わってきtr怖いが、マークがなぜ偽予言者にような事をしていたかわかる。女性と関係持つためだろう。脅しを使えば、一種に洗脳状態。恋愛関係など簡単に持ち込めるだろう。


「誰かマークを恨んでそうな人の心当たりはない?」

「そうねぇ。そういえばあの若い子、ジュース屋さんが可愛いとか言って鼻の下を伸ばしてたけど、何か関係ある?」


 アナに事か。アナもマーク信者だったので、何か事件について知っている可能性があるだろう。ジェイクが好きだったアナがマークと不倫をしている可能性は低そうではあるが。


「ケイト、元気出して!」

「そうだよ、クッキー食べて元気出してよ!」


 アビーとジーンは、明らかに病んでいるケイトを励ました。


「ええ、でも…」


 しかしケイトは何か言いかけて口籠もる。


「マークは…」

「え?」

「いえ、何でもないわ。やっぱり悪い事をするとそれなりに報いは受けるのね。はは」


 ケイトは笑って居たが、私はちっとも笑えない。子供達のメンタルを心配していたが、今のケイトの心も心配だ。やっぱり早く犯人を捕まえなくては。

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