山にお帰り 7
予告の撮影はほとんど終わってたらしい。
だから蓮司が撮影を抜け出して俺と一緒に遊んだりする事が出来た。
ほとんど慧の撮影だったりとか、第一回目の予告は木下さんが監督と言う変わり種の撮影だった。
「ありなんですか?」
「もちろん。一作目には三人共スタッフの内だからね。僕以外の視点で今回の台本を見て作ってもらう事にしたんだ。
ネットや映画館でしか放送されないけどなかなか面白い仕上がりになってるよ」
「面白い?
俺のサバイバルそんなにも生活面白い?」
真顔で聞いてしまうも多紀さんはそっと笑い
「むしろ羨ましい。僕もこんなドラマみたいな生活してみたい」
「あの熊遭遇事件にあったのに良く言えますね」
「ドキュメンタリー映画もまた撮りたいな。まぁ、撮らせてもらえないけど」
それもまた有名税の内だろう。
しょぼんと萎れる多紀さんを他所にすっかりぬるくなったペットボトルを手の中で転がしながら
「年齢考えろって事じゃね?」
「うん。まあ、そこは気にしてる。
昔は二徹三徹平気だったけど今は徹夜できないからねえ」
「二徹はともかく三徹は無理でしょ。って言うかどうやって過ごしてるの?」
「ん?そんなの映画見てたらあっという間だよ。編集しててもあっという間だしね」
少し恥ずかしそうにはにかみながら笑う多紀さんを俺はきっと初めてだろう感情を持つ。
「尊敬するけどやめてください。止めれない気持ちは判りますけどパフォーマンスは限りなく落ちているので三徹目の意味ないですからやる価値ないです。ただの自己満足です」
ただでさえ脳のエネルギーは効率が悪い。アスリートが麺類やごはんから糖質を取る様に頭脳と言う物はとにかく糖質を必要とする。
俺や多紀さんのように身体を動かす事のない人間には頭を働かせる為にピンポイントで餌を与え続けないと体形が見るも無残の事になる。なので与えるのは薬局でおなじみの『ブドウ糖』が一番だ。
先生曰く食事を侮辱するのか、もっと食べ物を尊べと言うが正直俺が求める量は例の金曜日のから判るように半端ない。効率求めてブドウ糖にしていた時期もあったが、結局の所飯田さんがおかずの作り置きをしてくれているのでその生活はやめた。ちなみに色々と健康的にもなった。
食事って大切だな、しみじみと思った十九歳の春だった。
「まぁ、この先アクション映画とかはもう撮れないだろうから。
こうやってじっくり自分の人生を考えるような事に出会えて僕は嬉しいんだよ」
「まぁ、アクション映画は取れなくても人生がアクションですからね」
そんな嫌味で返すも多紀さんはぱぁっと笑顔を花咲かせ
「そうなの!映画で僕の人生で出来ない事を幾つも体験した気になっていたけど、やっぱりあの熊事件の時みたいにドラマのような映画よりもリアルな生活をしている人がいるって思うとね、こんなたいそうなセットも高額な機材も必要なくなる。
カメラ一本でどこでもいける。
残りの人生を考えたらまだまだ出来る事はいっぱいあるって思えてね」
うきうきとしてる多紀さんだが、悪いけど俺は言わずにはいられなかった。
「今までやりたい放題だったのにまだやるんですか?」
きけば
「これからが本番だよ」
聞いちゃいけない決意を気化された所で本日の撮影が終わった丑三つ時だった。




