わらしべ長者とは言わないけど頂き物はありがたく頂く事にしています 3
車の音にチキン達は勝手に茂みに逃げ込むのを見守りながら助手席に座る宮下の指示で駐車場の前に車を止めて
「よお、二人そろってこの時間に珍しい」
「俺はパートのおばちゃんと休みを交代したんだ」
「圭ちゃんも一緒だ!」
「あー、今日内田さんの車が来てないって聞いたから。差し入れって、休憩した後だったか?」
そう言ってなかなか買い辛いアイスを袋一杯に買ってきてくれた。
圭斗とはあまりなじみのない植田も水野も珍しくおとなしめだが、スマホを買ってもらって以来の再会に陸斗は嬉しそうに圭斗の顔を見上げている様子を葉山と下田のコンビは篠田が笑ってると驚きの眼差しで陸斗を見て居た。と言うか、普段は圭ちゃんって呼ぶんだなと先生と一緒にニヤニヤと笑ってしまう物の宮下が休憩の後ならおやつに食べてと冷凍庫に直行するオカンぶりは今日も絶好調だ。
「せんせーも久しぶり。陸斗の奴どうです?」
保護者らしく陸斗の様子を聞けば
「この一週間で随分成長したぞー。
どこぞの兄貴と違って真面目で一生懸命だから覚えも良いし今朝から高校生の勉強に取り掛かれる所まで来たぞ」
「陸斗頑張ったな……
綾人のあのスパルタによく耐えた」
何を思い出してか涙を流しながら頭をなでなでする横に冷凍庫から戻ってきた宮下と先生も力強く頷いていた。
「お前ら俺を一体なんだと思ってる……」
「鬼」
「悪魔」
「ドS」
宮下、圭斗、先生までそう思っているのかと頬が引きつってしまう物の園田、山田、川上の二年チームが大体あってると言って笑っていた。
つまりは俺はそう言う風に見られてたのか。なら
「容赦はいらないって事だな」
ひいいいいい!!!
楽しそうな悲鳴が聞こえたけどもう関係ないって言う顔をする卒業生と教師はカラカラと笑っている。
「綾人少し話が出来るならちょっといいか?」
圭斗の呼び出しに先生は行って来いと言ってくれたからリフォーム中の小屋へと向かってむき出しの床板の端に座れば
「先に大した事ない話からで、まずは病院代」
「あー、遠慮なく貰うな」
そう言ってスマホで連絡した通りの金額を封筒に入れて持って来てくれた。
「あと、土曜日にこっちに工事の人が来ただろ?その帰り道にうちに寄って来てくれて色々と手伝ってくれて、仕事代は綾人からもらってるって言ってたけど……」
「あの人達突然きて仕事してたから……三時ごろ帰るから早いなって思ったらそっちに流れたか」
「どうも内田さんとの一件を聞いたらしくって気を使って来てくれたらしい。
俺たちの事まで気を使ってくれた上にこんな風に良くしてくれたら内田さん達を恨めないよ……」
「圭ちゃんってば恨むつもりもないくせに」
宮下が不器用な圭斗の心の内を代弁してくれればバツが悪そうにそっぽを向く。
「内田さんは十分に頭を下げてくれたんだ。子供と奥さんと別れ別れになって。
なんでそうなったか判らないけど奥さんと離婚の話しにもなっているらしいし」
思わずぎょっとしてしまえば
「なんで?!」
大きくなった声に
「母さんから聞いた話だけど内田さんの奥さんなんか家のお金使いこんでたみたいなんだって。ほら、家の経理を一人でやってて……黙って実家に仕送りしてたんだって」
とは宮下。一緒に話を聞く為に教えてもらってなかったのか圭斗も驚きに目を見開く。それはつまり……
「思い当たる所でいえば帳面上の購入した物より安い物が使われていたとか水増し請求とかが思いつく所だな」
圭斗はよくあるパターンとしての例を上げてくれた。っていうか、何で思い当たるんだよとは突っ込めずにいるも
「柱とか見れば相場がわかるような物ではごまかしは利かないけど、ネジとか釘とか。問屋からの購入なら早々値段は変らないが、まとめて買うから安くとか終売の物を全部買うからとか交渉を重ねたり実際一個しか使わなかった物を購入した箱単位で請求したりやりようはいくらでもある。コンクリ流すのにどれだけ必要かなんて普通の人ならわかるわけがない。そうやってちょっとずつ工面して実家に仕送りしてたらしい」
重い溜息を零し
「別に実家も奥さんのお姉さんと一緒に暮らしていて仕送りしてもらわないといけないほど困窮しているわけでもないしまだご両親ともに働いていると母さん言ってた。
親孝行な娘とか、こんな田舎に嫁いでとか、独身だけどキャリアウーマンの姉への対抗じゃないはそんな思いもあったらしいよ」
まさかと言う話に圭斗も俺同様グロッキーになっていたがそんな話聞いた事なくそんな状況で内田さんは仕事をしていたのかと森下さん達でなくとも心配になってしまう。
そこに今回これだけの人がやってきた。ほんとの狙いは内田さんを励ましに来た。圭斗との関係も探りに来た。そう言った所だろうか。
「いい夫婦してると思ったんだけどなぁ」
「奥さん横浜生まれだっけ?寧ろ何があって来たって感じだけど」
「言えない闇があったんだよ。きっと」
「それにしてもだ」
話しをずっと聞いていた俺だけど埃まるけの板の上にゴロンと寝転んで
「こんな所で胃の痛くなる話聞きたくなかった……」
悶絶していれば食いしん坊の#烏骨鶏__俺の癒し__#がやってきた。




