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古民家生活憧れますか? 4

評価ありがとうございます。

八月いっぱいは一日二話のアップになります。

よろしくお願いします。

 飯田さんを連れてまずは沢の近くを案内する。世の中すでに春だと言うのにこの山はまだまだ冬の匂いが濃く、でも春の使者は確かに訪れていて

蕗の薹を見つけて蕗味噌でも作ろうかと摘む。

「それは?」

 春の使者、蕗の薹が初めて飯田さんの声を引き出してくれた。

「蕗の薹、フランス料理では使わないの?」

 ただ純粋に聞けば

「普通なら使わないな」

「俺も聞いたことない」

 こんなど田舎村にフランス料理店がある事すら聞いた事ないが。

「天ぷらにでもするのか?」

「数が取れたらそれも良いがとりあえずは蕗味噌だな。常備食っていうやつだ」

「味付けは?」

「味噌と砂糖とみりん。俺は甘めに作っている」

 そう付け加えれば

「君が料理を?」

「必要にかられて。それに飯田さんだっけ?飯田さんも十八歳でフランスに行ったのなら何も珍しい事じゃない」

「いや、そうかもしれないが……」

 それから次は電気柵に囲まれネットに覆われた畑に行き

「これは、すごいな」

 長年開拓して段々の畑は南向き。遠くに見える向かいの山や切り開かれた景色はこんな山奥に住み着いた者だけしか知らない絶景だ。

「ここがバアちゃんの畑だ」

 この畑を含めた景色もこの冬で終わりだなとは言わずに今の時期は白菜、キャベツ、葱、ほうれん草といった葉物ぐらいだ。

 あとはビニールをかぶせた小さなハウスの中で二十日大根と苺が育っている。

 葱をいくつか抜いて、そろそろ芽を出す白菜も幾つか根っこ事抜く。それらを飯田さんも持ってくれてキャベツも根っこ事一気に抜いて根っこはゴミ捨て場に野菜は山水の冷たい水で泥を落とすのを飯田さんは黙って手伝ってくれて、小さな声で感謝を述べた。

 それらを持って俺は勝手口から土間の台所に入って……

「凄い。竈を今も使えるのか」

 感嘆と言う声で中央に置かれた机に葱と白菜を置いて広いとは言えない台所を探検するのだった。

「使えることは使えるけど、一人じゃ薪が勿体無いから使わないな」

 いいながら電気コンロつまりIHコンロを指させば酷くガックリとした顔を俺に向けるのだった。

「なんなんだよ……」

 鉈を取り出して白菜を真っ二つにぶった切り、萎れた葉っぱを取って塩をすりこむようにかけながら空いた壷に詰めて蓋をすれば

「竈はもう使わないのか?」

 見上げるようなシェフじゃなくてアメフト選手だろと言う図体が捨てられた子犬のような顔でショボンとする様は年齢なんて関係なく動揺させる」

「だから、薪が勿体無くて……」

 薪ストーブと言うか囲炉裏の我が家では薪の在庫は死活問題だ。灯油を買いに行くには簡単だがそこに向ける足の車代の方が高くつく。なので薪割りをするのだが、薪は木を切ってくべればそれで良いわけじゃない。水分の多い薪は煙がひどいから最低二年を乾燥させるのを我が家では目安としている。    

 それを日常的に使うのは骨が折れる仕事だと言うか、火力過剰だと言えば

「今なら四人、使ってみても構わないだろうか……」

 図体だけのでかい子犬をいじめるほど腐った人間ではないつもりだ。

「わかったよ。火を起こしておくから好きな野菜を持ってきていいよ」

「申し訳ないが肉類は何か使っていい物は?」

「肉は下界まで降りないと手に入れる事のできない貴重なもんなんだよ」

 隣の小屋の冷蔵庫から鹿肉の肩の部分を取ってきて渡した後何か言いたげな飯田さんは両手の中の肉の塊をしばらく見つめる横で鉈を持った手でキャベツをざく切り。俺から距離を取る中キャベツをザルに入れて外へ向かえば飯田さんは無言のまま肉をまな板の上に置いてついて来た。





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