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13話 変な名前のパン屋に偵察です

 クラリッサと牧師さんは聖書勉強を始めてしまったので、私とプラムは帰る事にした。


「あのマークっていうパン屋が気になるわね…」


 プラムも何か不安を感じ取っているようだった。


「ちょっとあにパン屋の様子を見に行く?」

「そうね。奥様に何か危害が加えられてからでは遅いわ」

「まあ、あそこのパンは思ったよりは不味くなかったけど」

「マスミ、パンの味の問題じゃないわよ。悪霊がついている何て言って人々を惑わせているなんて」

「そうね」


 そんな事を二人で話しながら、商店街の道に入る。

 デレクのカフェも施工が進み、変な名前とはいえマークのパン屋ができて一時期よりは商店街は賑やかさを取り戻していた。といっても今日は日曜日なのでミッキーのパン屋やリリーの雑貨屋は休業中であるが。


 変な名前のパン屋は営業中だった。


「プラム、入ってみる?」

「そうね、一応どんなものかチェックしてみましょう」

 変な名前にパン屋は昨日と全く同じように見えたが、棚の食パンはスカスカで「ソールドアウト」とある。


 マークはいなかったが、ケイトがでてきて売れきれと言う。ちょっと言葉の丁寧さが足りていないように感じた。英語で言う場合はもう少し丁寧に「I am sorry but they are sold out.」と文で言った方がいい。別主英語には日本語のような敬語は無いが、ぞんざいな言い方、丁寧な言い方はある。どうもこのケイトも商売気がないというか、色々と惜しい人に見えた。


「ふーん、そうなの。だったら良いわ。ところであなたの旦那さんって偽預言者みたいな事をしてカルト教会みたいの作っているって本当?」


 プラムは冷たく言い放つ。このプラムはちょっと怖い雰囲気の女なので、ケイトはひるんでいた。


「私はあの人がしている事など知りませんよ…。夫婦と言っても別居していますし」


 ちょっと怯えたようにケイトが言う。見た目は美人であるが、どうも飼い慣らされた犬のような女だと思った。田舎くさくて不謹慎だが、メンタルが強い女が多いこの村でケイトは浮きそうだと思った。


「へえ、そう。パン屋はどうして始めたの?」


 プラムはさして興味が無さそうにガラガラの棚を一瞥する。


「旦那がニホンにいた事があるらしく、そこで勉強してたのよ。この土地でも受けるに違いないって」

「へぇ…」


 心底プラムは興味がない様子だった。ちょうどそこへアビーとジーンが入ってきた。


「ケイト! こんにちわ!」

「こんにちは!」


 二人はいつもに増して子供らしい無邪気さを見せていた。


「ねえ、私ケイトの絵を描いたのよ、見てみて!」

「僕もだよ!」


 すっかり二人はケイトに懐いているようだった。この様子では、牧師さんの許可を取ってきたわけでは無さそうだ。


「ねえ、あなたたち、牧師さんに出かけてくるって行った?」


 久々に私は教師モードになり、子供二人に言う。


「そうよ、何勝手に来てるのよ。だめじゃない」


 さらに怖い雰囲気のプラムに凄まれ、アビーとジーンはだいぶ大人しくなった。


「まあ、でも絵をもらえる何て嬉しいわ。また来てね」


 ケイトはこんな状況に困惑しながらも子供たちから絵を受け取った。


「さあ、帰るわよ」

「ええ、アビーもジーンも帰りましょう」


 プラムと私が宥めたが、二人はまた泣きそうな顔を見せる。


「いやだ!」

「僕もいやだ!」


 案の定、私やプラムの言う事など聞かない。頬をぷっと膨らませてワガママを言い始める。

 

 ケイトはこの状況にただただ困惑いた。あまり子供に慣れていないのがあちありと伝わってくる。どうやってこの場所を納めようか。


「そうだ、ケイトやマークも今度の日曜日に教会できのこ料理を村のみんなの振る舞うイベントがあるんですが、一緒にきませんか?」


 この提案をするのが一番良いような気がした。マークやケイトにいい印象は全く無いが、こうして子供達に懐かれている。それに村八分のような事をするのは、さすがに性格が悪すぎる。やっぱりこの二人を新しい村の住人として歓迎するのが、人として真っ当な行為だと思う。


「きのこ祭り、ケイトもきて!」

「ケイトもきて!」


 子供達にも言われてケイトは、否定出来ない空気になってきた。


「そうですよ、お二人を歓迎するわ。是非来て下さいよ」


 プラムは張り付いた様な笑顔で言い、ケイトはさらに断りにくそうだった。


「ええ、ま、そんなに言うんだったら旦那と二人で言ってもいいけど」


 気が進まない様子はありありと伝わってきたが、とりあえずきのこ祭り参加するようだった。


「きのこ祭りでケイトに会える?」


 アビーがちょっとワクワクした目で大人達を見上げていた。


「ええ、会えるわよ」


 私はつとめて優しい表情を作って言った。ここで教師モードの厳しい顔を見せても仕方ないだろう。


「やった!」

「やったね、アビー!」


 二人ははしゃいで始めた。正直なところ、アビーとジーンのメンタル状態については不安があるが、こうして二人の笑顔を見ていたらちょっと安心はした。


「プラム、これで一応子供達は大丈夫かな?」


 しかしプラムは、何か考え込んでように無言だった。


「まあ、大丈夫よ、プラム」


 なぜか私がプラムを励ましていた。


「なんか、嫌な感じなのよね」

「え?」


 そのプラムに呟きに声は小さく、私の耳には届かなかった。


「まあ、良いでしょう」


 そうは言ってもプラムはケイトを睨みつけていた。

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