14話 きのこ料理作り
1週間後の日曜日、教会できのこ祭り開催が決定した。相変わらず村ではマークの偽預言で人々が惑わされているようだったが、これで一応少しは牧師さんのところに人が戻ってくるかもしれない。
もちろんきのこ料理は無償で提供される。この村の住人が食べ物で釣られるかはわからないが、デレクもきのこ料理作りを手伝うと言うし、私も毒きのこがき混入しないかチェックする事になった。きのこ図鑑を持って、デレクと一緒に日曜日の朝早く教会に向かった。
牧師館のキッチンで、きのこのチェックを始めた。
「まあ、毒きのこなんてないでしょう?」
牧師さんは呑気だった。あれ以来ちょっとアビーとジーンが落ち着いてきたそうなので、体調面は良さそうだった。今日のきのこ祭りで人が戻ってくる可能性もあるし、先週よりは比較的元気そうに見える。
「まあ、無いと思いますが一応確認しますよ。あと一応解毒作用のあるシルシルダケは、こっちに避けてあります」
「これが解毒きのこ? こっちの世界は面白いな」
デレクは、シルシルダケを見てちょっと大袈裟に驚いていた。
私は毒きのこがないか一つ一つチェックしてみたが、一本だけ見つかっただけで毒きのこはなかった。
「これで大丈夫ですよ」
私はチェックしたきのこの入ったバスケットを牧師さんとデレクに渡す。見つかった毒きのこはゴミ箱に入れる。
その後、きのこのピザ、きのこのシチュー、きのこのマリネを三人で手分けして作った。私は別に料理は得意では無いが、食材を切ったり、軽量したり、食器を洗ったりして忙しく動く。
「やった! ピザが出来上がったよ」
ほとんどデレクが作ったきのこピザはとてもいい匂いがした。デレクも出来に満足しているようで、笑顔で出来上がったピザを眺めていた。ピザを始めてみる牧師さんは興味深々だ。
「向こうではこんな美味しそうな料理があるんですね…」
でもちょっぴり自信を失っている様だった。
「この世界には、珍しいものなんて何も無いでしょ。二人とも帰りたく無いの?」
牧師さんの言う事はもっともであったが、私もデレクもすっかりこの世界に馴染んでいる。
「まあ、慣れちゃったし」
「うん、今更疫病が流行ってる世界に帰りたく無いっていうか」
「マスミ、あっちでは疫病が流行ってるの?」
「ええ。みんなマスクして消毒して。人とあんまり距離も取っちゃいけないのよ」
その事を思い出す地ちょっと気分は暗くなってくる。もちろんあちらの世界は便利だが、明るい未来があるとは思えなかった。
「そう思うと僕も帰りたく無いね。みんな自分勝手でギスギスしてるし」
デレクも元いた世界を思い出してため息をつく。
「教会でもこんな風に料理出すのも中止になってるよ。やっぱりこっちの世界がいい!」
「そうですか。そう言って貰えると嬉しいですね」
人たらしっぽいデレクは牧師さんともすっかり仲良しだ。ロマンス小説のように、恋のライバル同士で争うという事はないらしい。悲しい事に牧師さんは私に興味がない。そうなるシチュエーションは望めないようだった。
こうして後は、きのこシチュー、きのこのマリネを作り終え、大方きのこ祭りの準備は完了した。配布するために紙皿や紙の器、フィークやスプーンも準備ができているし後は人がくるのを待つだけだ。
「人がくるといいですね」
準備を終え、牧師さんはニコニコと笑っていた。この笑顔をみる限り、牧師さんは大丈夫そうである。
先週は確かに悪い予感も感じたが、こんな美味しそうなきのこ料理を目の当たりにすると、いい予感が胸に満ちた。




