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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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898/957

一人、二人、そして 5

 アイヴィーには屋敷の一室を与えた。

 ホテル代節約とか考えずにただ


『アヤトこの和室ステキね!入口が狭いけどこのお部屋に住みたいわ!』


 まさかの茶室を希望。


『囲炉裏もあるのね!水道もあってステキね!』


 この反応にさすがの爺さんも苦笑。

『構わないが離れは何かと不便だぞ?快適とは言えないし』

『古い家の不便にはなれているわ。フランスのお城も広すぎて不便だけど、それを逆算しながら生活するってすごく贅沢よね。だからこの国のぜいたくをぜひとも味わいたいわ』

 目をキラキラとさせてまさかの茶室に住み着く座敷童ではなくアイヴィーを俺達は外国人わけわからんと口には出さずに微笑ましく眺めておく。

 もうね、たぶん何を言っても理解してもらえないというくらいにお気に入りにしてしまったアイヴィーはさっそくパソコンのセッティングを始める。

 何せ電源が違うのでせっかくならとこの国規格のPCを購入しておけばさっそくカスタマイズからのデータの移植。

 大量のデータは一度俺のPC経由してからのもの。

 新しいPCの不具合を解決していきながら使い心地を確かめ、そしていざ作業開始。

 床の生活は慣れないだろうと思えどそこはギフテッドの子供達。自分の世界にダイブしてしまえばもう他は何も見えない。

 こうなると周囲が気を付けなければ俺もだけどアイヴィーも寝食を忘れてのめりこんでしまうのだ。それこそ飯田さんでなくとも発狂してしまうくらいの惨事が発生してしまう。

 全面的に俺が悪いので申し訳なく思うのもあるがそれとは裏腹にそんな顔をしてまで怒ってくれることに喜びを覚える俺が本当にガキで悪いとも思っている。

  仕方がない。

  こんな風に真剣に怒られた記憶の乏しさに周囲の愛情を試して確認するめんどくさい俺がいるのだ。

 みんなわかっていて惜しみない情を分け与えてくれいるのだが、俺もその分分け与えられるものを提供している。

 本当に面倒でごめんなさいと心の中で謝るも今ではちゃんと理解してもらえて目を離さないようにしてくれるのだから本当に周りの人たちに恵まれていると感謝をする。

 たとえどこまで親に見放されて寂しい思いをしたと言えどもだ。

 十分それに代わる情を貰ったと俺は思っているし、それに代わるものも惜しみなく返していると思っている。

 できる事と言えば全力で甘えるぐらいと思っているが、それを言うと皆さん同じことを言う。


「お前は何もわかってない」


 と……

 首を横に振って答えをくれないあたり大概ひどいよなと言えばなぜか皆さん困った顔をする。

 はっきり言えって言いたいけど先生についに言われた。

「そんなことも分からないようじゃ綾人もまだまだだな」

 余計混迷に陥るしかなかった。

 まあ、解らないなら解らないなりにスルーする事に決めたが今はアイヴィーの事だ。

 浅野さんに一通り俺たちの悪しき特徴を説明して一日三度の食事、そして午前と午後におやつの時間を設定して強制的に休ませることをお願いする。

 とにかく水分の補給とエネルギーの補充を強制的にしないとすごいことになるぞと軽蔑されないように笑顔で説明すればドン引きされてしまった。

 ちょっとだけ傷ついた。

 だけどそこはスルーして自分の世界にダイブしてしまったアイヴィーの管理をお願いしながら俺もいろいろしないといけないことがあるのでそちらに集中する事にした。

 飯田さんを連れていろいろ買い物したり、多紀さんを連れて再度突撃しに来た蓮司をかわしたりとしている間についに週末になり




「こんな賑やかなのはいつぐらいからか」

「何をおっしゃります。

 いつもたくさんの方に囲われているくせに」

 

 やって来た一団から圭斗を連れてきたのは内田さんと長沢さん、そして


「ご無沙汰しております」 

 ちょこんと下げた山川さんの姿に爺さん破顔して

「山川よ、まさかここで再開できるとは思わなかったぞ!」

 言いながら肩をバシバシと叩く爺さんの満面の笑顔に山川さんもどこか懐かしそうに爺さんの歓迎を受けていた。

「それにしても老けたな。達者だったか?」

「吉野様には老いてもまだ仕事を頂けるのでその間は踏ん張っております」

 なんて山川さんから吉野様と言われて背筋がゾゾっとしたけどそこはぐっと我慢して耐えていれば浩太さんが苦笑する当たりきっと経験のある事なのだろうと思う事にしておく。

「それにしても吉野も意地が悪い。

 山川と知り合いならば茶室の改造にここまで悩むことはなかったぞ」

「爺さん奥さん大事にしすぎー。

 それこそ奥さん大事だったらボロボロになった土壁直したり窓の歪みとか直そうぜー」

 俺が全面的に手を入れたかった理由。 

 大切過ぎてあまり足を運べなかったゆえに傷んでしまった茶室の現状は見た目とは違いひどいことになっている。

 水屋から湿気も上がっていたり、一部の屋根から雨漏りもしていた。

 生活していないと気付かないことは目を離せばこのような大ごとになっているという事例だろう。

 その湿気から窓枠が歪み、窓の開けづらさを覚えてしまった。

「そこは長沢の兄さん方に任せましょう」

 どちらも目上と言うように腰を低くする山川さんだけど長沢さんも頭を下げながら

「元吉野の木こりで、そのあとはこちらの内田の祖父を師匠として建具をいじらせて頂いています」

 立場の違いを見せつけるような古い人間と言う姿勢を爺さんは慣れたように何も言わずに受け止めて

「ここはもう吉野の家だ。吉野の好きなように付き合ってくれ」

 と言って、やっぱりこれから愛した家が変化していく事をさみしく思ってか部屋へと向かう後ろ姿をだまって見送り、俺はとりあえず皆さんを連れて手を入れてほしい場所を見てもらうのだった。

 


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