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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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再び 7

 死にそう…… それは俺も同じだ。

 折角食べれた物をと後悔しながらこれだけあれば味噌おでんどれだけ食べれたかと計算していれば

「あー、やっぱりだめになっちゃったか」

 ん?

 何か訳知り顔の言葉に全員が大和さんに注目を集めるも、大和さんは浩太さんからお玉を貰い受けて味噌を移すのを交代する。

「前に弥生ちゃんにちょっと物を置く棚を作ってくれって言われて作ったんだけどね。

 扉の前まで棚を作ったら入れないからって止めておいたんだけどね。ほら、ここ漬け物置いていたりした場所だから、不便だよって。

 だけど漬物食べ終えたからって勝手に棚を置いちゃって、しかも食器まで置きだしちゃってさ。

 出入りできないけどいいのって聞いたんだけどどうせ使わない物だから構わないって言って、ほんと弥生ちゃん頑固だよね」

 何て俺に意見を求められてもだ。

「その結果がその瓶三つ分の味噌と食器です」

「あー、きっと俺が漬物しか言わなかったから味噌の事忘れてたんだよな。直ぐに作っては適当な所に置くから注意はしてたんだけどね」

 あははと笑う大和さんは俺以上にバアちゃんの孫の如くこの家の謎を知る人だった。感心するけど尊敬は出来ないなと思いながらもだ。

「他にどこか置きそうな場所は知ってる?」

「まぁ、隣の納屋に置いたりしてたけど、綾人が綺麗にしてくれたから大丈夫だと思うよ」

 大丈夫と言われても不安しかないのはバアちゃんの困った所だから先に諦めておけばそこまでメンタルは削げられる事はない。

「じゃあ、この棚は大和君が作った物かい?」

 浩太さんが二人が外した材木を外に運びながら聞けば

「あー、プロの方に見られるのは恥ずかしい限りで。

 翔太が作ってるのを見て改めて知ったのですがただ釘を打つだけじゃだめなんですよね。学校の授業じゃこんな大物の作り方習わなかったので」

 すごい素敵な言い訳だと綾人は大和を尊敬してしまう。感動したと言わんばかりに目をキラキラとさせて見上げていれば周囲から咳払いが聞こえた…… そんな気がしたので無視をする。

「材木は納屋にいっぱいあるからそれを使えって、工具の使い方わからなかったからそれ全部がんばって鋸で切ったんですよ。翔太がデンノコ使ってるのを見て泣きたくなりましたね」

 と言う話しを笑いながら語ってくれた。

「それ何時頃の話しです?」

「あー、まだ一郎さんが生きていた頃だから、綾人と翔太が小学生の頃だね。

 亡くなった年だったから覚えてるよ」

 そうかと呟きながら

「ジイちゃんまだ生きてるなら何で内田さんに頼らなかったんだよ」

「ああそうだな、どうせ一郎の事だからこれぐらいの事だからって小遣い渡して宮下の倅にまかせたんだろう。ったく水臭い」

 ぶつぶつ言う鉄治さんだが旧友の生前に見せた小さな配慮にすんと鼻をすすりながら棚を外へと運び出していた。

 誰ともなく言葉を失ってしまった中で

「翔太、明日はここを直すからしっかりと仕事道具持って来い」

 粗方味噌蔵の棚まで外して手を洗っていた長沢さんの声が静かに響く。拒絶を許さない厳しい声は、きっとそう言う声で学んできた記憶からの物だろう。こう言った場でもその場を仕切る物としてこの空気を打ち払う様にやけに声が大きく聞こえたけど皆さん続きは明日と言う様に簡単に片づけをする中

「長沢さん、昔はここどうなってたのですか?」

 一応聞いておく。

 正直使い勝手の悪いこの食器部屋の隣にこれだけの二人で暮すには無駄に広い空間があれば他に使い方があると言う様に考えれば

「なに、この後付けの柱がなくってこの壁もなかったただの扉だったぞ」

 それは大きな扉だよなと思う。

 襖三枚分になるだろうかと思いながら標準サイズじゃないんだろうなと言う事は理解できた。

「この食器棚どけて壁壊して一つの部屋として使えますか?」

「まあ、昔がそうだったから使えるぞ。ただ、後付けの柱とは言えこれだけ家が歪めばこの柱は重要な位置になるが」

 考えて

「ではこの壁を抜いて、柱の反対側を壁にするのは?」

「問題ないが、暗くなるぞ」

 少なからず採光が入って来た事を思うもいつもは扉を閉めていたのだ。今更問題はない。

「ではそのように作り直したいので、内田さんもまたよろしくお願いします。

 あと扉が開かなかったので引き戸の方も良い様にお願いします」

 何気に歪んでいた扉を見に行く長沢さんのこれはダメだな。明日トラックが居るなとぼやく中

「浩太よ、山川に言って下見に来いって言っておけ。今ならまだ圭斗の所にいるだろう」

「いるだろうけど、そうなるとみんな来ると思うよ」

「来るなら来させておけばいい」

 長沢は人手があった方が早く終わると言うからそれなら明日来る人に何か料理を用意しておきますねと薄まった味噌の匂いが充満する部屋の中で飯田はいそいそと離れの冷蔵庫に向かうのだった。

 逃げる様に離れに飛び込む飯田と何やら電話をかけながら頭を抱える浩太さんにどうしたもんかと俺も今いくら手持ちあったっけと電子マネーではない現ナマを頭の中で数えながら少なくとも足りるだろうと計算する。何かあった時の為に一束ぐらいは常に持っておけ。急な支出の多い吉野家の嫁に教育される言葉の一つで後伸ばしにしないから信頼につながるんだとうるさく言われたけど一束って百万だよな、持ちすぎじゃね?って思ってたけど少なくともその教えに助けられているのでまた近いうちに引出に行こうと決めるのだった。





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