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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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駆けぬく季節は何時も全力前進 5

 郊外の家はフランスの城とは違いこじんまりしている。

 まあ、大体城と比べればこじんまりしている物だろう。

 二階建ての屋根裏付き。俺は何故かイギリスの家は二階に風呂場がある家が多く、寝室に近いのは良いよなと二階のマスタールームを占領している。カレッジを卒業したら大学院に進む(予定)ジェムに明け渡しても良いと思ってる。それなりに広い机と詰め込んだ本ベットとチェスト。クローゼットも広く、明るい部屋だった。

 日本から移動して来たばかりなので時差ボケにまた悩む事になるのだろうが、その為にも早め早めの行動でこちらに来たのだが……


「アヤトー!帰って来たのならなぜ私に声を掛けないのです!」

「出た……」

 と言ったのは俺ではなくクリフ。

 俺はまだ頭がボーっとしていて完全に逃げそびれた物のちょうどいいと言う様にそのまま目を閉じて寝る事にした。

「フローレンス、まだアヤトは戻ってきて体調が良くないから……」

「ああ、もう!折角故郷のお話聞きたかったのに!」

「故郷の話しだったら動画が上がってたからそれを見るといいよ」

 目を閉じながら話を聞いていたけどジェムよ、火に油を注ぐんじゃないと思っている間にも

「私はアヤトから話を聞きたいのですー!」

 喚くフローレンスに俺はげんなりとしながら本格的に居眠りを決め込むのだった。


 フローレンス・エアハート。厨二病的な名前かと思ってしまったがまさかの本名。イギリス版キラキラネームかと思ったけどわりとある名前と家名が奇跡の合体をした程度の一般的な名前だった。

 因みにあだ名はフローラ。俺にもフローラと呼んでくれと脅されている。

 彼女との出会いは一年目の年を優秀な成績で終えた為に二年目にマークされてしまった。

 このお嬢さんはこのカレッジに入学できるようにとても優秀で、カレッジに上がる前に一年スキップをしてる頑張り屋さんだ。

 そのせいかプライドは高く、圧倒的に男子が多いこの学部で直ぐに孤立してしまったのは既に俺が存在を知った時には出来上がっていた環境だ。

 ブルネットがしっとりと似合う綺麗な顔立ちだと言うのに、子供の時から使っていると言う大きな眼鏡とまだ化粧を必要としてない肌が逆に幼さを感じさせるちぐはぐな、良く言えば背伸びをしているおませさんと言った子だった。

 プログラム開発の授業で一緒になり、グループを組む時に一人あぶれていた彼女を入れたのが知り合ったきっかけ。俺は知らなかったがこの時点で彼女の独壇場な物言いは有名で既に敬遠されていたと言う。

「へー、そんな子が居たんだ」

「アヤトはほんと他人に興味ないんだな」

「いや、それなりに世話は焼く方だと思うぞ」

 そこにかなりの好き嫌いが混ざるだけだが知りもしない人間をいきなり距離を取るほど綾人の許容は狭くない。

 そんなわけでケリーと二人で進める予定だったプログラム開発にフローラが加わり、その優秀な頭脳を披露してもらうのだった。

 あれだ。

 確かに優秀なのだが経験値がない。

 ああだ、こうだと意見はいう物の形にならないのでその部分を俺が対応。過程をケリーが発表に向けてまとめてくれて完成をする。

 結果


「エアハート君。君は二人の功績に比べて意見出ししかしなかったのかい?」


 憧れの教授からの厳しい確認に泣きだしてしまったフローラは一年スキップしただけの少女だった。

 落ち込んで泣くと言う子供の対処なんて知らないからカフェでケーキでも食べさせれば落ち着くかと思って誘ったのが運のつきで


「私、アヤトとだったら絶対上手くやってけれると思うんだ!」


 謎理論の完成に寧ろお前の言いたかった事を纏め上げたケリーに向かって言えよと言ったのは当然だ。

 



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