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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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冬場は雪から家を守る為に動かずにいれば冬眠と言われるなんて知らないと思ったら大間違いだ! 6

 そんな問題児の中でひときわ問題児なのがこちらです。


「綾っちー。試験勉強不安だから勉強見てー」


 台所の隣の部屋から俺の召喚を願う声が聞こえた。

「園田、おまえ向こうに残った方が良かったんじゃないか?」

 年明けには卒業と国家資格を掛けたテストがある。いや、資格さえ取ればいつでも卒業できるし、就職先も決まっている園田が机に突っ伏して泣いていた。

「向こうにいると鬱になるー。綾っちって言うお守りの側に居る方が絶対安心するしー」

 お守り扱いされるのは微妙だがそれで安心するなら勉強頑張れと既にゾンビ状態の園田にお茶を贈呈すれば

「葉山、お前もねを詰めるなよ」

 隣で試験勉強に励む葉山が居た。

「いえ、この試験を受けないと資格の試験取らせてもらえない上に進級も出来ないので」

「おふ、大変だな。去年の園田と同じ状況か」

「です」

「って言うか、お前スポーツ医学がどうとか言ってなかったか?」

「言ってました。ですが、やっぱり根本的な事を考えたらここから学ばないといけないって勘違いしまして」

 勘違いだって言うのは理解していたのかと真面目な性格が災いしたと言う所だろう。

 ましてや普通に授業についていけてしまっただけに疑問も抱かずに勉強に打ち込み一度もテストや単位、そして実習を落す事無くここまで来てしまったそうだ。

 何この子すごくね?

 俺の教え子で一番すごいんじゃなかろうかと正直ビビってる。

 こんなポテンシャル秘めてたなんて思ってなかったと感心していれば

「陸斗と一緒にアホほど勉強しただけあるな。結果もみんな身についてて努力続けた結果が出て良かったな」

 先生がお前らも食べろとおにぎりとローストビーフを取り分けて来てくれた。 

「はい、綾人さんのおかげで血や臓器とかも怖くなくってほんと感謝してます。

 猪や鹿の解体の現場に立ち会わせてくれたおかげです」

「そういやそんな事もあったな……」

 なるべく見せないようにしてたが園田が獣医を目指すと宣言してからそう言う場を何度か作って体験させた現場にちゃっかり紛れ込んで手伝いさせていたっけとこんな事まで経験値に変換する葉山がほんとかっこいい。

「だけど血とかビビらなくて先生達に怪しまれなかったか?」

 何て園田の時にも思った事を聞けば

「怪しまれたけど、恩人の家で獲れた猪の解体とか手伝わしてもらってた話しをしたら納得してもらえました。心臓とかグラム売りするから計りで計ったりとかもしたって言ったら笑ってもらえました」

 きっと笑いどころではないのだろうが笑ってくれる先生達を褒め称えたい。

 未成年に何見せてると言いたいのかもしれないが

「とりあえず自己責任ですが新鮮なレバ刺しは美味しいですと言っておきました」

 血で気分が悪くなってるクラスメイトを横に肉の鮮度と味を語る葉山に先生達はきっと呆れただろう。そして血の匂いに酔ってるクラスメイトを見て

「お前も何か上達方法があれば教えてやれ」

 なんて言われたので

「でしたらまず魚屋に行って魚を丸ごと一匹買って捌いてみるといいかも。

 血なまぐささも臓器もみんな小さいからそこまで嫌悪感ないし最後は食べれるので一石二鳥です」

 きりっとした顔で言い返したそうな。


「そう言う物か?」

 俺も思わずそう聞いてしまうも

「えー、綾っちだって俺に虹鱒捌いてろって言ったじゃん」

 園田が恨めしげな視線で俺を見上げてきた。

「まさか自分が虹鱒捌くのめんどいからって口実付けてやらせたわけじゃないよね……」

 綾っちならありえるし今更どうでもいいと言いたげな口調だが

「何事も経験になる。後悔してないのならそんな目で見るな」

 逃げるように夜食を作る山田や川上の所に潜り込む。

「綾っち怒られたー」

「綾っち大人げないなー」

 何て二人に弄られながらも二人がせっせと揚げている天ぷらとから揚げをハイボール片手につまみ食いを堪能する。

「大人げないので一番おいしい状態の物を食べます」

「お前は本当に大人げないな」

 先生も呆れながらもビール片手に参戦。

「綾っち減るから止めてー!」

「ちょ、飯田さんも止めてください!」

 蕎麦打ちに励む上島兄弟の悲鳴に飯田さんはにっこりと笑う。

「安心してください。天ぷらは減った分俺が揚げますので気にしなくていいですよ?」

「神飯田氏の天ぷら食べたいでっす!」

 すかさず手を上げる植田に下田も

「虹鱒のふわふわ天ぷら食べたいです!」

 なんてすかさず好物のリクエスト。

「虹鱒の天ぷらだと、園田君と葉山君、出番ですよ」

「「ああああああ……」」

 解剖、ではなく包丁さばきを教えた弟子を召喚。

 メスと包丁なんて切れ味も何もかも違うけど

「きっと教えた頃より上達していると思うので楽しみにしてますよ」

「魚なんて小さなもの暫くやってないのにー」

「普段握り慣れてない物ってやりにくいー」

 何ていっちょ前にぶちぶちと言う二人。あ、お犬様が次第に狂犬モードに……

 さりげなく台所はヤバいと逃げれば何かを察して皆さんぞろぞろと逃げ出す頃には二人とも自分の運命を悟ったようだ。

 宮下も今一つ分かってない香奈を囲炉裏の部屋へと移らせて、二人の悲鳴を聞きながら植田がネット回線で見れるようになった国営放送で流れるアイドルの曲に合わせて歌って踊り狂う様子を俺達は腹を抱えて隣から聞こえてくる絶叫何て聞こえないと言う様に笑ってこの場をしのぐ、今までない位賑やかな正月を迎えるのだった。 

 









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