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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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生まれ変わりは皆様とご一緒に 9

 食事が終わり、チーム森下の七名が梯子を使って屋根の上に上がる。

 その頃にはご近所の農家さん達も集まって来てくれて吉野の茅葺屋根の最後の姿を愛しんでくれるので少しでも表向きだけでもと裏側の茅から降ろして行く事にした。受け取ってトラックの荷台へとバケツリレーで運ぶ頃に高校生達はやって来た。

「すみません、遅くなりました」

 外の賑やかさに目が覚めた上島兄がみんなを起こして慌ててやって来たと言う。

「おはよ。予定が前倒しになってまさかの朝六時スタートになったよ」

 予定では内田さんの仕事の予定の八時スタートだったがまさかまさかの二時間も前倒しは俺にも想像がついて来なかった。勿論朝圭斗の顔を見てからスマホを見れば今から行くぞと言う突入のメッセージが何度も届いていたがメッセージよりも早く本人とご対面した段階で諦めるしかない懸案だったので仕方がない。

 水野と植田コンビもやって来たし二年も一年も上島弟も揃った所で

「先朝ご飯食べておいで。それから作業を手伝う様にって、先生は?」

「綾人呼んだ?」

 何故かお椀を片手にずるずると豚汁を飲みながら声をかけてきた。

「先生起きてたら声かけてくださいよ」

「あー、いや、なんか忙しそうだったから。それに先生も結構忙しかったんだよ?」

 ちょっと来いと言う様に顎を小さくだけどしゃくられて台所に向かえばそこには大工さんの奥さん達がまだ小さな子供やそうでない子供達にも食べさせる忙しい光景が広がっていた。

「とりあえず納屋のトイレは男性用に、母屋のトイレを女性用に分けて使う様に」

 いいながら何時の間にだろうパソコンからプリントアウトした女性専用・子供用と言う紙と男性専用と言う紙を渡された。

 これぐらい気を付けろと言う視線を受ければ俺は慌てて一緒に渡されたセロハンテープを持って二つのトイレへと向かって走る事になった。

 内田さんにも説明をして作業中だと言うのに大声でトイレは離れの物を使ってもらう様に話しをしてもらい、俺はおはようございますと朝食を食べる一同に今回の施工主の挨拶をすればいきなりお邪魔した上に居間に上げてもらってすみませんと謝罪と感謝の言葉を頂くのだった。

 真面な人達だと思うも真面だったら家に上がりませんよとつっこむのは青山さん。都会の人間の警戒性と田舎の人間のおおらかさを両方理解できる俺は思考の板挟みになるも

「おおおおお!!!飯田さんだ!!!」

「神☆降☆臨!!!

 この日の為に俺達は綾っちにこき使われてきたんだ!!!」

「お前ら煩い!植田はおかわり禁止だ!!!」

「えええ?!理不尽すぎでっす!!!」

 飯田飯を知らない一年はきょとんとガッツポーズの水野植田コンビのむさくるしい様をぽかんと見るも二年生達はおかわり禁止の余波に巻き込まれないように山口さんから給仕を受けて土間上がりに食事を運び一年を連れて並んで食べていた。こう言うのがよくできた先輩だと思う中ちゃっかり上島ブラザーズも混ざって飯田さんの事を紹介するのだった。

 因みに陸斗はすでに食事を済ませて宮下の指示でビデオを撮っていた。時々森下さんがビデオを受け取って屋根の上からの景色も撮影してくれるサービスは茅を下ろす手順と作業の危険性と茅葺屋根の構造を説明してくれている。そして一人の作業の方に茅を葺く場合の作業をざっと説明を付け加えてくれた物を後日ビデオの編集で見た時は茅を下ろす時よりも何倍もの時間をかけて作り上げていく行程と手間暇惜しみなく何十年と持つ屋根を作り上げる今にも途切れようとしている伝統を維持する労力と繋げようとする努力の説明にいつしか涙が溢れていた。

 そんな真面目な森下さんの解説をまだ知らないこの時の俺はご飯を食べ終えて退屈している子供達の為に水路を弄って水路の途中の水たまりに水を張っておいた。

「畑は電気柵が張ってありますが、今は安全の為に電気を止めてます。

 ですが、一応安全の為にも危ないと言う事を教えておいてください。水は山水を直接引いてるので冷たいので冷えすぎないように注意してください。寒いと言ったら風呂で温めてやってください。場所は母屋のトイレの隣です。あと魚を放してあるのでよかったら内臓とって焼くので……」

「それは私が面倒を見てあげるよ」

 青山さんが声をかけてくれた。

「良いのですか?」

「私だって飯田の子供だ。魚ぐらい捌けるよ」

 くすくすと笑いながら結婚して婿養子で家を出てもそれぐらいもそれ以上の事も出来ると笑って任せろと言ってくれたので、内臓は烏骨鶏達の餌にするので取っておいてくださいとお願いすればその優しげな顔立ちが盛大に疑問を浮かべるのを面白く眺めるのだった。だっていつもどんな季節でもスーツをびしっと着て優しげな笑みを浮かべている姿しか知らないからそんな顔は勿論料理をするなんて想像がつかなくて、ホストならどちらかと言えば給仕を受ける側オンリーだと思ってしまうのは仕方がないだろうと#店主__ホスト__#でも調理場に立つ事は無くても調理のノウハウを知るのは必須なのかと改めて感心するのだった。

「じゃあ、ここのバーベキュー用のコンロに火を入れるのでお願いします。塩は飯田さんに聞いてください」

 そう言って丸投げをすればお母さん方は子供達を呼んで水遊びをさせるのだった。とは言えまだ朝の山水は冷たくきゃあきゃあという声が響くのを通りすがりの農家のおじいちゃんおばあちゃん達は孫を見る目で微笑ましく眺めていた。

 母屋の竈から火を貰ってバーベキューコンロに火をくべる。

 せっかくなので薪ではなく炭を持って来て火を回らせるには少し時間はかかるが遊んで魚を捌いて準備すれば良い頃合いだろう。と言うか、奥様方がバーベキューの達人でした。何やら奥様方もきゃあきゃあ言いながらもビデオを撮っていた。機材はウェアラブルカメラで子供を追い掛けながら撮影するので向いているとは言えよう。

 俺も陸斗に持たせているの同じ機種の型番違いだし、少し良い奴だけど決して高いとは言えない価格なのでお手ごろ感からいくつかあるし、別メーカーのお高い子もある。家電好きだけど電気屋のないこの山奥では有り難い事に通販で幾らでも手に入れる事が出来る結果、買い過ぎたわけだがそれは先生と宮下に怒られたのでもうつっこまないで貰いたい。

 そんな合間にも続々と車は麓から上がって来た。

 宮下のスマホもひっきりなしの対応になり前日の鰻だけでは割は合わないだろう。

 俺も宮下と一緒に車の整理を手伝う。主にバックの苦手なお年寄りの代わりに向きを変えたりとか。

 そして茅を受けとりに来た人達も巻き込んでの人海戦術での茅を下ろす作業は瞬く間に終わらせ昼前までには作業を終えてしまった。

「早い、のか?」

 基準となる時間が分らなく頭を傾けてしまうもいつの間にか屋根に上がっていた水野上島脳筋コンビが違和感なく混ざって働いていた。

「早いですよ。本当なら一日がかりになる場合もあるのですから」

 今回腕を披露する場のなかった茅葺職人の井上さんが二人とも良い体力してますねと褒めながらもいつの間にか屋根から降りてきて説明をしてくれる。

「やっぱり若い労力があると仕事が早いなぁ」

 上島兄の仕事の早さと言い、今回合宿で来ていたご両親方も平日なのに手伝いに来てくれていた。子供を迎えに来る理由も一つあるがそれでも手伝っていただけるのはありがたいと井上さんは笑っていた。

「最近では過疎が加速してか手伝ってくれる人自体もいないのでなかなかはかどらないのですよ」

 体験させるためにも日付を合わせてくれた先生に感謝をしてしまう。

 おかげでその家族まで巻き込んで労力となったのだからありがたいと言うべきか……

「お礼とかはどうすればいいでしょう?」

「ん?そんなの茅を分ければいいんじゃね?後要らない畳残してあっただろ。それも聞いてみると良い。あぜ道に置けば雑草対策にもなるし畳だから土に還るしな。

 焼却炉に持って行けばただのゴミだが、あぜ道に置いておけば肥やしにもなる。

 ゴミにするにもお金がかかる時代に先人の知恵には頭が下がるな」

 確かに昔の人の知恵には頭が下がる思いばかりしかない。

「さて、昼も近くなってきたし皆さんにお昼を食べてもらいましょう!」

 いつの間にか茅の無くなった屋根に下板が打たれていてガルバリウム鋼板を上げるばかりになっている。

 降ろしてまだ仕分けができてない茅は庭の片隅に、そして手の空いた大工さんは零れ落ちた茅の片付けと言う様に熊手を持って掃除にかかっていて、さらに手の空いた大工さん達は、廃材と高校生達を使って昼食用のテーブルを即席で作っていた……


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