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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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駆けぬく季節は何時も全力前進 3

 久しぶりの郊外の家は緑がまぶしい小ざっぱりとした様子だった。

 一応古びた柵と門でぐるりと囲われている。フランスの城みたいに馬が脱走しないようにと作られた壁ではないので外からは丸見えだ。

 庭と邸を囲うように植えられた木々が枝を伸ばして目隠しをしている。

 広大な庭でも邪魔にならないから気にもならないが、実際木の下に行けばベンチを置いて昼寝をしたくなるほど夏場の木陰は心地が良い。いや、ハンモックでもいいかな?待て待て、ここはブランコもありだ。

 その結果テラスにカウチが置かれる事になった。

「この家椅子だらけだよwww」

 オリヴィエに突っ込まれたけど否定はできなかったので

「どれだけ増えるか楽しみにするが良い」

「椅子に占領される家www」

 まったくもってこの年頃のお子様はなんに対しても笑いのツボにはまるので微笑ましいと思う俺に

「アヤトは一体どれだけ年齢のサバを読んでいるんだい?」

 保護者のマイヤーに突っ込まれてしまう。

 俺の周りの平均年齢の高さを考えればとっくに還暦は超えているだろう。

 やだ、マイヤーといい勝負じゃん。

 ちょっと傷ついたのでそれは言わないでおこう……

 そんな思い出のある郊外の家のエントランスを進む。

 アプローチは車で入れるだけあって石畳に車のスプリングが悲鳴を上げているがそれでもフランスの城に初めて車で乗り込んだ時と比べると圧倒的に現代感を覚えるくらい許容範囲だ。

 なんせ、深山の家では車庫までコンクリ流す前までは完全なオフロードだったからね。ぬかるみでタイヤが空回りして進まなかった事を思い出せばでこぼこだなんて全然問題ない。

 植木はさすがにぎこちないけど形は整えられてあり、芝生は虎刈だけど許容範囲ではある。後で手直ししよう。

 車の音にジェムとクリフが出迎えてくれた。

「アヤトお帰り!」

「ケリーもいらっしゃい。部屋は用意してあるよ」

 久しぶりに会ったと言う様にハグをするイギリス人。日本人から見ればお前らハグとかほんと好きだな、なんて思っていればその後当たり前のようにハグをされる俺。

「アヤトは相変わらずハグをすると固まって面白いな」

 それがこいつらからの俺の感想。

「日本人はそんな距離詰めないから」

 ハグもチークキスもしないので慣れるわけないと言うもそのくせ温泉は裸で入るのにななんて言う彼らの温泉は水着着用が常識で、まっぱでご一緒する事はないと言う。いや、俺から言わすと風呂で水着はないだろうと思うもそれだと女の子と一緒に旅行に行った所で別々になったら意味ないだろうと下半身に正直な年齢のお子様の意見に納得する。

 この意見には年齢なんて関係ないけど日本人的には温泉旅行に一緒に行くと言う事は既に合意だと言う事をサスペンスドラマで散々学習しているので寧ろその距離こそスパイスでないのでは?と思うが却下されたのは見たい見せたいの若さのせいだと思いたい。

 決してバアちゃん仕込みのサスペンスドラマを繰り返し続けるテレビ事情だと思いたくはない。

 そして俺はケリーに連れて行かれた温泉で海パン姿になった所で全員をどん引きさせた。

 ほら、かなりマズイ所に怪我の痕があるからね。

 怪我のレベルとしてはそこまでひどくないけど場所が場所だけにケリー以外のお客様にもビビらせてしまう。いや、ケリーにもだけど。

 すかさずシャツを着させられてしまったがこの先俺の裸を見る人はこう言った反応をするのだろうと思うとニヤニヤしてくるのはそれなりにこの傷との付き合いの長さが物語っている。今となってはだいぶ傷の赤みが引いたなとか、薄くなったなとか思う位には愛着はある。勿論傷の由来は転んで草刈り鎌の所に突っ込んで行ったと言う、調べれば調べる程真実が分らなくなるくらいのネタで構成されている。

 真実何て当人だけが知っていればいいだけの話しなのだ。

 おかげで今もこの傷のせいで忠実であろうとする三兄弟を俺は気づかないふりをしてこき使う事で安心をするのなら使い倒すまでだとしている。

 先生には調子乗るなよと言わるけどそんなのは誰よりも俺が身に染みていると言い返したい。

 それはさておき、俺は到着してお茶を貰いながらケリーに話したようにジェムとクリフの一足先の卒業して修士課程を取る事を話す。カレッジで卒業に関る単位は十分に取得したのだ。むしろこのまま博士課程に進まないかとオファーを受けたのは一つや二つじゃない。博士課程に進むために二年以上のフルタイムの就職経験が必要となる。つまり、教授の下で助教授として働いてくれないかと言うお誘いでもある。

 学会、論文、発表会と忙しい教授を助けるゼミの生徒達。それをフォローする助教授がいれば添削も完璧と言う下心は見えすいていてお断りするのがベター。

 なのでカレッジの教師になりたい。ならば最低限教授の称号を持たなくてはいけないジェムの覚悟を俺は願うまま応援するのが良いのかどうかまだ判断が付かないままだ。

 なんせ、日本で博士号を取るのとイギリスで博士号を取るのは全くレベルが違う難易度を誇るのだから。

 さらに教授となる頃には人生の折り返し地点に居るだろうジェムに本当に覚悟があるのか是非とも聞かなくてはならない重要懸案の覚悟を聞く為に出された紅茶を熱いながらも一気に飲み干すのだった。


「本当にプロフェッサーになるつもりか?

 今以上に勉強をしないといけないし、この階級社会のイギリスでそれだけの覚悟は本当にあるのか?」

「……」

 

 カレッジに来る前に聞かされた話ではプロフェッサーなら市民階級の暮しではなくワンランク上の生活を求められる事になり、それに見合った収入よりも支出に耐えれるのかと改めて問えば答えが出せずに暗い顔しか出来ないジェムにこの答えは次回に持ち越しとなった。





 

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