17話 捜査開始
この後、とても大変だった。
ケイトは絶対に教会にマークに遺体を安置したくなと言い張り、結局ケイトの自宅に運ぶ事になる。
鍋や調理器具、余ったきのこの食材なども全部後からきた他の保安官が回収しに行ってしまった。
いつもは殺人事件などろくに捜査しないくせに今回は何という素早さだろうか!
「ちょっと、いつも捜査しないくせに今回はぜいぶんとヤル気があるわね」
クラリッサは、そんな保安官を捕まえて文句を言っていた。
「ま、アランは今回昇進があるかもしれないっていう噂がありましてね。ヤル気になっているみたいですよ」
保安官は、呆れたように言う。
「正直あの人無能だから、捜査のヤル気になんて出してほしくないですよ」
保安官の言う事はもっともである。ろくに調べもせず、さっさと牧師さんを捕まえてしまい、こんなんだったらいつものように全くヤル気を見せないで欲しいとすら思う。
しかし、ずっとこのまま放置するわけにもいかない。
他に大勢の村人が帰ってしまったが、残った私、デレク、クラリッサとプラムできのこ祭りの片付けをした。何か事件と関係あるものがないかと探したが、きのこ料理に関わるものはほとんど保安官が持っていってしまった。
「アビー、ジーン。どこ?」
そして子供達二人は落ち着きがなく、湖の方まで勝手に行ってしまった。私とプラムで二人を探し出し、結局クラリッサの家でしばらくこの子達の面倒を見ることになった。牧師館で飼われているペットのエリマも一緒に連れて行く。
私達一行は、ぐったりと疲れながら教会からクラリッサの家に向かう。あんな騒ぎがあり、いつの間のか時間がたったらしい。少し日も暮れかけている。
「まさか本当にマークが死ぬなんてさ」
「そうね…」
この村に殺人事件のなれていない新参者のデレクと私はやっぱりショックだ。そしてまた保護者を失ってしまったアビーとジーンは、泣きそうだった。アビーはキョロキョロと落ち着きがなく私の服を掴み、ジーンは首にエリマキを巻いて、何か言いたげな表情を崩さない。これは本格的に早く対処しないと大変な事になるかもそれない。
「しかし、本当に原因は毒きのこ?きのこで人なんて殺せるの?」
長年、この村の住人でミステリ小説まで書いているクラリッサはすっかり落ち着いていた。むしろちょっと好奇心が抑えきれない顔である。
「本当ね。詳しくは知らないけど、あのシチューに入っていたのはエヘエヘダケ。そんな毒性は無いはずなんだけ近く」
プラムはずっと落ち着き払っていた。確かに彼女の言う事は一理ある。きのこ図鑑では、毒性のあるきのこではあるが、大量に食べない限り死なないとある。個人差はあるが、食べてから十分から十五分で症状が出るらしい。
マークは食べてすぐ具合が悪くなっていた。この時点でおかしい。
日本の警察だったらすぐ化学的な調査で死因は判明すりだろう。しかしこの世界で、きちんと捜査されると思えない。アラン保安官の顔を思い浮かべる不安しま持てない。
「やっぱり、マスミがまた調査しなさいよ」
クラリッサがけしかける。
「マークはあんな風に偽予言をして人々を惑わせたわけでしょ。この村の人達に恨まれている可能性大よ。それにケイトだって怪しいじゃない?」
他人事だからか、後で小説のネタにしたいのか、クラリッサは笑顔でそんな事を言う。
庄司なところ、また事件調査をするのは荷が重い。というか保安官の仕事でしょ!と激しくツッコミを入れたい気分だが、牧師さんの顔やアビーとジーンの事を思うと、やっぱり杏奈先生やカーラの事件と同じように事件調査をしなければならないだろう。この村で一番時間があり、フラットに動けるのは私しかいないし、また調査をする事になるだろう。
「はぁ、気が重いですね」
私はため息をつく。カーラの事件の時は犯人に殺されるところだった。身の危険はゼロでは無い。
「大丈夫よ。デレクが料理してくれているから、私も時間がある。出来るだけ協力するから」
「本当? プラム?」
プラムと一緒に事件調査となると心強い。杏奈先生がいた時には犯人をボコボコにした事もあると言うし、カーラの事件の時もこの目で犯人をそうそているのを見ている。こんな心強い事はない。
「じゃ、僕は料理に専念するよ!」
「私は食べるのに専念ね!」
デレクとクラリッサが明るく言い、一同笑いに包まれる。アビーもジーンもほんの少し笑顔を見せ、私も少しは気分が落ち着いてきた。
クラリッサの屋敷につくと、私はさっそく事件ノートを書き始めた。
●殺人事件発
被害者は変な名前のパン屋の店主マーク。偽予言のような事をして村人を惑わしていた。毒きのこで殺害???
●容疑者
・ジェイク
医者。すっかりマークに騙されていた様子だが、殺人現場では妙に怪しかった。
・ケイト
マークの妻。マークとは別居中(もしかして不仲?)。動機はある可能性はある。
・リリー
雑貨屋。マークに心酔。何かトラブルがあってもおかしくない。牧師さんの悪い噂を流していた?
・アナ
ジュース屋。リリーと同じくマークに心酔している様子。トラブルがあってもおかしくない。
・ジャスミン
司書。知的な冷静なイメージと違ってマークと心酔? 違和感が残る。
・マリー
市役所職員。牧師さんの悪い噂を信じて教会のきていなかった。動機はないが、噂好きちょっと癖のある人物だし要注意。
・ローラ
農家。動機はないが、噂を信じていた。完全に容疑者から外すのも躊躇われる。
・ネル
ミシェルの祖母。動機はないが、毒きのこで配偶者を亡くしている。何か知っているかもしれない。
・牧師さん
疑いたくはないが、動機と殺すチャンスはある。本当に疑いたくはないが、犯人の可能性は捨てきれない。
牧師さんまで容疑者扱いすると、クラリッサやデレクやプラムまで怪しく思えてしまうが、そこまで考えると収集がつかない。それに彼らには動機がない。やっぱり屋敷に住むものは、疑いたくはない。
そこまで書き終えて、クラリッサやプラムに意見を伺う。食堂でブラックティーを飲みながら話すので傍目からはとても殺人事件について話している様には見えないだろう。
「まあ、あなた牧師さんまで疑ってるの?」
クラリッサは、牧師さんも容疑者の一人と知り大笑い。
「だって、一応警察に捕まっていますし…」
「まあ、動機はあるのよね」
プラムはちょっと困った様に言う。
「だったら、明日の午後に牧師さんに会いに行けば良いじゃない?」
「クラリッサ、そんな事は可能ですか?」
私は、警察に捕まった牧師さんにはもう会えないと思っていた。
「ええ。確かアンナも昔の事件でよく誤認逮捕された人に会いに行っていたわ」
プラムもそう言うので、私の仕事の無い明日の午後にでも会いに行く事にしよう。
「マスミは、牧師さんに会いに行くの?」
「マスミは事件調査するの?」
クラリッサの屋敷にいるアビーとジーンは意外にも大人しかった。おそらく広い屋敷に圧倒されているのだろう。
「何、あなた達は何か気になる事があるの?」
私はつとめて優しく二人に言ったが、なぜか答えなかった。
「なんなの、あの子達…」
「まあ、事件があってちょっと疲れているのよ」
クラリッサはそう言っていたが、私はちょっと引っかかった。
・アビーとジーンの様子がやっぱり変?
しかし所詮は子供。事件と関係あるかはわからなかった。




