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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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ジャックするって言うけど俺達ただ巻き込まれた系だよねと大声で叫びたい 7

「おはよー。珍しく遅いな」

「誰のせいだと思ってる・・・・・・」

 べろんべろんになるくらい酔っ払った綾人だけど昨日の薬が効いてか至福の顔で朝食を食べていた。

 真っ白のご飯に油揚げとわかめの味噌汁、温野菜の上にはポーチドエッグがのっかっていて、カットフルーツが添えられていた。

 綾人の家で飯田さんがいる時によく見かける定番の朝食。

「朝からよく食べるな・・・・・・」

 どう見ても普段の二倍は用意されていた。

「えー?飯田様の朝ごはんですよ?これくらい余裕でしょ」

 きりっとした顔で言うも口の中にもりもりに詰めて頬が膨らむ顔にすべてを台無しにしていた。

「圭斗君もおはようございます。ごはんの準備しますので座って待っていて下さい」

「ありがとうございます。所で宮下は・・・・・・」

 朝起きた時にはもういなくて布団もたたんであったから一緒にご飯を食べていると思ったのだが

「圭斗君が起きてから一緒に食べると言って今はお庭に水撒きに行ってます」 

「あ、俺呼んできます」

「よろしくー」

 なんて言いながら味噌汁を飲む綾人にお前は待っている気はないのかよと思うも昨日の宮下じゃないがお酒で潰された時とご飯を食べている時は比較的おとなしいのでそういう意味なら解らないでもないなと飯田さんの作戦を否定できないが、この都会で広大な庭を見ながらあと少しでなくなる庭を寂しいと思いながら宮下を探す。

 まあ綾人の家のように起伏に富んだ庭じゃないからすぐに見つかったが

「おーい、飯田さんがご飯にしようって」

「おはよー。起きれた?」

 宮下は地面に向かって水を撒きながら剪定をしていた。

「起きれたって?」

 何がだと言えば

「綾人の事が心配であまり寝れてなかったでしょ?」

 笑いながら言う宮下に何も言えずに顔を歪めてしまえば

「あれで寝れるのか?」

「慣れれば寝れるよ。ほんと弱いくせにお酒の場の空気が好きで飲みまくるんだから。

 まあ、だから昨日のお酒の場が悪くなかった証拠だろうけどね」

 穏やかな顔でジャバジャバとホースからあふれ出る水を植物に直接かからないように根元だけに水を撒く。今はまだ涼しい時間だけど葉っぱの根元にたまった水たまりが熱をもって痛むのを避けるように注意しての水やりは実桜さんから教えてもらったもの。

「手伝おうか?」

「んー、飯田さんがご飯って言ってるからごはんにしよう。水もほとんど巻き終わったから大丈夫だし、綾人が言うには夕方には雨が降るらしいからこれだけ湿らせておけば今日は十分だしね」

 止まる事のない水があふれ出すホースを芝生に振りかけるように振り回しながら水場に戻り綺麗にホースを片付ける。

 小学校に入る前に出会い、小さな砂場で一緒に遊ぶ片手にも満たない唯一の友達を小学校に入ってから距離を取り出し、中学に入ってから相手にもしなくなり、高校に入った時は知らない存在にした幼馴染は綾人を挟んでまた近い距離に戻り、俺よりも綾人に信頼を置く幼馴染に少しイラっとする。

 そんな俺に気付く事もなく綺麗に手を洗って

「じゃあ、ごはん食べようか。遅くなると綾人怒るしね」

 理不尽だよねーと笑う顔は幼稚園の頃から何も変わらない子供のような純粋な物。

「んなことで綾人が怒るか?」

 なんて試すように聞けば

「俺様何様綾人様が他人のスケジュールなんて気にするわけないだろ。自分がしたい事をしたいようにできないと機嫌悪くなるんだから面倒臭いよ」

 なんてなんて事のないような不満を俺に吐き

「あ、今の内緒だよ?綾人にばれたらほんと面倒だからウコのお世話の刑一週間になるからね」

 そんなことになったら香奈ちゃんが吠えるからと笑う宮下になんだか居た堪れないような気がするのは戸籍の上とは言え義父となった立場だろうか。

 紙縁とは言え家族になったはずなのに、その長にいるのが綾人なのが理不尽さを覚えるものの

「って言うかさ、綾人と先生がいたからこうやってまた圭斗と話ができること凄く感謝してるんだ。

 俺、何やっても物覚え悪くって自信が無くってさ。

 だから圭斗にも鬱陶しがられていたのは仕方がないとわかっていたんだ。

 だけどあの時は圭斗しか俺と話をしてくれる奴いなくって寂しくって・・・・・・」

 そんな風に思われていたなんて、今さら傷つく事なんて図々しいなんて綾人なら言う事だろうが、それでも宮下は笑って

「だけど今はこうやってさ、一つ一つがなんかまた昔みたいな感じでさ」

 自分で言っておきながら真っ赤な顔をして

「泥だらけになったから着替えてから行くって飯田さんに言っておいて!

 遅れると怒るから俺が行くまでに先に行って伝えておいてよ!」

 そういって家の中に飛び込んでいった宮下を眺めなながらも言われたことを遂行する。

 着替えてから戻ると伝えれば食事を済ました綾人が朝からよく冷えた山の上の気候によく似た室温の中でお茶を啜り

「ご飯食べたら帰るぞ」

 昨日の晩、山に帰りたいとめそめそしながら訴えた子供の姿をさらす酔っ払いの姿こそ本来の綾人の姿だろう。

 だけどさすがにそれは本人には言えず

「土産の買い忘れはないか?」

「新鮮な魚介類を希望してるって言うのだけは聞いてますので!」

 どこまでも自分の欲しいものしか言わない根性も立派だが

「雷おこしとか適当に買っておいたからそれでいいな」

 新鮮な魚介類は却下だと言えば途端に目を見開きながら悲しげな顔をする演劇は

「それはあんまりではないでしょうか圭斗様ー!」

「美味いもん食い過ぎだ!体の為にも粗食に耐えろ!」

「頑張る張り合いが!!!」

「飯田さんのポテトグラタン以上に何がある?!」

 言えば言葉を詰まらす綾人に俺はガッツポーズ。

 飯田さんの拍手にうなだれる綾人。

 勝敗が喫した所に宮下が

「なにこのカオス?」

 開けた扉を閉ざしながらの隙間からの状況説明を求められれば

「飯は温かいうちに食べようって事だ」

 適当に誤魔化しておけば俺にも飯田さんから拍手を貰うあたり何か不名誉な称号を貰ったような気がしたのを無視しておいた。





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