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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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壁越しの秘密基地 1

 金曜日になるとごく普通に家に帰ってくるような足取りで当たり前のように高山先生がやってきた。

 本日の俺の仕事(?)の為に朝から圭斗が陸斗を迎えに来てスマホを買いに行くと言って連れ出してくれた。帰って来たのは三十分ほど前で今はもう帰ってしまった圭斗の代わりに色々とレクチャーしながらまったりとしている。久しぶりに静かな一日だったと言うのに、烏骨鶏の鳴き声を近くで聞きながらの穏やかな平和はもう終わったかと腰を上げた。

 今日が工事が休みと知っているだろうに工事車両者が出入りしやすいように庭の奥に止めて当たり前のように土間から

「綾人居るかー?」

 縁側の隣の部屋で車を止める所から見て『居るかー?』も何もないが

「奥にいるよー。って土間からじゃなくっていつもみたいに縁側から入れよ」

 仕方がないなーとわざわざ迎えに行けばそこには高山先生と二人の男子が立っていた。

 思わず大きなカバンを持った二人を見て首をかしげる。

 予定では来週からではなかったかと思えば

「相変わらずやつれた顔をしてるな?」

「まぁ、燃え尽きて灰になった所ですよ」

 本日の勝負は負け。

 他で挽回した物の約二千万が溶けてしまった。やはりここのところ偶然にも目標があり勝ち続けていた所での目標達成と言う罠で気が抜けたのか久しぶりにやってしまったのだ。もうね、ほんとうっかりと言うか。そんなレベルで二千万消え去ったのは泣くに泣けない今の俺の状態。もっとも本当なら七千万近く逝ったのだろうから、改めてやる時は集中を切らさないように注意をしよう。そして来週は挽回してやると誓うもこう言う惨敗の日もあると樋口さんに報告して泣きつく事にする。

「で、予定より早くない?」

 先生の誤魔化そうとした言葉を修正機動する。音もなく舌打ちした事にも華麗にスルーしてやればお供の二人は苦笑する始末。先生が言っていたスケジュールでは来週の月曜日から三泊四日の合宿となるはずだったのだから二人とも頭を下げて

「綾人さんすみません。俺どうしても大学に行きたくて」

「俺は一人暮らしが出来るようになりたいです」

 志の高さと謙虚な申し出にがくんと項垂れてしまった。

 二人の熱意はこの田舎から脱出して都会、もしくは地方都市へと……と言う胸に膨らませる期待は隠しても丸見えなコンビは去年どころかこの前の春も冬も顔を合わせている一年生の時からの常連だ。

「その前に卒業できそうなの?」

 今年も都会に夢見る奴がいたかとウンザリとしながらも先生に聞けば

「とりあえず春の長期合宿でこの夏は赤点一つもなしで夏休みをもぎ取ったぞ。だから遊ぶ前に捕獲して連れてきた。

 この家のルールや生活を知り尽くしている二人ならお前の面倒も陸斗の面倒を見させるにもちょうどいい」

 先生がそう言った所で部屋の奥の縁側にいる陸斗をこのコンビは見つけてしまった。

 きっと顔を青ざめてふるえているだろう様子の想像は容易い物の二人に上がれと言って土間から陸斗の居る縁側の部屋へと向かい

「篠田陸斗で俺の友達の弟。兄貴の圭斗って知ってるか?先日こっち戻ってきて街に拠点を移しに帰ってきたが事務所兼自宅は今は改築中だから怪我した俺の世話も兼ねて預かっている。

 そして陸斗、この背の高い方が水野彰宏、眼鏡が植田祐樹。

 三年間この合宿の常連の先輩だ」

 そんな簡単な紹介に能天気なまでの明るい笑顔の水野は

「まだ小っちゃいな、一年だろ?」

「見ればわかるだろう」

 眼鏡キャラなのにインテリキャラじゃない植田はただのゲーマーだ。

 ゲームのイベントに行くためにこの田舎を拠点としてではなく、せめて新幹線が通る地域に行きたいと言うしょうもない夢と希望をもつ人生をなめてる十八歳だ。人の事は言えない俺だけど。

「それよりも噂に聞いたけど怪我はどうなってる?

 困った事があったら言えよ」

 デリカシーのなさに先生は頭を痛そうに手を添えて居る物の

「大丈夫です」

 いきなりそんな会話ですっかりビビってしまった陸斗はまた俯き加減になってしまった。と言うか、やっぱり陸斗の一件は全学年に広まっていたかと悩んでしまうも

「そう言わずに俺達にもお世話させろよ。薪割竈の火付け洗濯物やる事はいっぱいあるからな」

 カラリと笑う水野に戸惑う陸斗を少しだけ面白く眺める。きっとこう言った人畜無害な人間を知らないのだろうと。でもデリカシーのなさにグサリとくることを平気で言うから要注意。

 そこは頼むと植田に視線で合図をすれば、すっかりコンビのようになってしまった相方は仕方なしと言う様に頷いてくれた。植田やればできる子なのになぜにゲームにのめり込むとこの子の未来も心配になってしまう。

 長時間モニターを見る事が苦にならないならとプログラミングを教えてくれる専門学校で資格を取ろうと他県への進学を進めていて親はそう言う事ならとこの近辺にはない学校なので承知してくれた所だと先生は言う。そんなお年寄り向けパソコン教室しかないこの田舎からの脱出計画を提案するも当の本人はゲームだけをしたいとほざく始末。eスポーツとかあるけどお前のレベルじゃ賞金には全く届かないからと一括して諦めてくれたけどゲームはプレイするだけがすべてじゃないぞと言うもコスプレも面白いよなと言う始末。うん。俺が話しているのはそう言う事じゃねぇ。

 とりあえずうまーく丸め込んで進学と言う理由で新幹線の駅のある地域の専門学校のパンフを集めていると先生は言う。先生、あんたが集めているんか……と呆れるも、これも立派な教師の仕事でパンフも立派な資料だと言いきってくれた。

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