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10話 可哀想な子供達

 こうして一日中きのこ狩りに熱中し、 霧の森を出る頃にはちょっと火が翳り始めていた。レアなキノコは取れなかったが、こうしてきのこ祭り開催も決まったし、大量にきのこも収穫できたので悪くはないだろう。


 ネルは森の近くの屋敷に帰り、私と牧師さん、アビーとジーンも家の方に歩き始める。


「あ、明日のパンを買うのを忘れてしまった!帰りにちょっとミッキーのパン屋に寄りましょう」

「私も明日のパン買ってないし、一緒に行くわ」


 そのまま家に行かず、商店街の方へいきミッキーのパン屋に向かう。子供たちは一日中動いたのでちょっと疲れて無口だった。このまま二人とも今まで通りに過ごして欲しいと思いながら商店街に入る。


「あれ、あの変なパン屋は今日がオープンに日だったんですね」


 牧師さんが指さす方には、「嘘も100回言えば本当になる」と書かれた看板に変な名前にパン屋はオープンしていた。オープン初日にせいか花などが飾られていたが、人気がない。一方ミッキーにパン屋は「完売御礼ソールドアウト」と張り紙が出ている。ミッキーのパンはファンが多く、時々王都から買いに来るものもいるので夕方になるとこうして買えない事もあった。この様子では同業者が隣にできてもミッキーのパン屋安泰だろうが、私達が買うパンがない。


「どうしましょうか、牧師さん」

「そうですね。でもこの変な名前のパン屋も気になりますね。ちょっと覗いてみますか」


 確かに怪しいパン屋だが、オープン初日だし何を打っているのかは気になる。日本でみ変な名前の高級食パンの店はよあったが、一目を引きつかみは成功しているだろう。


 それに転移者でもあり、偽預言者かもしれない店主も気になる。


 私達は思い切って、怪しいパン屋に入店する。アビーとジーンも大人しくついてくる。子供二人も新しいパン屋に好奇心が刺激されているようだった。疲れているため、いつもよりはおとなしかったが。


 変なパン屋の店内の中は意外と普通だった。白を基調とし、棚には食パンがズラリと並ぶ。この世界では食パンは珍しいので、ちょっと懐かしい気分にさせられた。ミッキーのパン屋と違って小麦の匂いはせず、ちょっと無機質な印象を受けた。


「いらっしゃいませ」


 工房の方から店主が出て来た。


 独特な雰囲気の男である。髪は染めているのか真っ黒、肌もかなり焼いている。眉毛も濃く、どことなく怪しい雰囲気がある。パン屋というより占い師でもやっている方が向いていそうな雰囲気だ。四十代ぐらいの男だが、子供達二人ちょっと怖がっている。


「こんにちは、マーク。どのパンがおススメ?」


 牧師さんはあまり、怖がらずいつも通りに笑顔で聞く。


「この食パンですね。私がニホンという国にいた時に感動してつくりました。あ、あなた日本人?」


 マークは私に気づいいた。正直なところこの男とは話したくない。なんとなく、根拠はない。むしろ意外と接客はそつなくこなして居ると思ったが、何か嫌なものを感じる。この男は偽預言者のような事をしてるという先入観もあるかもしれないが。


「ふわふわでモチモチなパンですよ。ちぎるとまるで雲みたいです」


 マークは意外と必死にパンを売り込むが、ここの村人は硬いパンに慣れている。いくら柔らかいパンが美味しくても、このパンが受け入られるような工夫はもう少ししても良いんじゃないかと思う。どうも商売下手というか、不器用さは感じる。


 杏奈先生のカフェこの土地と日本のいいところり日本食カフェだったが、それでもメニューは色々あり村人には新鮮だっただろう。しかしこのパン屋はメニューはちょっとお高い食パンとラスクだけらしい。ラスクはもの珍しいようで売れた形跡があったが、食パンはどうだろう。すぐ飽きられる未来しか想像できない。


「柔らかいパンはちょっと苦手だけど、まあ、いいか。6枚切りっていうの買える?」

「オッケーです。そちらは?」


 マークにちょっと低い声で聞かれて、買わない選択肢は選べないようだ。結局私もやたら高い食パンを買う事になった。


「まあ、たまには良いですね。僕はこの村の牧師なんですが」


 牧師さんはニコニコと自己紹介していたが、マークはさっと表情を曇らせる。


「あなたには悪霊がついています」

「は?」


 珍しく牧師さんは、不快な表情をみ見せる。


「罪が見える。本当に聖霊がいない私が祓ってあげます」

「いえ、結構ですね。悪霊追い出しは自分でもできますし、入りませんよ」


 今まで聞いた事がないぐらい牧師さんの声は冷たい。アビーとジーンは退屈なのか、疲れたのか知らないが欠伸をしていた。牧師さんもちょっと嫌味っぽく欠伸をするフリをする。意外とこのマークに苛立っている事がつたわる。普段穏やかな人なのちょっとギャップ萌えしそうだ。今の牧師さんはいつもの草食動物から狼に変身しているように見えた。


 牧師さんの態度に困り果てたマークは今度は私に話しかける。


「君は罪を悔い改めてないね。悪霊がついてるよ。地獄に落ちるよ」


 この人は一体何を言ってるの?私も牧師さんと同様にイライラしてくる。


「悪霊を追い出してあげる」

「いえ、結構です。そんな目に見えないものは、いくらでも言いたい放題言えるじゃない」


 本当ならこういうシーンで牧師さんに守ってもらえるようなか弱い態度だったらモテるんだろう。でもきっぱりと言ってやる。パン屋なのになんでこんな占い師みたいな事してるの?


 それにミッキーはパン一筋で決してこんな事は言わない。オープン初日だが、閉店する未来が見える。日本でも高級食パンブームはさほど長く続かず、閉店している店も見かけたし、そうそう簡単に商売は上手く行かないだろう。


「あなた、何やってるの? もう良いじゃない」


 そこへ工房から若い女性が出てきた。25歳ぐらいの地味な感じの女性だったが、顔は整っている。美人だった。マークの奥さんのようだ。


「こんにちは。始ままして。私はマークの妻のケイトです」


 牧師さんはケイトを見てちょっとびっくりしていた。

 アビーとジーンも声を失ったように呆然としていた。


「ママ!」

「ママ、会いたかったよ!」


 しかもアビーとジーンはケイトに抱きついて泣き始めた。

 アビーとジーンの親は殺人事件の犯人で牢屋に中のはず。

 どういう事?


 ケイトもマークも明らかに混乱していた。


「どういう事?」


 私は牧師さんそっと尋ねた。


「これは驚いた。ケイトはアビー達の母とそっくりだよ」


 え?

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