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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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夏の深山を快適に過ごす為に 4

 駅には鞄に座って俺達の迎えを待つ二人が目立っていた。

 なんてこの田舎町に似合わない二人だろう、そんな俺の思いは

「あの二人か?妙に浮いてるアレ」

 アレ呼ばわり。

 そして俺と一緒の意見にぶふっと吹きだせば先生も納得と言う様にくつくつと笑いながら迎えに行く。

「よお、イギリスぶり」

「思ったより早かったーって、その恰好法事かなんか?」

 悪いとそこは育ちのいい叶野。すぐに忙しいのに悪いなと尊大な態度だけどちゃんと謝る事が出来るその差に構い倒したくなる。

「一足早くお盆のお経をあげてもらっただけ。もう終わったから気にする事ないぞ」

 言えばほっとしたかのように

「お久しぶりです。東京にいる間に連絡が取れればよかったのですが、フランス経由で戻って来るっておっしゃっていたのでいつ日本に帰って来てたのかわからなくて。ならいっその事こちらに居る頃を見計らって連絡しようと思いまして」

 忙しい日なのにすみませんと謝る柊を先生は面白そうな目で見ていた。

 さしずめこんな丁寧な子供始めてみたと言うような所だろう。

 珍獣じゃねーんだからガン見するなと言いたい。

「それよりも俺がいなかったらどうするつもりだよ」

 来るなら前もって連絡しろと言えば

「その時は軽井沢で待ってます」

 ちゃんと宿泊先は確保してあると言いたいのだろう。と言うか軽井沢に別荘あるんだ。ふーん。羨ましくないもんねと心の中で言いながらも

「今度招待してくれ」

「良いっすよ。夏休みの間は管理を兼ねた使用人も滞在してるからご飯も作ってもらえるので楽ですよ」

「うん、使用人とは金持ちの発想庶民には判らん」

「お前が言うか」

 フランスに城持ってるとかありえんだろと笑う叶野を見てまた先生の目が面白そうに細められていた。

 勉強はできるけどこう言うばっかわいい奴先生好きだろと言えばばっかわいいってなんだよと憤慨する可能に先生でなくても俺も笑い、柊は可愛いと言うのはどうかと思いますがと真面目な顔をして頷いていた。 

「まぁ、今回は無理なら無理で改めてって言う気持ちで観光に来たんだ。綾人と連絡が取れれば良い程度って言うのもおかしいけど、綾人がいるから見に来ようかってノリで来たんだ」

「その割には随分大荷物ね?」

 先生は二人の荷物をトランクに入れるように指示しながら駅のロータリーは狭いから早く車に乗る様にと指導する。

「まぁ、下心じゃないけど綾人の家に行く事が出来たら動画に会った五右衛門風呂入るつもりで来たから」

 それはいい笑顔での告白に先生はその無邪気な言葉に

「すっかり懐かれてるな」

 お前歳下には優しいんだよなとぼやくのを二人は少し悩んだ末にそうだねと賛同していた。と言うか何で悩んだんだよと

「俺結構優しくしたはずだぞ?

 晩飯食べさせたり同じ学年なのに勉強見たりすごく親切にしたはずだぞ?」

 俺の優しさを主張すれば先生は助手席に乗り

「ほら、話の続きは家に帰ってからだ。タクシーの運ちゃん達にどやされる前に行くぞ」

 なんて早く車を出せと言う先生は相変わらずひどい教師だなと言うしかない。

 さらにひどいのは俺が車の運転をして山道に差し掛かったと言うか山道しかないけど少し気を使う所に入った途端

「ねーねー、綾人イギリスで無事学生やってるー?

 ほら、こいつ超マイペース人間じゃん?しかも自分ペースの人様に言わせるとハイペースで誰も付いていけない俺様じゃん?

 迷惑してる奴案外多いんじゃね?」

 いきなりタメでなれなれしい教師の言葉に二人ともこう言った人種見た事ないと言う様に唖然としていたが

「いえ、確かに多少はハイペースですがおかげで俺達の英会話力も直ぐに修正せ居てもらえて本当人助かってます」

 何て良い子の柊の言葉にいいや違う筈だと言って

「こいつが人を気遣うとかそう言う優しさだけで教えたわけないだろ?それはもののついでって奴でこき使われたんじゃないか?」

「あー、フランスの城での事か?

 俺としてはああいった体験なかなかできないから楽しませてもらったけど」

「そうですね。芝刈り機とかチェーンソーとか初めてでしたが結構楽しかったし、後大ホールのお披露目会のお手伝いもさせてもらいましたが普段は参加する側なので裏方を見れたのはいい勉強になりました」

「柊よ、一度お前の生活を教えてくれ……」

 思わず耳を疑ってしまった。

「いえ、俺はいつも可能と一緒に行動しているだけのおまけなので」

「俺が嵌め外してお酒飲んで酔い潰れないようにお酒を取り上げるような係りだから参加したって言っても素直に楽しめないのは柊も俺も同じだ。

 あと裏方は主催側と雇用側じゃ忙しさは別物だから。雇用側にまわれたのはほんと良い期会だと思ってる」

 珍しく素直に言うも既に車道の両側は木と谷しかない民家のない地帯に差し掛かり、きょろきょろと視線が彷徨うのは本当にどこに行くのだろうかと言う不安からだろう。ほんとおもしれーなんてバックミラーを覗きながら笑っている間にも、きっと先生と言う教師と言う大人がいるので良い子を演じてしまう普段とは違う一面を面白く思いながらも、家に着いて先生の化けの皮がもっと剥がれて行く時こいつらはそれでも良い子を演じていられるのかそれはそれで楽しみにしている綾人だった。


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