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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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過密状態にご注意を 2

 病院舐めてた。 

 土曜の朝だと言うのに、まだ八時前だと言うのに既にロビーのベンチで座る所は無くなっていた。

 ありがたい事に風邪をひいても常備薬で何とかなる健康優良児だった為に先日数年ぶりに病院に厄介になった時は時間外だし、前回の診察はこの一団が去った後だったからすいていたわけで……

「遅くなってすまんな」

「予約の意味が解りません。人の多さに酔いそうです」

 陸斗と一緒に入ればう臼井先生が「ワシもそう思うよ」と賛同してくれた。いや、賛同するなよと延々二時間待たされてぐったりとした俺といつのまにか寝ていた陸斗の髪は変な寝癖が付いていた。

「まぁ優先するのは早くからくる患者の努力に報いる形だな。気持ち悪いのなら少し休んでいくか?」

「来客もあるので速攻で帰ります。それでも予約したのだから時間通り見てください。それぐらい余裕ある診察をしましょう」

「そして昼飯どころか飯も食べれなくなって眠れなくなる。医者が病めて行く理由だな」

「辞めるじゃなくて病めるんですねって、なんかすごく実感がこもってる気が……」

「話聞いてくか?」

「他に待っている患者さんもいるので遠慮します」

 即答する。重すぎて聞いてられんと看護士さんが銀色のトレーにピンセットやらハサミやらを乗せて持ってきた。

「とりあえず抜糸しよう。見せてごらん?」

「せめて見てから抜糸って言ってください」

 ブツブツと言えばピンセットで糸を持ってハサミで糸を切る。そのあとピッと引っ張って一つ目の抜糸は終了。

 髪の毛をピッと引っ張られるような感触に頬が引きつってしまうも注射よりは痛くないので騒ぐ理由もない。

 全部を抜糸して最後に消毒をし、注射の後に張る正方形の小さい絆創膏みたいなのをぺたぺたと這ってくれて

「何か変わった事があったらまた電話してから来なさい。

 救急車を出して戻ってくるまでで状況が変わるといけないからな」

「また何かあればお世話になります」

 そう言って陸斗と代わる。

 椅子に座って既にシャツを脱いで俺が診察を受けている間に看護師さんの手によって包帯も湿布も外せば毎日見て居るはずなのに大分綺麗になった肌にホッとする。

「やっぱり若いと治りも早いなぁ。

 これが五十年後、六十年後になると記憶にないのに痣が出来てなぁ?」

「先生物忘れ激しいですね」

「吉野の孫もババア同様口うるさいわ」

 笑いながらのやり取りに看護師さんも楽しそうに一緒に笑っていた。

「とりあえず酷くなってるわけでもないし、骨がくっつくのは時間が経たないとどうしようもない。湿布をまた出しておくから二週間後の……お盆の前に一度見せに来なさい」

 カルテに謎の暗号を書き、パソコンにも打ち込んでいく。

「はいお疲れさん。今日の診察はこれで終わりだ」

「二時間待って五分で終了。割に合わねぇ」

「だから皆さん有意義にロビーを活用してるんだよ。

吉野の婆さんもそうやっていい弁護士ひっかけただろ?」

「おかげで今もお世話になってます」

「そりゃいい客捕まえたもんだ」

 かかかと笑うも

「そういや陸斗君だが……」

「はい……」

 包帯を巻き終えてシャツを着た陸斗はいきなり呼ばれて身体が強張ってしまうも先生は見向きもせずに

「そろそろ包帯を巻くのも面倒になっただろう。

 病院の中のロビーの奥に売店があるだろう?そこに胸部固定帯が売っている。通販で探すのも良いがそこまで順調に治っているのならそう言う物に変えて自分で面倒を見て良いぞ?」

 そんな便利グッズがあっても使わせなかった辺り俺に状況を見せておきたかったと言う意図だろうが……

「だったら一度覗いて来ます。ネットにするかは値段と相談ですね」

「それなら確実に負けるな」

 一切割引のない病院の売店だ。勝負になるわけがない。

「腕もサポーターか何かあればそれでいいぞ。だけどまだ包帯でしっかり巻いた方が安心するならそれで構わん」

「ええと、まだ包帯にしておきます」

「吉野の家は山の上だから暑くないのが救いだな」

 山から下りたこの街中は立派に真夏日を迎えていて汗疹が出来るかもしれないが、山の上ならそこまでもない。むしろ夜中は暖かいぐらい。

「まだまだ当面は二人とも大人しく過ごしてなさい」

 その一言を最後に診察室を追い出され、代わりに次の人が入っていった。

 ああ、この僅か数分のために随分ともったいない時間を過ごしたと会計でカルテと処方箋を渡して掲示板に映し出される引き換えの番号札を呼ばれるのを待つ。

 そう。健康優良児のかかりつけ医の町の病院しか知らない俺は大病院と言うものがどう言うものかまだ知らないでいた。

 会計と処方箋を渡して三十分。やっともらった湿布を眺めて町医者のありがたさを噛み締めるのだった。





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