わらしべ長者とは言わないけど頂き物はありがたく頂く事にしています 2
意外にも一抜けとなった陸斗は甘いお菓子と縁がなかったからか迷いなくチョコレートを選び、水野が一番大きい所を持って行けと真ん中の場所を取り分けてくれた。たぶんこうしないと陸斗は遠慮して縁っこの薄い奴からとるだろうとの配慮だけど二番に抜けた植田に自分で取れよとあしらった所でセルフサービスは始まった。
俺と先生はなぜか不人気のアスパラベーコンチーズポテトと言う謎の呪文のようなパウンドケーキを食べている。コショウがピリリと効いてこれはこれでありだなとほぼ軽食のようなパウンドケーキに舌包みを打つ。
「だけど水野のこれもこれが最後だと思うと感慨深いな」
先生がこれはいける、ビールが欲しいと喜ぶ辺り珍しいと思うも
「えー?冬合宿あるでしょ」
「お前専門の推薦は年内中に決める事が出来るぞ。大学受験は……お前本当にその学力で行けるつもりか?」
厳しい現実に昨日の夜先生と話し合ってかなり専門にぐらついているようだった。狙っている専門学校の推薦ならテストも面接も必要ないらしいが、その前に学力が足りなくて卒業が怪しいと言う状況に必死に勉強しているのだが……
「勉強に来るだけなら冬も来ればいいだろ。掃除係と飯炊き係募集してるぞ」
「それバイト代出ますか?」
涙を流しながら卒業したいと言う水野の成績はちゃんと卒業できるレベルであるが、去年これなら進級できるなと伝えてしまったためにだったら頑張って勉強しなくてもいいじゃんとまた最下層にご到着した水野に本当の事は言えない理由がこれだ。植田も何とか百番以内に入るようになった物のもともと百三十人もいない学年なのだ。せめて半数の内には入れさせたいと思うもこいつの場合平均の半分以下に落ちないように調整しているふしがあるので人生舐めてると損をするぞと忠告は既に何度もしてある。
「バイト代欲しけりゃ俺と一緒の時間に起きる事だ。雪かきもさせてやるぞー」
「雪かきぐらいなら問題ありません!」
飛びついて来る理由はこの狭い山間部でバイト禁止の校則は移動手段を限られている高校生には即停学と言う三年にとっては死活問題を発生させるからだ。
「どうせおばさんに村を出るならバイトをして生活費の一部に当てろと言われてるんだろ?」
「ういっす!しかもいろいろ入用になるから少しは自分で用意しろとも」
「まぁ、当然だな」
「せめて布団と机は欲しいので!」
それなりに頭の中で妄想は出来ているのか必要な物はリストアップしていると言う。
水野の頭だからたぶんザルなリストだよなと思いながら頑張れと言えば一年の葉山も下田もかっこいいなんて呟いていた。こうやって子供達は都会に憧れるのかと微笑ましく見守っているも水野達だって最初は香奈ちゃんの勉強をしている姿を見てから始まったのだ。最初こそはただ進級するために勉強をしていた二人だったが家を出てこの山間の街も出て生きて行く決意に時間はかかった物の決断ができた。最初こそ仕事を見付けてと言っていた物の宮下の仕事失敗談を聞いて慎重になる事を覚えたと言う。
「前に綾人さんに教えてもらったプログラムが面白かったから本格的に知りたいって言うか、単純すぎですよね」
あははと笑って誤魔化そうとしているがこいつは俺ではなく宮下に時折相談してパソコンを学んでいる。もっとも宮下も動画を作る程度の作業ぐらいしか知らないから時々植田と一緒に手伝わせて小遣いをやっていると言う。甘やかし過ぎだと注意するが、就職と言うか職業選択に失敗して今をなあなあに暮しているからこそ間違わないでほしいと宮下なりに気を使っているつもりらしい。
「まぁ、何事も始まりのきっかけは些細な出会いからだ。その代わりこの先はもうころころ変えれる年齢じゃないって事だけは覚えとけよ」
先生の人生相談で終わった所でさてお昼までもうひと踏ん張りと気合を入れるも車の音が聞こえてきた。
「ん?誰か来たぞ」
先生が今日も大工かと聞くも最近常連になった車に
「圭斗だ」
「あいつがこの昼間からとは珍しい」
事務所兼自宅のリフォームが大変で中々顔を出せない挙句に陸斗を病院まで連れて行ってもらって済まないとは話はしているけど預かるぐらい問題ないしと持ちつ持たれつって事にしてあるが、何のようだか想像がつかなくて首を傾げるしかなかった。




