時間の流れにしみじみと……するにはまだ早い 5
山に帰った後は畑の草取りをする。
丁寧な草取りをしてもらったようであまりする事はなく、そして雑草も刈るほどでもない。枝も打ち落としてあり、あいつら優秀すぎるだろうと感心するもちゃっかりと小遣いをせしめて行った社会人になっても楽しいバイト生活はやめないつもりが微笑ましい。確りとせしめたバイト代の使い道は秋服購入代金や食費と言う堅実な使い方をする学生から新機種スマホの購入資金からアパートの引っ越し代金に当てたりとそれなりに理由はいろいろあるようだ。
もっとも高額になりがちなここまでの交通費と言うのが一番大きい所だろうが、それでもこれだけ綺麗にしてくれたのだから大盤振る舞いするのは仕方がないだろうと呆れる様に睨んでくる先生を一蹴した。
家の中も綺麗に掃除されて居心地がよく、西側の畑に下りて少し花を摘み、たまには床の間に花を飾ってみた。
うん。
後悔しかない前衛的な生け花にどうすれば綺麗に活けれるかスマホで調べてみても芸術性音痴な俺ではどうやっても花瓶にぶっさしてる様にしか見えなかった……
「まぁ、花とて命ある物。この辺で勘弁してやろう」
なにを勘弁するのか完全に負け犬の遠吠えだが、なんとなくやる事もなくなってしまったのでお湯を入れたポットと茶葉を持って自室へと向かう。
口にはポテトチップスの袋を咥えて。
今朝まで賑やかだったはずの家が途端に静かになって寂しくなったのもあり、先生もただいま実家に帰省中となってたまにはネットに耽けこむ事にした。
メールの確認は既にしてあるし、植田がギルマスしていたゲームも既にサービス終了となってしまっていた。
今はこれと言って創作意欲もないし、たまには純粋に遊ぼうかとネットの海におぼれようとした所で
ぴこん!
意外と嫌いじゃないメール着信音に顔を歪める。
何のひねりもないこの音を設定したのは……
『とにかく連絡が欲しい。気付いたらすぐ連絡をくれ』
何て夏樹からのメッセージだった。
着信もあったらしく、カフェから車に乗る時にマナーモードにして家に帰ってお茶を入れて部屋に戻ってから解除してのこのタイミング。
不気味なほどに届いた着信の数は夏樹と陽菜の物ばかり。
なにがあったのかとメッセージを読み漁って行けば
『親父達が来た。近いうちに行くかもしれないから注意しろ!』
わりと最初の方に入っていたメッセージに背筋がぞっとした。
「おいおい、久しぶりの連絡だって言うのに笑えんぞ」
何て連絡をすれば
『やっとつながった!無事か?!』
「いや、普通に出かけてたから。って言うかなんて冗談だ?」
『冗談であってほしかったよ。うちに面会に来たんだけど、ほら、久しぶりだから顔あまり覚えてないから親父達の背後で対応していた事務員に盛大に居ない事をゼスチャーでお願いしたぐらいなんだから!』
親に顔を忘れられるとはそれはそれで面白い。なんて普段なら思えたのだろうが……
「で、誰が来たんだよ」
『親父に陽菜のとこの親父とオジキの三兄弟そろってた。
そろいもそろって真昼間に何でいい大人がわざわざ面会に来るとか怖すぎてちびるかと思った』
震える声はなおも続く。
『俺は自衛隊勤務だから何かの伝手を辿って探し出したみたいで……
どうやら陽菜の行方を捜してるらしくてな、みすぼらしい格好で目がギラギラしてたから見ただけでろくでもない考えをしているってすぐに分かった』
そんな状況で陽菜を探しているとなれば単純に借金返済に協力させるつもりなのだろう。陽菜の父親の勝司は自分の娘に何をさせるつもりなのかと怒りに手が震える。
「で、陽菜は?」
『今は社員寮付きの就職先にいる。一応連絡して置いたけどここにいるよりぜんぜん安全だから気にせずがんばれって言ってある』
中々の機転。
「確かにその方が安全だが、よくそんなじっくり観察できたな?」
ささやかながらの疑問には
『ちょうど今前の所でお世話になってた人が来ててロビーで面会してた所なんだよ。
そんな所に声を荒げながら俺を探してる浮浪者な三人って目立つだろ?
全員警戒してくれて追い払ってくれた』
「いい人が揃っててよかったなー」
適当に言うも
『うん。俺と陽菜の事は先に説明してあるから。
それであの親父達を見てみんな今更ながら納得してくれた。絶対ヤバいって』
「よかったなー」
これも適当に言う。
仕方がない。
その三人が今度は絶対ここに来る。
何気に顔がこわばっているのが鏡を見ずとも理解できてしまった……




