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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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逃げれない夏休みの過ごし方 4

 展開早いな……と言うか早すぎだろ?

 どれだけの段階すっ飛ばしていきなり結末に辿り着いた?

 俺も宮下も隣でガツガツと朝から朝食を胃袋に送り込むその元気さに陸斗が淹れてくれたお茶をすするだけだが、机を挟んだ向かい側では微妙な距離を置いて座る陽菜と夏樹は俯いたままだ。

 何だ?結婚報告に照れて顔を上げられないと言う奴か?

 こっちに来てから≠彼女いない歴の俺は本来心の中でくたばれと言う所なのだが、二人とも顔を青くしている様子は喜ばれる話ではない。

 そもそも結婚できるとは言え従兄妹だ。そして陽菜に至っては結婚できる十六歳になったばかりだ。あと数年待てば十八まで結婚できなかったのになと考えながらもいつ親に許可を取ったんだと呆れてしまより嬉しそうに邪魔者がいなくなったと言う様に許可した顔しか浮かばない。

「まぁ、結婚おめでとう」

 報告を貰ったら一応祝福の言葉。まったくめでたくないと言う顔でだが

「どうして結婚に至ったか話を聞かせてくれ。こう見えても俺もかなり動揺してるんだ」

 どこがだと言わんばかりの視線を集めるが、表情と内心は一致しない物だと覚えておくと良い。

 陽菜に聞くのは可哀想なのでこいつも二十歳になったばかりだなと思い出した夏樹は名前が表わすように初夏の生まれ。立派な成人男性なら責任もって吐けと睨めば

「まぁ、こいつらの事一応俺も覚えてたんだよ。どうせまた綾人に金をむしり取りにきたんだろうなって」

 圭斗はそう言ってカタンとお茶碗を置き、伸ばした箸で野沢菜を摘まんでいた。

 もしゃもしゃと咀嚼音のあとお茶を口に含み

「この夏樹だったな。お前もう大人なんだから綾人にたからずお前が都合すればいいだけだろって。陽菜だったっけ?どっちにしても同じ親戚なんだから相談しやすい方に借りた方が簡単だろって」

 最もだ。だけど陽菜は首を横に振り沈黙。

 一体何なんだ。お前らがいるだけでこの正常な山奥の空気が汚れるから早く言いたいこと言って去って行けと呪っていればよほど話を進めにくいのか二人に代わり圭斗が説明役を負ってくれた。

「そこの女の子の父親が春に再婚したんだと」

「うおー、初耳」

 借金の完済のめどでもついたのか?とこんな話しすら仏前に伝えに来ない叔父の話しはもう他人の噂話程度にしか興味ない。

「まぁ、よくある話で継母と仲が良くないと」

「あるあるだねぇ」

 寧ろお約束。シンデレラになれたなーと陽菜の子供の頃の夢はお姫様になる事だったとぼんやり思い出した。

「でだ。継母には連れ子が居て、そいつが高3のヤリチンだった」

 宮下が反射的に陸斗の耳を塞いでいた。

 俺もそこで言わずとながら家を飛び出してきた陽菜の状態を理解して、夏樹がここに来た理由もぼんやりと理解できた。

「因みにアウト。そんなヤリチンを育てた母親って言うのは、まあ正しく遺伝子の元なんだ」

「わーお、朝から聞く話じゃないな」

 思い出してか自分の体を抱きかかえて涙を落す陽菜を可哀想と思うもそれまでだ。

「で、夏樹はそんな陽菜を押し付けに来たのか?ここに連れていくまで警察とかシェルターとか児童相談所とか選択が幾らでもあっただろう?」

「誰かに知られたくないの!」

「今更?」

 反射的に聞いてしまった。

 俺に夏樹、先生に宮下と圭斗、内田家と陸斗はグレーとして何の判断かなんてわからない。だけど夏樹とのこの微妙な距離感は男性恐怖症と言う物かと思えば納得した。

「そんでこのお嬢ちゃん家を出て一人暮らししたい、高校はやめたくない、でもお金がない。働くまでのお金を、それまでの資金を貸してほしい。返済は時間がかかるかもしれないが必ずだとさ」

「返済のめどがないなら無理だね。他を当ってくれ」

 無情にも俺が行った所で

「先生も綾人がそう言うと思って提案したんだ」

 先生が?と言う時点で奥さんに捨てられた離婚経験者の結婚に夢も希望も見いだせない意見は嫌な予想しかない。そう、結果が出ているから余計にだ。

「親の承諾があれば十六から結婚できる。職もあり、社宅だけど家もある社会人を頼ったんだ。知らない間柄でもないし、当人は働く気もある。住まわせて食べさせるぐらいは出来るだろうとネットで婚姻届ダウンロードして書かしたぞ」

「そういや離婚届もダウンロードしたって言ってたね」

 宮下がこんな時ばかり記憶力を披露してくれた。

 圭斗も疲れた様に陸斗にお茶のおかわりを貰って啜る。

「あとは親の承諾だが、それを貰うのに俺が北部のこいつの家まで行ってサインとハンコ貰って来た。保証人には内田さん夫妻にお願いしたよ」

 もちろん鉄治さん夫婦だ。立派に巻き込まれたんだなと今度何かお土産を持って行こうと決める。

「あっけなかったぞ。久しぶりにおじさんにあったが昔みたいな覇気はないし、義理母もいかにも水商売してますってふうでさ。で、件の男は顔が命って感じでニヤニヤしてるし、浩志もすっかり毒されてたな」

「六年生だっけ。昔はちっさかったのにな」

 唯一遠くでけたたましく笑う姉の横で暴行を受ける俺を見て居ただけの顔は思い出せない。

「まぁ、そんな浩志に従兄弟として言わせてもらったよ。次はお前が犠牲になる番だって」

「自業自得と言う奴だな」

「その瞬間顔を青くしてたけど、あいつが一人でここに来れるとは思わないし連絡の手段もない。

 俺が言う事じゃないが、あいつの事に関しては気にするな」

「お前と陽菜の事に関しても同じだけどね」

 お茶ばかりで固形物が食べたくなり冷蔵庫から葡萄を持って来てテーブルの上に置く。あとは勝手に食べてくれと深く濃い大粒の葡萄色の皮をむいて口へと運ぶ。残念な事にこんな話の途中なので味がよくわからない。

「向こうに行ってこっちに帰って来た所でちょうど開いた役場で提出して来た所。

 一晩中車で走ったから横にならせてもらいたいんだけど?」

「奥の布団使ってくれ」

 何度もあくびを繰り返しながら仏間奥の薄暗い部屋へと向かってすぐに布団が敷く音と倒れるような音、暫くもしないうちに聞こえてきたイビキにお疲れさんと心で伝えて

「で、あえて夫婦になった物の苗字はかわらずか。

 これからどうするの?」

 夏樹について行くとなれば今こいつは県外に居る以上引っ越さなくてはならない。もっとも持って行く物なんてその手荷物が全部だろうし、高校だって辞めなくてはならない。どうすると思うも

「あの先生が言うには高校はやめても高校の卒業の資格は取れって言ってくれたから、働きながら通信制で高校の資格は取ると言う事にした」

「で?先生ならその続きがあるだろう」

 言えば陽菜は俯いて

「高校で結婚なんて資格があっても信用されないから専門学校に行けって。一年制の学校もあるからせめて専門学校卒業の資格を取れ、手に職を付けろって言ってくれたの」

「まぁ、妥当だな。

 楽しい高校生活は満喫できないし、大学生活もできない。

 目の前に散々バカにした相手に報告するのは大変だなぁ」

 それを知ってる夏樹は俺の言葉を止める権利はなく一緒に俯いてしまう。

「前に俺に向かって行った言葉が自分に返って来るってどうだ?俺は腹の中でザマアって大笑いだ」

 言葉とは全く違う睨みつける顔に陽菜は俯く。

「夏樹も彼女も出来なくて青春終わったなって笑ってくれたしな」

 最もこの頃には結婚なんて絶対しねぇ!って決意した後なので痛くもかゆくもない話だったが、この時代の資産家でも由緒ある家柄でもない従兄弟同士の結婚。しかも嫁は未成年の高校生。事情を知らなければ誰もが一瞬耳を疑う関係にもし陽菜が独り立ち出来て円満離婚したとしよう。お互い新たな恋に巡り合い改めて結婚と言う話が出た時、必ずこの婚姻が先に進むための足枷となるだろう。

 笑える話のはずなのに笑えねえってのは何だか……


「ムカつくな」


 この二人に関しては自業自得とは言えまだ暢気に生活している陽菜の父親の存在が関りたくなくとも怒りを覚えるのだった。




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