春が来る前にできる事 4
竈のご飯と陸斗監修の猪汁に大矢さんの旅館の板さんのスタミナ重視のおかずは気持ちいいほど一瞬で無くなった。
皆さんおかわりどれだけするのと圧巻の食べっぷりは
「これだから綾人さんの依頼はやめられないっすね」
「久しぶりに肉を死ぬほど食べた―!!!」
「特別ボーナスのお仕事に美味しいごはん。出張先の宿泊先で楽しい宴会もあるし、なんてったって大きな檜風呂も完備してあるし」
「さらに言えばそこで仕事している長沢さんと内田さんの職人の技を見る事が出来る!」
「いつみてもすごいよな。一発で組み合わせがはまるとか、微調整している所見た事ないとか」
いえ、結構してるはずですよ?
何てつっこむ隙すらないままも話は進んでいく。
「そう言えば家具を直して使うからって作業場の方にもってった時に見たんだけど欄間を彫っていてさ。あれ相当ヤバいよ、一刀彫ってあんなにも繊細な表現できるのかってぐらいヤバかったよ」
「ガチ長沢さんの彫刻ヤバいからな!」
「俺も見た事ある!すげー早く彫ってるのにヤバくってさ!」
って言うかヤバいしか言ってないのに何で会話が進むんだと感心してしまうも頭が痛いのは先生も同様の様だ。さらに
「俺的に見た一番ヤバいのは欄間を三日で仕上げた腕だよな」
「「「マジか!!!」」」
ついには圭斗も参戦したけどどうやら一番ヤバいらしい。
「せんせー、圭ちゃんはあいつらと仲間だったー」
「泣くな。類友と出会えたんだからここはそっと見守るのが友情だ」
「なんかよくわからんが勝手に俺の事を人でなしにするな」
話を聞いてないのに直感で突っ込んでくれる圭斗に思わず先生と拍手をしてしまった。
そんな長沢さん賛歌を聞き続けるのもちょっとおなかいっぱいになったので先生と逃げ出してチーム後輩の所に顔を出す。
「よう、農家達どんな感じだ?」
しゃがんで土を触り状態を確認をしていれば
「放棄されてた場所だから雑草の根っこがしぶといっす」
上島兄の言う事は聞かなくても理解できた。
「石灰入れたりして土壌改良しないといけないし、それ以前に地面がガッチガチでちかなり手ごわいです」
上島弟も耕運機のスイッチを止めて俺に状況の説明をしてくれる。
「それであれは何をやってる……」
視線の先には丸いお立ち台のようなサークルの中で園田が一人飛び跳ねるように踊っていた。ついに試験のストレスから狂ったかと思ったが
「園田か?さっき浩太さんにお願いして即席のコンポスト作ってもらって落ち葉入れて詰めた所を踏み固めて、台所に残されてた使えるか判らない米ぬかがあったから混ぜて落ち葉でサンドして踏み固めてる状態です」
ストレスではなくもうやけになったと言う所だろう。いや、それよりも気になった言葉を聞いた。
「所でいつからあるか判らない米ぬかを使っても大丈夫なのか?」
「さあ?ですがまだ今世紀の代物なので行けると思います」
「今世紀…… そう言う物?」
「無事発酵すればOKじゃないかな?」
俺の疑問に上島弟は何の疑問を覚えずに言ってくれた。
兄弟して大らかすぎじゃないかと思いながらも
「まぁ、実験として試すぐらいは怒られないですよ。最後は土の中に埋めちゃえばいいし」
「確かにそうかもしれないけどさ」
失敗するとウジ虫が湧いてハエが大量発生をする。
まさかそれをうちのウコ達に食わせようとするんじゃないのか?止めろよ。絶対大歓迎するから勘弁してくれと狂乱の宴を想像して顔を引きつらせる。
「上島ー、やっぱりブルーシートあったー」
「水野ナイス!どこで見つけた?」
「農機具庫の中にあってさ、少し汚れてたから植田と川で洗って来た」
綺麗だろうと滴をぽたぽたたと落としながら持って来た水野とは対照にぐったりとした植田は俺達の顔を見た途端泣きだした。
「綾っちー!水野が酷いよー!
ブルーシートの上にあった白骨を投げて来るんだー!!!」
綾っち言うなって言う前に俺と同じく繊細な植田が俺に飛びついて来てしがみ付く。
「いやぁ、あまりに綺麗なお骨だったもので。鼠ぐらいのサイズなら大丈夫かと思ったんだけどな」
「鼠だろうが熊だろうがそんな物投げるなー!!!」
さすがに俺も先生も引いた。
いくら田舎の子供だからと言ってそんな風に遊ぶのはいかがなものかと思うが
「鼠ならまだ許容範囲だよ。結構転がってたし」
さらっとさして珍しくもないと言う上島弟の言葉に俺と植田はいやー!!!と叫びながら癒し系の宮下に大丈夫だよと言う言葉を言ってもらいたいがために走り出すのだった。
が……
「うん。結構あったんだ。
アライグマかなんかそんな骨もあったし、サイズが子供っぽかったから住み着いてたんだろうね」
さらに朗らかな顔で
「綾人に見せるとパニックになるだろうから片付けたつもりだったけどまだ残ってたんだね」
「それ、いい顔して言う所?」
「んー、だってこんな時ぐらいしか綾人を追いつめれないじゃないか」
ここに悪魔を脅す真の悪魔が潜んでいた。
「ほら植田も見ろよ。これだけ綺麗に骨だけ残っててさ。今直ぐ標本作れるよ?」
近くにあった段ボール箱を引き寄せればお住まいになっていた先住民の方々が……
「そのまま焼却場に運んで来い。たしか頼めば焼いてもらえるから」
言えばきっと裏山のどこかに埋めようとしていたのだろうけど、なんとなく精神的に無理なのでお金を払ってでもそこで処理してもらえと言う。
「そうなの?折角裏山があるから埋めてこようと思ったんだけど」
そう言って少し首を傾げて
「ただ埋めるより焼いてもらう方が成仏できそうだよね」
だったら焼いてもらおう、なんて水野に他に骨があったらこの箱に入れるように指示をしていた。
「綾っちって猟で動物捕まえて捌いて食べているのに免疫ないってどういうこと」
「綾っち言うな。そう言う植田こそ魚捌いて食べているのに骨が駄目ってどういうこと」
お互いその場に座り込んで空を眺めながら
「食べ物だと骨すら尊くなるって言う事例でいいのかな?」
「未知の命は怖い、これぞ恐れって事か」
植田の言う事も確かにと思いながら素直に
「コミュニケーション取れない物って怖いんだよ!」」
力いっぱい向かいの山に向かって叫べばよく判ると言う様に頷いてくれた植田に初めて友情を覚えるのだった。




