山の日常、これぞ日常 3
ご飯を食べ終えた後は仏前の前に座ってお線香をあげて帰郷の報告をしていた。
と言ってもお土産を並べて手を合わせて
「無事帰ってきました。長い間の留守番ありがとうございます」
これは留守番なのかと思うも先生も隣に座ってお線香をあげておりんを鳴らしてくれた。手を合わせて少しの間目を伏せた後
「この後寺に行くんだろ?」
「うん。そのあと長沢さんとか内田さんに挨拶したいし、居ない間にも色々お願いしたからお礼代わりのお土産渡したいし」
「一度に回りすぎるなよ。まだここの気圧に慣れてなくてまたぶっ倒れるぞ」
「しょうもない脳筋連れて来なきゃ問題ないよ」
「まだ根に持ってるのー?」
「一生根に持つ懸案。
今日はとりあえずお寺と長沢さんと内田さん程度に抑えておくよ。あ、後宮下んちも行ってくる。帰りに何か買って来てほしいもんあったらLIMEに入れといてー」
「相変わらずお前はゆるいな?」
「せんせーには勝てないよ」
何て仏壇の蝋燭の火をちゃんと消して
「じゃあ、留守番は任された」
「よろしくー。あいつらの面倒もよろしー」
「当然。あいつらには先生のお世話と言う一番のミッションがあるからな。遊んでやるよ」
ほどほどに……
と言わなくちゃいけないのだろうが朝からお昼にピザを焼こうとか言いだしている植田と水野の発案に全員が乗っかるのを見て
「先生、遊んでもらった方が楽しいんじゃない?」
「とりあえず縁側で宿題作りながらピザが出来上がるのを待つか。ビール取って来るか」
相変わらず飲んだくれだけど一番のお気に入りスポットには既に仕事をする為の環境は出来上がっている。
「ますます乗っ取られ度が上がったな?」
「水野も中々だぞ?」
「あいつは何をやったんだ?」
聞けば丁度聞こえる範囲でピザ釜を組み立てていた水野が手を止めて
「ウコハウスの上を借りてウェブミーティングに参加してましただけです。
窓開けて外の景色が良く見えるようにしてちょっと羨ましがらせてみました!」
「良いぞー、もっとやれ―」
どうでもよさ気に、でも外資系の会社に就職するとお盆休みもないのかと大変だな、頑張れと応援はしておく。
「あざっす!また会議があるんで部屋借りますね!」
「今度は囲炉裏のある部屋を使うと良い。ウコハウスより電波の調子も良いぞ?」
「もうやりました!本社の人にファンタスティックとか羨ましがられて会議にならなくって上司から怒られました!」
笑顔での報告に俺も先生も笑うしかない。
「まぁ、だったら離れの床の間も良いだろう。侘び寂の世界だ」
「あー、確かにそれも良いっすね」
じゃあ、向こう借りまーすと言ってまた気合を入れてレンガを積んでいく。
それなりに仕事を楽しんでいるようで何よりだと笑いながら出かける準備をしていれば
「あ、綾人さんまだいて良かった!」
陸斗と宮下が揃ってやって来た。
腕には花束を抱えていて……
「それどうしたの?」
俺に花束じゃなかろうと思えば
「お墓行くのならお花を用意してみました!」
何やら名前の知らない花で構成された花束を俺に持たせてくれた。
「大和さんが仏壇用にってお花を育てくれた物の一部ですが、今が見ごろですので持って行ってください」
にこにこと新聞でくるんでくれた物を出されたらありがたいと言うしかなく
「ジイちゃんとバアちゃん達もみんな喜ぶ。ありがとうな」
えへへと笑う俺よりもはるかに身長が大きくなってしまった陸斗の笑顔は今も初めて会った時とは大違いの優しさに満ちた笑顔。
随分成長したなと目を細めながら見守りつつも自分の事は置いといて
「じゃあ、昼には戻って来るつもりだけど先生のお世話頼むな」
「行ってらっしゃい」
「長沢さん今日は家の方に居るから」
「ん、ありがと」
そう言って車に乗り込み、烏骨鶏を驚かせながら出発するのだった。




