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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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930/957

勝ち負けの線引きはどこにある?! 9

 わずかと言うくらいに感じる短い時間を車に乗って移動ののちに受付をこそっと済ませてテレビ局侵入。

 そわそわきょろきょろする宮下可愛いなあと俺と蓮司は帽子マスクと言うありきたりな変装をして控室に潜り込んだ。

 一応サプライズと言う企画なので俺達の存在は隠されている。

 もちろん右も左もわからない俺達の為に蓮司が付いてきたのはわかるが……

「波留さん。今日もお綺麗ですね」

「あらアヤさん、今日もお上手だこと」

 なんて両手を広げて強制ハグ。

 ハグ?いや捕獲だろこれ……

 捕獲されたと思えば一瞬にして心がごそっと抜け落ちてしまった俺を見て

「波留ちゃんここにきて綾人君に脱走されると困るから離れて!」

「波留さん、綾人が本気になったらここのテレビ局の電源落とすぐらいやるから離れてください!」

「えー?」

「……」

 必死の多紀さんとガチの宮下に気づかず波留さんは二人とも何言っちゃってんのよーなんて笑ってるけど

「そうか、テレビ局だから電源落とせばいいんだ……」

 俺はおもむろにノートPCを取り出していて

「綾人、待てだ」

 一瞬にして圭斗にノートPCをとりあげられてしまった。

「あ……」

 俺の最大の武器を取り上げられ、思わずスマホに手を伸ばすものの

「こちらもお預かりします」

「……」

 飯田さんにまでスマホまで取り上げられてしまった。

「人には言えない自作のアプリが入ってるのに……」

「スマホをPC並みのスペックに作り変えていたのは知っていましたが、たくさんの方に迷惑をかける行為は禁止です」

 ジャケットの内ポケットにまで入れられてしまう俺のスマホ。

 まあ、もう一つカバンに入れてあるけど……

「何をしてらっしゃる圭斗さん?」

「ん?お前のカバンに入ってるスマホの回収」

 鬼がいました。

 悪魔がいました。

「ちょっと圭斗さん人のカバンの中を漁るのはアウトですよ?!」

「だったらこれで何をするつもりか言ってみろ」

「えー?ちょっとそれは……以下略で」

 ここでようやく波留さん俺がヤバい事に気が付いて距離を取られてしまう。

「俺の友達は親切で優しい奴しかいないって言うのが自慢なんだが?」

 一見友達が多そうで実は少ない圭斗さんからのその発言にさすがに堪えて

「諦めます」

「当然だ」

 なぜか隣に座る圭斗と俺を挟んだ反対側に座る宮下。

 なんて言うかこれはこそばゆいと言うか 

「連行される犯人みたいだな」

 蓮司が的確な言葉に変換してくれた。

「時間までおとなしくしてます」

「やっと諦めたか」

 ほっとしたかのような圭斗の声にみんなもほっとしてくれていた。

「って言うか、お前ら俺を何だと思ってる」

 半眼の仏頂面で言えば

「自分の為なら何でもできる?」

「目的の為に手段は選ばない?」

「そうですね、やりたい事はやり遂げる的な?」

 圭斗も宮下も酷いが飯田さんも存外酷い。

 泣きたくなったけどそんな俺を見る蓮司と多紀さんと波留さんも頷いていて俺に味方はどこにもなく部屋の隅に積まれた座布団を独り占めするかのようにうずくまる。

「あ、綾人。波留さんの座布団はちょうだい!」

 聞こえないふりしておいていた蓮司のジャケットを広げてその上にごろごろとする。

「おまっ、綾人!皺になるだろ!」

 聞こえなーいと言うように長年しみついた臭いをごまかすように複雑な香りのする……柔軟剤の香りに涎を垂らす価値もないと言うようにジャケットを返してこれだけ人気で稼いでいるのに柔軟剤かよとかわいそうな子を見る視線だけどたまたま俺も使っていて知ってる匂いの柔軟剤だっただけの話し。

 残念過ぎてそこは言わぬが花と言うやつだから余計な事は言わないでおく。

「それよりもだいぶ待つ事になりそうだね」

 言えば

「差し入れではないですが、軽食は用意しています」

 ここに神・飯田降臨。

 持ってきたバスケットからサンドイッチを始めオードブルから始まる数々のおかずに

「紙コップですがミネストローネを用意しました。温かいうちにどうぞ」

 一人一人に注ぎながら手渡すその一つが俺の手の中にもやってきて一口飲めば

「あ、俺の作った野菜」

「はい。圭斗君と宮下君にこちらに来る時に収穫してもらったものですので」

 移動距離≠時間程度の劣化しかないと言いたいのだろう。

 だけど……

「あったかいって美味しいな」  

 真夏を迎えようとしていてエアコンが効いていてもどこかキャパオーバーの室内にむさくるしさからの何処かハイテンションな室内の熱気の中の優しいスープは舌にもよく慣れ親しんだ味。

 なんとなくほっとした合間に扉をノックする音。

 かちゃりと開けて入って来たのは木下さん。

「多紀さん、皆さん、そろそろ準備をお願いします」

 言われて少しばかりの緊張を覚えながらもなぜか多紀さんと蓮司、そして波留さんは羽織っていた上着を脱いで

「じゃあ、行こうか」

 不思議な事に多紀さんと蓮司はおそろいのシャツを着て波留さんは割烹着をまとっていた。


「何が始まるんだよ……」


 ここに来るまでに説明を聞いていた以外の展開もあるようだが


「綾人が安心して居られるようにみんな全力で綾人を守りに来ただけだよ」


 空恐ろしい言葉を吐いてくださった宮下に俺はいくつもの想定できることを想定しまくったなか選んだ一つの恐ろしい展開に身を震わせるのだった。









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