お嬢様JKの私が4次元からの堕天使と同居する件 第三話
心を読まれる恐怖よりも、"超次元的な出来事が起きている"という疑惑をそのままにしておくまいか、という好奇心が勝ってしまった。
「君も物好きだね。それとも、この次元の人間ってのは、想像以上に容姿の良い人間が好きなのかな?」
「こんな状況に遭ったら誰でも気になるでしょう。でも…」
「はいストップ。いちいち口に出さなくても、君の考えてる事なんて全部分かるさ。まあ君たち人間の好きな"会話"とやらを擬似再現して、君が安心するなら、お好きにどうぞ?」
やはり心が読めるらしい。
どうやら私は超常現象に出会ってしまったようだ。
あまりフィクション作品を観たり読んだりしないので、このようなファンタジーに遭遇した時の正解が分からない。
「君のような勘のいい子を引き当てるなんて幸先良いなあ。あと君の文明で定義すると、僕の存在は"ファンタジー"よりかはSFに近い現象だよ」
そういえば次元がどうの、と言っていたな。それならSFかもしれない。
「まあ立ち話なんて何だし、ここのスタバ行かない?」
彼は無一文だと言う。どうやって高校まで来たのか。
とりあえずショートのコーヒーを奢ってやった。面白い話へのギャラくらいには相当するだろう。
「僕はね、ここより上位の次元から来た存在なんだ。言うならば"4次元"かな。とにかく、こことは存在の定義から違う場所だよ」
「そうなんですね。ところで、あなたのお名前は?」
「名前…ここの次元ではそうやって存在を分けるんだったね。僕の名前は…ミチル。どうやら、この人間の前の名前みたいだね」
どうやら、この"存在"は目の前の人間を乗っ取っているらしい。乗っ取りという言葉が的確かはまだわかりかねるが。
「話を続けるね。僕の居た次元は個々の定義が曖昧なんだ。あらゆる存在がひしめいて、それぞれがくっついたり、離れたり、また新しい存在が生まれたり。存在はこっちの次元の言葉では上手く表現できないし、この次元の"数字"とやらでも定義できない量があるんだ」
「数字で表現できない量?」
人類が今まで積み重ねてきた自然科学を真っ向から否定するような発言に、思わず笑いそうになった。
「君たち人類の文明を否定する気は無いよ。むしろこの短期間でここまでの発展を見せるなんて、称賛に値するね。ともかく、自然科学はこの次元の根本を突いているよ」
それは良かった。一応、文科省の高校カリキュラムを一通り履修しており、高卒程度の理系知識を備えている身からしたら安心した。
それだけ、ミチルの発言には人類の文明を根底から覆される可能性すら感じられた。
ところで、ミチルは何故この次元に来たのだろう?