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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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ジャックするって言うけど俺達ただ巻き込まれた系だよねと大声で叫びたい 2

 俺達の簡単な挨拶と紹介の後は動画を編集したダイジェストしたものが流れた。

 畑仕事から、離れの改装。宮下の仕事の様子やフランスの城のリフォームの様子。司会の人はほんとに知らなかったようで映像が流れている間にいろいろと質問を受ける。あばらハウスから竈が待ち構える家の様子や城のリフォームが終了と言うように開催したマイヤーが開催してくれた演奏会、宮下と長沢さんの繊細な彫刻の練習風景、そして俺の動画編集と翻訳の様子。

 そして忘れてはいけない。

 飯田さんのメシテロ映像の数々……

「あのコックさんってガチの料理人なんだね。凄く手付きが綺麗でいつまでも見てれますね」

 司会の人は料理をやるのか手放しで絶賛してくれる様子に満を持して

「今日は実際に地域の猟友会の方が捕獲して街でも許可を貰って販売している猪と鹿の肉をご用意しました。ジビエが苦手な方もいると思いますので無理はせずよろしければお試しください」

 それが合図になってスタッフの方がテーブルや鍋を運んでいる中にシェフ姿の飯田さんも現れて

「あ、さっきのVで出てきた料理人の人」

 ぺこりと頭を下げる飯田さん。

「動画内ではコックさんと呼ばれてます飯田薫さん本職はフレンチのシェフです」

 宮下がさりげなく紹介していた。

 本名大丈夫かと思ったけど飯田さんはかけらも動揺することなくあの営業的な笑みで軽く会釈する程度で並べられた鍋や絶対美味しい鹿肉のローストを塊のまま見せつけてくれた。

 さりげなく店の名前の書かれたエプロンは青山さんの店の制服のそれ。

 どこまで俺を安心させるために身を切るのか今後の展開が決して良い事だけではないだろう不安も無視するかのように

「今回は動画でもよく召し上がっている猪を使った猪汁と鹿の肉を使ったローストをご用意しました。シーズン中のものではないので真冬の脂のたっぷりとのったものより味は落ちますがジビエとしては一番シンプルに味わい深く召し上がることが出来ます」

 肉切りナイフでレアの限界を極めた状態の塊をまるでハムのように薄く切り分け

「こちらはローストしている時に出た肉汁と玉ねぎ赤ワインで作ったグレイビーソースをご用意してみました。苦手な方はあっさりとした山葵醤油もご用意してます。山葵は動画でもおなじみのアヤさんの家のわきにある沢で育てた山葵棚のものになります」

「どっちも美味しそうですね!」

 期待に胸が膨らむように

「たくさんご用意してあるので両方お楽しみください」

 俺達の事を知らない人でも料理と言うものは人の好奇心を引き付ける。

 興味のない人でも一気に期待に胸が膨らむように瞳が輝いていく。

 出演者に、そして観覧席の方達にも料理が配られていく様子を見守ればまたしても知った顔。

 さりげなく配膳スタッフの中に瀬野さんの孫や宮下役の伊尾さんまで忙しく猪汁を配っていた……と思ったら青山さんの所の料理人スタッフの制服を着ている波留さんがいた。

 いや、さっき割烹着着てたのは何なのと思ったら目が合って

「飯田君がこれに着替えてくださいってね?」

 うふっと笑った所で司会の人が気が付いて

「鷲宮さんではないでしょうか?」

 そんな疑問と驚きと戸惑いの声に

「あら~、やだ~、こんな所でお久しぶりです!」

「お久しぶりって、何やってるんですか?!」

「決まってるでしょう?アヤ様とショウ様がいるんだから私がいて当然でしょ?」

 うふっと謎理論をかましながら紙のカップに入れた猪汁を注ぎながら

「慧君、茉希ちゃんこっちも持っていってー。

 蓮司君も多紀さんばかり構ってないでこっちも手伝ってー」

 その言葉に観客席が一気にわく。

 それはもちろん出演者側も、本日メインの園原唯もだ。

 混乱にも近い中で多紀さんが側に控えていた本来のカメラマンにさっきまで撮影していたカメラを渡し、移動しながら撮影するカメラを片手に乗り込んできて

「うそでしょ?!こんなの聞いてないですよ!」

「ほかにもまだまだいるわよ~。全員見つけられるかしら?」

 波留さんのフラグに司会の人もまさかの大物の出現にびっくりする横で多紀さんは全く気にせず飯田さんから料理を貰って

「くうっ!しっとりしたお肉にパンチの聞いた山葵!相変わらずこの山葵効くね!」

「ありがとうございます」

「ちょっとそこのカメラマンもうちょっと緊張して!」

「まだまだお替わりあるわよー!」

「いただきます!」

 司会者の鮮やかな突込みをスルーし、園原唯も追いやって波留さんが声を張る。

 だけど皆さん飯田さんの料理のおいしさに誰も気にしちゃいないそんな穏やかな様子が対照的で完全にこの場を制圧していた事に気が付けば不意に宮下と目が合ってほっとしてしまう。

 飯田さんのお肉を切り分けるパフォーマンスと仕込んだネタ晴らしと言うサプライズゲストの登場に俺達への注目度は減るがそんなこと問題ない。

 むしろ大歓迎。

 それでいいのだろうかと悩むも皆さん飯田さんの料理を幸せそうに食べていただいているので俺もなんだか幸せな気分になる。

 これだけ見知った人たちに囲まれてももう怖い事はない。

 今日は終始宮下に手を引っ張ってもらってリードされてきたけどもう大丈夫と言うようにカメラで映らない配膳の机で隠れた所で宮下の手とこつんと拳をぶつけてこの番組史上初の乗っ取り企画の成功を一足先に喜ぶのだった。





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