16話 逮捕!
大混乱だった。
マークは本当に死んでしまった。ぐったりとしたまま動かない。目は硬く閉じ、一ミリも動かない。「悪霊がついている」とさっきまで元気に脅していたのに。
「僕、ジェイクを呼んでくる!」
デレクは医者のジェイクを呼びに行ってしまったが、現場はさらに混乱状態だった。
ケイトは興奮して、泣き叫びながら牧師さんを問い詰めていた。
「あなたが毒きのこを入れたんだわ!」
「そんな、私はそんな事…」
カーラや杏奈先生の事件の時は平然としていた牧師さんだったが、さすがにまいっていた。
「そんな事ないわよ。きのこは私が全部チェックしたよ。毒きのこなんてあるわけないじゃない!」
私も絶叫するようにケイトに言う。しかし、ケイトは私の言葉など信じない。
「嘘よ!」
ケイトだけでなく、この場できのこ料理を食べていた客達は、私達に疑いの目をむける。
「っていうか、私もちょっと気持ち悪くなってきた」
そう言ったのはマリー。
「うっ、吐きそう!」
「私も」
そして客達が次々と具合が悪くなり、吐いたり疼くまるものが続出。
この混乱状態で私は何を良いのかわからない。プラムは素早く動き、解毒のシルシルダケを煮出していた。
「プラム、これは何なの?」
「たぶん、毒きのこのせいよ。経路はわからないけれど、間違いない」
「ちょっと、本当に毒きのこ?私はまあの料理は食べてないけど」
「正解でしすよ、クラリッサ。この煮出した汁をみんなに配って」
私とクラリッサは、手分けをして気分が悪くしている客達にシルシルダケを煮出したものを飲ませる。
ジェイクとデレクもやってきて、具合を悪い人達の様子を見ている。混乱状態ではあったが、ジェイクとシルシルダケのおかげでマーク意外に死人は出ていないようだ。
「こんな、嘘よ! あなたのせい!」
しかしケイトの興奮は全くおさまらず、ずっと牧師さんを詰っていた。私も一生懸命、毒きのこなんて入れていないと否定するが、誰も聞く耳を持たない。
「本当だって。毒きのこなんて盛ってないよ!」
デレクも否定していたが、実際死人がでて、具合の悪い人が続出している現実が目の前にある以上、誰も私達の主張は聞いてくれない。
「やっぱりあなたのせいよ!」
マリー始め役所の職員達一行も牧師さんを責め始めた。
私達はいくら必死に否定しても聞いてくれない。デレク、プラム、クラリッサが味方であることは救いだが、牧師さんはすっかり沈黙していた。目を閉じて何か悟っている様子だ。
「僕やマスミはずっとキッチンで一緒に料理を作っていたよ。牧師さんはシチュー担当だけど、そんな素振りはないし、マスミとも一緒に確認したんだから!」
「そうよ、絶対毒きのこなんて入れてなから!」
私とデレクが牧師さんを守るように叫んだとき、保安官のアランがやってきた。
相変わらずヤル気のない腑抜けた顔で鍋とマークの死体を一瞥。しかし、牧師さんが責められている姿を見て、なぜか笑顔を見せている。邪悪な嫌な笑顔だった。
「ま、この状況ではあんたが犯人だろ」
アランはキッパリと決めつけていた。
「俺、マークから聞いたぜ。あんたは異端の牧師で夜な夜な悪魔を召喚して、村人に殺人を犯すように唆していたんだってな」
そんな事あるわけない!と今度はプラムが叫ぶが、この無能そうな保安官はあっという間に牧師さんの手首に手錠をかけてしまった。
「やっぱりあんたが犯人よ!」
ケイトは、指刺して牧師さんを非難する。一方牧師さんは意外にも平然な顔を見せて薄ら笑いを浮かべていた。
「まあ、良いでしょう」
牧師さんは悲しげな声を出す。
「そんな」
私は弱々しい声しか出ない。しかし、アランはニヤニヤと笑い「これで手柄を取った!」と勝ち誇っているではないか。
「どうしよう、クラリッサ、プラム…」
たぶん涙が出ていたと思うが、そんな自覚も忘れてしまうほど、頭の中が白くなっていた。何も考えられないというのは、こういう状況か。
「マスミ、アビーとジーンを宜しくお願いします」
こんな時でも子供達を心配している牧師さんの事を思うと、本当に涙が止まらないと思う。
ジェイクは具合の悪くなった人の介抱で駆け回っていたが、牧師さんの姿を見ると一瞬罪悪感に染まった表情を見せた。でも、全く彼は牧師さんを庇う事などはしなかった。
「じゃあ、逮捕な!」
アラン保安官は非常に軽いノリで言い、牧師さんを連行しに行ってしまった。
「どうして…」
いくら考えてもわからない。私の小さな呟きはみんなの叫び声にかき消された




