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23話 リリーの秘密

 翌日、デレクやクラリッサ、プラムや子供達二人はキッチンにこもりクッキー作りに勤しんでいた。結局ケイトに渡す菓子はクッキーになった。こに世界にもクッキー自体はあるし、子供達も型抜きを楽しめるし、何より癖のない菓子なのでケイトも嫌いのな可能性は低いのでこの選択になった。


 もっとも私は、クッキー作りはほとんど参加できない。ジミーの家の仕事、転移者保護の見回り、リリーに会いにいくので忙しかった。


 忙しく歩き回りバタバタと仕事を終わらせ、リリーの店に向かった。


「あぁ、マスミ。待ってたわ」

「こんにちは、リリー。お店は?」

「もう閉めるわ」


 リリーは雑貨屋をしめ、住居がある2階に案内する。

 二階はキッチン、リビング、リリーの部屋があり、一人ですむは十分にな広さである。絵が好きなリリーらしく壁には、山や湖、花や森の絵が飾ってあり華やかだ。


「あぁ、ぼーっとしていて何も出せるものがないわ」


 リリーはキッチンで困っていた。


「別にいいわよ」

「あ、ミルクはある」

「砂糖と小麦粉と卵が有れパンケーキが作れるんだけどなぁ」

「パンケーキ?」

「ええ。日本でも人気があったお菓子」

「ああ、アンナのカフェのメニューにもあったの思い出したわ。マリトッツォにハマってそんな食べてないけどね。あ、卵も小麦粉あったわ!」


 リリーは食糧を入れてある棚に中から小麦粉を持ってきた。袋の賞味期限を確認すると、まだまだ持つようである。


 こうして私はリリーのためにパンケーキを作った。杏奈先生のパンケーキの味を知っているリリーに作るのは、ちょっとプレッシャーだが、綺麗に焼けて皿の重ねて出す。蜂蜜は無いようなので、バターだけ上に乗せたシンプルなパンケーキができた。


 リビングに持っていって二人で食べる。


「アンナが作っていたのは、こんもりとクリームが乗ってたのに」

「ごめんね。これが一番シンプルなパンケーキよ」

「それでも美味しそうね」


 杏奈先生のパンケーキを知ってるリリーはちょっと残念がりながらも、パンケーキをぽそぽそと食べていた。


「美味しいじゃない」


 口ではそう言ってはいたが、リリーは憂鬱そうである事を隠せなかった。


 パンケーキは我ながら上手くできたが、今日の目的はそれではない。少々迷ったが、私は単刀直入にマークの事を聞いて見る事にした。


「マークについて何か知らない?」


 リリーはパンケーキを食べるのをやめていた。私に助けを求める様な表情を見せている。


「マークは…」

「悪霊がついてるとか脅された?」

「うん…」


 リリーは目を伏せ、泣きそうだったしかしここで事情を聞くのをやめるわけにはいかない。


「何かあった?マークに酷い事でもされた?」

「脅されてたの…」


 そんな事だろうとは予想していたが、事件と関わりはまだ無い。私もちょっと辛くなってきたが、聞かなければ。


 リリーはポツリと事情を話し始めた。


 マークから悪霊がついていると脅された。リリーにはそれを招く心当たりがあった。ハードボイルド町にいる霊媒師のところに行き、恋愛運を見て貰っていた。それは聖書では罪のひとつだったが、どうしてもジェイクに振り向いてほしくてついつい通っていたという。クリスチャンとしては禁じられた行為であったが、好奇心や欲望に負けてしまったという。


 私は特に驚かない。確かにリリーが罪悪感を持っているのは伝わってくるが、無宗教の日本人にとってはなかなピンと来ない。


「それでマークにその事を話して悪霊を追い出して貰ったんだけど」

「だったらいいじゃない。何か問題?」

「この事をみんなに話して村に居られないようにするって脅されて…」


 マークは悪霊の件を利用して脅していたのか。これは殺される動機が山とありそうだ。マークに抱いていた同情心はすっかり消えた。リリーのこんな秘密を濁り、お金を要求していたという。マークそのものが悪霊だったのでは無いかと思うほどだ。


「まさかマークが死ぬなんて。私は殺して無いわ。でも毎晩夢に牧師さんが泣いてる顔が出てきて、本当に神様に申し訳ない事をしたわ…」


 リリーはとても苦しそうだったが、無宗教の日本人である私はあまりピンと来ない。


「でも何で霊媒師なんかに頼ったのよ。普通にアピールすれば良いじゃない。リリーだって十分美人なんだから」


 でもいくら恋愛で追い詰められているからと言っても、リリーのキャラクターとはちょと違うというか、もったいない気もした。


「それは、ソニアがこの村に帰ってきたからね。ジェイクはソニアがまだ好きなのよ。そう思うとまた焦ってしまってね」

「そっか」


 そう言われてしまうと仕方ない。恋愛をすると頭はバカになるし、ちょっとの事で不安になり変な事もしてしまう。自分にはあまり経験がないが、ロマンス小説のヒロインはたくさん悩んで色々失敗もしていた。リリーの気持ちだけはわかるような気がする。


「でも本当に私は殺していないわ。脅してる人を殺すなんてとても出来ない。マスミは信じてくれる?」


 何も証拠がないのに信じるとは言えない。でもリリーは、この村に来た私に優しかったし、殺すほどの実行力もあるかわからない。何となくリリーを疑う自分は居心地が悪い。


「ええ。殺しで捕まったら、リリーはジェイクに会えないじゃない? 殺さないわよね?」


 そう言うとリリーが深く頷く。確か疑わしくはあるが、とりあえずリリーの事は信頼しておこう。あまりにも村人を疑うのも、私のメンタルをやられそうだ。


「うん、殺さない」

「わかったわ。他に何か心当たりは無い?」

「アナよ」


 これは予想外の名前だった。確かにアナのマークに心酔していたはずだが。


「あの子の脅されてたし」

「何で脅されてたかわかる?」

「さあ。でもマークと言い争いをしているのも見たし。あと、ソニア」


 またこの名前である。アナはともかく正直なところソニアはとても怪しかった。


「何でソニア?」

「あの性格の悪さだったらやりかねないわよ」


 根拠はなし。これは嫉妬かもしれないが、評判に悪い女だ。何か事件と関わっていてもおかしくは無いだろう。



 ・ソニアと接触する事


 ノートに書く。正直、アナやリリーなどの村人を疑うのはいい気分ではない。面識のないソニアを根拠なく疑ってしまう。


 私もアラン保安と同等かそれ以上に無能かもしれないが仕方ない。この村に来て3ヶ月ぐらい経った。いつのまにか、この村の住人に愛着を持っていたのかもしれない。それに牧師さんに濡れ衣を一刻も早く脱がせなくちゃ!

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