生まれ変わりは皆様とご一緒に 4
お昼の時間になって鰻屋さんは現れた。
山ほどのお重を運ぶ様子に高校生達が出動する。
鰻が好きな高校生って一体何なんだと思うも
「ここの鰻屋のたれ甘めでうまいんだよな」
水野の言葉に皆さま頷いていた。まぁ、山間の町の唯一の鰻屋さんだからね。皆さんお知り合いになるのは当然と言う物だろうか。
テンション高い高校生を見守るかのように陸斗が居たが、やがて鰻よりも馴染のある揚げ茄子や冬瓜の中華あんかけの方をじっと見て居る。若者よ、若いんだから年寄メニューに心惹かれてたらダメだぞ?と心の中で突っ込みながらもやっぱり香ばしい炭火で焼いた鰻とタレが絶妙に焦げた匂いは別格だ。
次第に匂いにつられてお重をじっと見つめ、頂きますを待つ他のメンバー同様正座して待つ姿が……どいつもこいつもかわいいな。なんて言うか餌を目の前に間手をする犬の如く大人しく許可を待つ姿を可愛いと言わず何という。
お吸い物を温め直して植田にお椀に入れさせる間に白菜のお新香も用意する。一人もしゃもしゃと先生は摘まむが二年生達にお茶を入れさせたものが全員の手に渡った所で準備が終わり
「「「「「いただきますっ!」」」」」
本日一番の歓喜の雄たけびが沸き上がった。
お前ら、鰻でここまで喜ぶってお父さんとお母さん泣いてるぞ?陸斗に食べさせる理由にお前らを巻き込んだだけなのになぜお前らの方がテンション高い?
内田親子のように家族の分までありがとうございますと頭を下げる程度ならわかるが……
一心不乱にタレしみしみのご飯をかきこむ。あまりの勢いにそれは飲み物かと問いたかった。どこぞのチェーン店の牛丼じゃないぞと味わって食べろと言いたい。なので大人な俺と先生はごく普通にパリッと焼けた皮とふっくらと焼いた身の柔らかさ、そして香ばしくも甘いタレを堪能していた。まあ、こんな風に食べる高校生がいたら嫌だなと、こいつらはまごうことなき高校生の正しい姿をしているのだと感心をした。
いつの間にか陸斗も同じようにどんぶりでもないおひつからかきこむようにして食べる姿は随分男らしくなったと思うべきだろうかつられて普段より多い量を食べる食欲を微笑ましい成長だと周囲に巻き込まれながらも色々な経験をして増えて行く笑顔を俺達が増やせればいいと思う事にはしておいた。
因みに茄子と冬瓜はもう誰の目にも映ってはなかった。
まぁ、この様子もしっかりカメラに収めているので使わせてもらう事にするが。当たり前だろ?どうして頂いた宿泊費以上の飯代をただで食べさせてやらないといけない?稼いで食べるとは自分の価値を切り売りする事だぞと、お前らがいかに美味そうに食べるのかが今回の飯代だと立派な理由を先生に言えば呆れて
「それ以上ぼったくるくせによく言うわ」
「そう言うようになるために俺が頭を使うので問題ないかと」
くつくつと笑いながらも肝吸いをすすっていた。
正直あまり好きじゃないんだが、お吸い物のお出汁が俺好みで好きなのだよ。
そして毎度底に残る肝を先生が横からひょいと拾い上げるのだが人には好き嫌いと言うぶち当たる壁があるのだよ。越えれる壁もあるが、年に何度食べるか判らない物を越える必要があるか?と問われればそれは悩む所だ。別に食べれないわけじゃないし?好んで食べないだけだし?
そんな御託を聞かされるのが面倒だから先生は率先して鰻の肝を食べてくれるその程度の問題だ。
「こいつらがこんなもんでこんなにも喜んでいるのを見ると圭斗にも食わせてやろうかと思うわな?」
「そしたらその時にでも陸斗も喜んで食べてたって言えばあいつも食べに連れてくぐらいはするだろうしな」
兄弟から親子に変ってしまった関係だけど仲がいいのは変らないのでやがて思い出された茄子も冬瓜も食されテーブルの食器以外をすべて食べつくした後はお片付けの時間。食後の休憩を置いてまた勉強の時間に戻るのだった。
内田さん親子も長焼き片手に嬉しそうな顔を隠せずに帰って行くのを見送った。ごく普通の晩ご飯を食べて全員風呂に入れさせればさすがに疲れたと見えて夜勉が始まる前に壁にもたれながら眠りについていた。まあ仕方がないがせめて二階に行けと思うのは当然だろう。先生も勉強にならないからもう寝ろと言えば辛うじて起きていた奴らはのそのそと重い足取りで二階に上がって行き布団を敷いたあと寝てる奴らを引っ張っていくのだった。寝ぼけている奴らを連れて行くのは見ていてハラハラしたがそれでも階段から落ちることなく布団と言う巣へと戻るのだからばっ可愛いなと思うのはそれなりの付き合いになるからだろうか。
昨日は夜中でも賑やかだったのにやっと静かになったかと先生は日本酒を持ち出してきて昼の残りの冬瓜を探し出してチビチビとやり出した。
「綾人も付き合え」
差し出されたぐい呑を受け取れば普段遊びに来る時のような時間に俺も一杯、二杯と貰う事にした。
高校生達に成長のなさと無謀な馬鹿さ加減を肴に笑っていれば遠くから車の音が聞こえた。
「宮下か?」
「あいつは今日仕事だったはず」
圭斗かと思うも車の音が違う。これは……
外に迎えに行けばやがて見覚えのある車が見えた。
「飯田さんだ」
「はあ?シェフは早すぎだろ」
時計を見ればまだレストランは営業時間。
止まった車の中を慌てて覗けば
「今晩は。明日の準備があるので店の準備を終わらした所で抜けてきました」
とても三時間ほどの移動時間をこなした後とは思えない爽やかな笑みを浮かべていた。




