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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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番外編:山の秘密、俺の秘密 3

 翌年はバアちゃんが亡くなってそれを理由に断り、そのまま六月の母親の面談と言う最悪な季節から体調不良を引きずる事になって俺の不安定な精神に断り続けていた。

 だけど来年からはきっと暫くの間ここにはいない。

 オフクロももういない。

 吉野のお勤めだから他の奴らに任せるわけにはいかない。

「久しぶりに連絡入れるか」

 懐かしい思い出を振り返させる白い封筒を見てスマホを操作して連絡をとって一週間後


「久しぶり。俺達の事忘れたのかと思った」

「あー、あれからいろいろあったからね」

「聞いたよ。弥生さんだっけ。あの年の冬に亡くなったんだってな」

 肩をすくめて

「去年親父も逝ったし、落ち着いたと言えば落ち着いたからな。不謹慎な言い方だけど」

 先ほどから朝食を前に皆さん仏壇に手を合わせて挨拶をしてくれていた。初めましての人もいるのだろうに律儀な人達だとありがたく思うような年齢になった自分に一番びっくりだ。

 七月とは言え薄暗い家の中を温めてバアちゃんが用意した食事をなぞるように用意した家で採れたものだけの一汁一菜の朝食、そして塩むすびだけというシンプルな昼食。土間に置いたロケットストーブにかけた薬缶からセルフサービスで白湯を飲んでもらうここで大量の茶わんが大活躍だ。

 数年ぶりと言う事とまた数年お招きできないという事で前回以上に人も集まったし

「暁の衣装もレベルアップしたな」

「前の時は見習いだったからな。序列は低いけどそれでも一人前だ」

 そして灯を求めて庭をうろうろする烏骨鶏に追われている見習いの子供を大人達が笑うのを見守り

「そういや実はこの秋から留学する事になってしばらく家を留守にする事になったんだ」

 言えば暁の側にいた大人の人がやってきた。

 見ていればわかるようにこの集団のリーダー的な人だと思う。そう思うのはその後ろの方で厳しい目でこちらの話を伺っている年寄りがいるからそう言う事なのだろうと俺の知らない世界の序列とやらを怖い怖いと首を竦める。

「留学とはまた凄いな」

「イギリスに。何年かは向こうに行ってるだろうから暫くこの季節には居ないと思う」

「優秀だねえ」

 驚く大人の人に

「悪かったなオヤジ、不出来な息子で」

「なに、それもまた遺伝。落ち込む事ないぞ」

 はははと笑う親子に周囲も笑う。

「そう言えば仏壇に新しい遺影があったが、あれは幸一君だったか?」

「ええ、オヤジです。癌でコロッと」

「幸一君の噂は聞いていたが、そうか。最後は病だったか」

「オフクロもそのすぐ後追いかける様に逝って」

 遺影が無くて疑問を覚えたような暁に

「離縁したんだ。まあ、そう言う事」

 もともと家族関係何てあってないような物だったから何てないように言う。幾ら求めた家族だったとはいえ、亡くなってしまえば少しずつ両親への希求が薄くなった事を時間とともに受け入れていた。

「大変だったな」

「まあな。未だにその連絡をしようと叔父達を探しても所在が分からないからな」

 なんてどうでもよさ気に言えば暁の親父さんが少し難しい顔をする。

 何か言いたそうだけど顔を顰めて戸惑っていればその後ろでこちらを眺めていた老人の集団から一人がやって来た。

「あ、じいちゃん」

「吉野のもいろいろ大変でしたな」

 ご冥福お祈りしますと頭を下げるから俺もご丁寧にありがとうございますと頭を下げる。

「所で吉野の、お前さんはこの家の事をどれだけ知ってる?」

「あー、ほとんど知らないと言うのが正解でしょう。高校の時お会いするまで貴方達の事を知らなかったぐらいだから。それにジイちゃんやバアちゃんが教えようとしなかったから知る必要はないと思っているので」

 本当に必要な事だけ教えてもらった。

 この山での生活の事。この山でのルールと仕来りは口で言うほど実は数多くはない。

「そうか。そうか。自分の事も知らないのか」

「それを見つけるのが人生だと教えられているので」

 何か小馬鹿にされたけどとりあえず知らない物はどうしようもないと開き直ってみれば妙にまじめな顔で見返されてしまった。

「吉野の出自は不明だ。この土地が開かれた時にはもう住み着いていたと聞く」

 へー、なんて本当に江戸時代のそれより前からいたと言う事かと納得してしまう。

「天狗だとも言われていた」

「残念な事に猿山の大将ですよ」

 言えばそれはそれはと笑いを取れて何よりだ。

「だが忘れちゃいかん。そうやって長く繋いだ血には地に基づく力が宿る」

「あー、言霊って奴ですね」

 なんかそんな事をホラー小説で読んだ覚えがあるなと、山伏相手に使っていい言葉かと思うも爺さんは頷いた。

「吉野の一族は隔世でその血が現れる。爺さん、そのまた爺さんとやたらと人が集まった世代があるはずだ」

「おかげで今もジイちゃん達の知り合いに支えて何とかやってます」

 それは何よりと力強く頷き

「だけど不思議な事もいろいろあったはずだ。

 お前さんが拒絶した相手は何所までも落ちて行く。そして受け入れ縁を持った人は何所までも幸運がやってくる」

 どきりとする言葉だった。





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