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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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たまには色々と仕掛けをしておこうと思います 1

 家に帰るまでが遠足です。

 吉野家では言われた事は一度もなかったが宮下の家では当然のように言われていた言葉で今回の大学文化祭参加と言う遠出にも使われての出立だった。

 言ったのは親ではなく大和さんだったが。

 ったく、俺達が道草ばかり食って家に帰らないとでも思っているのだろうかと、骨まで愛すべき烏骨鶏が待つ我が家に帰ると言う目的がある以上鳥目の奴らがウコハウスに帰れる時間に帰るのが俺の帰宅時間だ。出来たウコ達は多少遅れても文句は言わない可愛い奴らだがそこはミルワームでお詫びをすれば一瞬で忘れてくれる。鳥頭だからな。

 さておき、遠出の後だし一度圭斗の家によって圭斗と陸斗を車から降ろす。その時に岡野家に買った大学の学生さんが作った手作りソーセージやハム、道の駅で買ったチーズケーキを片手にお土産と持って挨拶に行けば


「お嬢、どうしても帰って来ては貰えないのでしょうか」

 老いた男性の声が聞こえた。

 来るだろうなとは思ったが案外早かったなと田舎らしく勝手にお邪魔させてもらう。

「帰る事はありません。今はまだ準備中ですがこちらで就職もしたし新たな仕事はもう始まっているのです。そんな無責任な事は私にはできません」 

「しかし、店長も足腰が弱って高所作業は無理ですし、副店長は作業用の資格をお持ちでないし……」

「安藤さんや他の方達だっているでしょう。常々言いたかったのですが、同じ資格を持つ間柄で私だけが体を張る謂れはないと思います。

 それに資格を取らなかった父の責任です。私並みに資格を持つ方を私の給料で支払って雇えば丸く問題は収まるではありませんか」

「いや、それが無理だからお嬢に帰って来てもらいたく……」


「それで月十万、諸経費補助に危険勤務手当なし、交通費自腹で実質五万で使いたい放題、逃げない方が疑問ですね」


「あ、綾人さん!お帰りなさい!」

「お邪魔してます」

「な、何だ君は……」

「実桜さん、悪いけどお茶貰える?陸斗は悪いけど凛ちゃんとお外で遊んでおいで。蒼さんはこれお土産」

「あ、いつもありがとうございます」

「大学生が作った手作りソーセージ、マジ旨し」

 手を伸ばして俺を止めようとした圭斗だけがフリーズしていたけど宮下は折角だからお土産のお菓子食べようかと言って実桜さんと一緒にお茶の準備をする。

 そして見知らぬ安藤と言われてた人は居心地悪そうにそわそわとして時計を見て

「じゃあ、私はそろそろ……」

 俺達の顔を見て帰ろうとするので俺が正面に座り

「まあまあ、実桜さんのご実家の職人さんでしたよね?

 わざわざ来てもらったのだから一緒にお茶しましょう」

「ええ、ですが……」

「まだ陽も高いし、もう少しぐらいいいですよね?」

 なんて言いながらさりげなく俺は上座に座らせてもらうのだった。

 と言うか実桜さんよ、お客様がお見えになったら上座に案内しようぜと心の中で突っ込みながらもお茶の準備が出来れば末席に岡野夫妻を座らせて、圭斗達は少し離れた台所のテーブルで待機してもらうのだった。

 居心地が悪いと言うか分が悪いと言うか。あからさまに周囲をきょろきょろとする多分実桜さんのご両親と同じくらいの年齢より少し上の男を前にお茶を一口すすって

「改めまして、吉野綾人と申します。

 彼らは岡野夫妻を雇った篠田工務店の店長と同僚になります。まだ出来たての会社ですがよろしくお願いします」

 ちょこんと頭を下げて挨拶をする二人に安藤さんとやらも軽く頭を下げての挨拶。ここは職人、しっかりと挨拶は出来ると褒め称えて置く。

「でも、え?ほんとに就職を……」

「はい。立ち上げたばかりですが株式会社としてしっかりと健康保険と厚生年金にも加入して頂いてます。

 あ、ちなみに僕は出資者として株を持たせていただいております」

 にこにこと実桜さんのその場しのぎの言葉でもなく法的にも何も問題のない内容だと言えば実桜さんを引き戻すのは無理だと理解してか肩を落とす様子は何をもって説得に来たのかと疑問の方が湧き立った。

「ただ、まだ本当に始動したばかりで収益が出てませんがとりあえず県の最低賃金から算出して基本給十七万をお支払してます。二人で単純に倍の金額。どう考えてもステップアップの為の転職だと思います」

 蒼さんは給料下がったかもしれないけど、まだ何も受注を受けてないので仕方がないと言う物。それに実桜さんのお給料も入れば今までの堅実な生活を振り返ると十分貯蓄が出来る金額だ。

「さて、そんな二人の心配は置いておいて、安藤さんでしたっけ?先ほど聞こえた名前でしたが」

「はい。申し遅れましたが安藤と申します。

 お嬢のご実家の宇野園芸店で三十年職人として働かせてもらってます」

「ご丁寧にどうも」

 何か面接会場のようになってしまったので俺は場をほぐす為にもお茶とお土産だったはずのチーズケーキを頂く事にした。




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