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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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ジャックするって言うけど俺達ただ巻き込まれた系だよねと大声で叫びたい 4

「綾人、宮下、そろそろ収録終わったみたいだから挨拶に行こうか」

 テレビ局から案内された控室でこの後用事がある方達と軽く差し入れの軽食を食べながら挨拶をしていれば蓮司が本日の司会の人やゲストの方達に挨拶に行こうと言いだした。

「シークレットなのに行くべき?」

「人としての最低限のマナーだ」

 なるほど。

 二度と会う予定がなくても人としてちゃんとしろと言うのなら納得するしかない。

 俺は宮下と一緒に行くかと言うようにアイコンタクトをすれば

「だったら僕もついていくよ」

 なぜか小型カメラを持った多紀さんもついてきてくれることになった。

 え、ついてくるの?

 なんて言う前に

「多紀さんもいくのー?だったら私もついていっちゃおう」

「だったら俺もついていっていいですか?」

「俺もご一緒します!」

 俺も、俺も、私も行きますと言うコール。

 なんて団体だと思う合間に波留さんに背中を押されて収録が終わったばかりの雑然とした空気の中を俺と宮下を先頭に歩く。

 忙しそうにしているスタッフさん達もぎょっとして道を譲ってくれる中、司会の方の名前の張り紙が張られた部屋に案内してもらい、俺の心が落ち着く前に蓮司がノックをしてしまう。

「はい」

 テレビとは違い、今はどこか疲れたような声に

「失礼します。今日はお疲れさまでした」

 なんて蓮司がドアを開けて入ってしまう。もちろん俺と宮下の背中を押して。

 振り向いた人はぎょっとして固まったのも無理はない。

「ちょ、波留さん。驚かさないでよ!さすがに今日のはシャレにならないよ」

「驚かせてごめんねー。だけど、これみんな仕込みだから安心してね」

 ふふふと笑う波留さんの笑顔が最強すぎて思わず拍手をしてしまう。

「だけど俺知らなかったけどフォロワー四百万の有名ユーチューバーだって?どうしたらそんなに有名になれるの」

 多紀さんのカメラを気にしてかカメラ目線を忘れないのは見事だなと心の中で拍手をしながら

「英語翻訳をつけてからですね。同時にフランス語もつけて三か国語の展開にしてから視聴者数稼げました」

 ここはきりっと言い切ってみせる。実際それも効果の一つだと思っているし、それだけで実際稼げるわけではないのはゲストの豪華さが物語っている。

 もちろん本気で聞いているわけではないのでふーん、そうなのと言うように俺との会話を終えるあたり向こうも二度と会うとは思ってないのだろう。気が合うなとにこにことしている合間に

「じゃあ、次行くからまた今度ねー?」

「今度は普通に会いに来てくださいよー」

 なんて気心の知れた友人と言うように分かれて今度は今回俺達がテレビに出る原因となったこのところへと向かい……


「アヤさーん!ショウさーん!写真良いですか?インスタ上げていいですか?」

「写真はいいですけどインスタはテレビ問題があるからやめておいた方がよくね?」

「あ、そうか。怒られる所だった」

 言いつつもマネージャーさんにスマホを渡して俺と宮下の間に収まって写真を一枚パチリ。嬉しそうに写真のチェックをしてすぐに片づける。

 意外とあっさりしているのねと思うも彼女の本音は俺ではなく……

「初めまして!園原唯です。アヤさんとショウさんに会えただけでも光栄なのに大守監督にも会えて光栄です!」

 あまりのガッツキぶりに波留さんや蓮司も失笑。俺達はいいのかと言う気配に冷や汗を流したくもなるが皆さんこの展開は予想で来ていたのでただただ呆れていた。十代とは言えそれに気づかないこの子大丈夫かなと思った所で

「はい、よろしく。じゃあ、次があるからまたね」

 びっくりなくらいにあのウザい多紀さんのあっさりとした返答。

 俺達にはねっとりべっとりとしたストーカーだったくせに、俺と宮下が波留さんに背中を押されて部屋を出れば待ってーと言うように慌ててついてくる足音に思わず失笑。

「多紀さん良かったの?」

「ん?なにが?」

 なんてまるで何もなかったかのような返事に

「多紀さんねえ、こう見えても我が儘だから。

 興味ある子とない子の温度差がほんと酷くてね」

 そういえば司会の人とも全く挨拶しかしなかったし

「特にカメラ持ってる時はほんと話しかけるのが難しい気配をするんだよ」

 なんて蓮司も言うが

「そうか?ただカメラもってるだけで変わらなくね?」

 なんて言えば

「綾人から言葉を引き出したいから居心地がいいようにふるまってるだけだよ」

 なんて事もできるのか。さすがと思うも

「だったら普段からそうしてくれていいのに」

 褒めはせず文句を言ってしまうのは仕方がないと言うように言えば

「えー、綾人君は僕の事どう思ってるのー?」

 なんて微妙にウザい質問に

「普通にウザい人でしょ。まあ、そのウザさも多紀さんの持ち味で慣れてきたけど」

 こればかりは経験がものを言うと言うように言えば不意に構えていたカメラをずらして俺に向ける顔がとたんににやけだした。

「うわっ、きもっ」

 言えば少し離れた所で「多紀さんにそう言える人がいるなんてさすがだね」なんて声が聞こえた。なんだか俺がひどい奴じゃないかと思うも多紀さんはにやにやしだして

「これからもずっと僕の事を認識しててね」

「波留さん助けて」

「いやあ、それはちょーっと無理かな?

 だってあんな口説き文句なかなか言えないよ?」

 俺なんか口説いたかと宮下に聞くも、聞いた相手が悪かった。

「え?綾人こんな所で口説いてたの?」

「だよな。口説いてなんてないよな」

 全くわかってないと言うボケに乗っかるようににしてあいさつ回りはいいだろうと逃げるように圭斗や飯田さん達が待つ控室へと向かうのだった。















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