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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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さあ、始めようじゃないか 9

「圭斗さーん!綾っちと飯田さんに子供が産まれたってマジっすかー!!!」

 さすがにそんなぼけを園田は言う事はなかった。むしろ止めようと奮闘していたが川上は楽しげに陸斗と供に葉山と下田、そして最近では強制的に連れまわしてる日下一樹と共にやってきた。もちろん山田は振り返った綾人のいい笑顔に逃げ出したい様子だったけど、そこは園田と下田によって妨害されていた。

 ただ有難いことに山田の元気な声は残念な事に大工チームは耳元の雑音で聞こえなかったようだったが、散歩を終えた凛ちゃんと一緒に転寝をしていた飯田はその声が聞こえて目を覚ました物の聞こえなかった風に寝たふりをして、たまたま綾人の側に居た宮下と圭斗の顔が盛大に引き攣ったのを綾人は見逃さなかった。

 さりげなく二人の腕に自分の腕をからめてにっこりと笑う。

「綾っち言うな、っつーか凛が起きるから静かにしろ」

 普段なら凛ちゃんマジ天使ー!!!

 何て声を上げて悶える綾人だが女性として自覚の出来た相手には一切関心を向けない。母親からの愛情を拒否する綾人の女性を受け入れれる年齢は就学時前と言う、聞き方によってはかなりまずい言葉だったが性差を感じた瞬間拒絶反応が出るのだから仕方がない物は仕方がないと言うくらい毛嫌う傾向にある綾人の実桜さんに対する感覚は

「職人さんに向かって性別を問うのは失礼でしょう」

 なんて言う呆れるくらいの効率主義にはそれでこそと思うしかなかった。

 ちなみに実桜さんは今この街中では広大な坪数を誇る圭斗の家の庭の木を総て切り整えている。かれこれ二時間ほど休みなく働いて、後は門の前の植木を整えるだけと楽しげに鋏を振るっていた。

 ちなみのご近所さんも綺麗にされる庭木に窓からちょこちょこと覗いていたが、実桜さんと顔を合わせては何やらお互いヘコヘコと頭を下げながら手を止めての談笑。営業上手なのはフランスでも言葉足らずでこなしていた実桜さんだからそれも仕事のうちなのだろうとその背中を眺めて当分帰ってこないなと綾人は実桜さんの仕事の段取りを変更する。

「おまいらそろそろ中間だけどこんな所でうろうろしてていいのか特に受験生どもよ」

 今だ腕をからめ捕られている宮下と圭斗は嫌な季節だなぁと顔には出さずに俺達が高校三年生だった時の今頃を…… 思い出してそっと涙をぬぐった。

「一応綾っちのプリントは繰り返して解いてます」

 優等生な園田とそれに続くように懸命に頷く陸斗といつの間にか洗脳済みの一樹。可哀想にと山田はそっと視線をそらすも近頃授業に自信が付いて来たのか顔を上げてクラスの少数派同士とつるむようになった一樹は段々と友達の範囲を広げていた。とは言え主に園田と陸斗を崇拝する人物に寄るが、それでも三年代表と二年代表の二人と仲の良い一樹は今の所気付いてないが一年代表となりつつあった。

 この学校では学年順位再開が返り咲いて学年一位になる事が毎年起きている事なのでなんとなくまたかという様に不正も何も疑う事なくスルーしている。なんせ現況と言う人物を知ってるだけに何も言わないでいるのが現状。下手にほじくり返せばしっぺ返しに会うのは目に見えていて、さわらぬ神にたたりなしという言葉をよく知る世代の教師によって若手の、そして綾人を知らない教師にあいつと関わる人間には下手に関るなと言いくるめられていた。それは校長からの言葉でもあり、綾人によって教師としての矜持を散々踏み倒されて蹴飛ばされて教員免許しか手元に残らなかった者達からの言葉でもある。

 綾人は高校生と言う貴重な三年間を教科書を読んだだけという冒涜にも近い行為でその貴重な時間を投げやりに過ごして来たけど、学年一位と言う地位は一度も誰にも譲らなかった。そしてその年の高校生の順位も常に片手程の位置をキープしていた。簡単な記入欄ミスと言う程度のミスしかしなかったがそれでもミスには変わりなく、その時もいっさにの勉強はしなかった。曰く

「答えが分るのに計算する必要があるのか」 

 彼の成績を落すには実技と言う隠しようもない努力のたまものがモノを言う世界だけの中で、だけどそれをクリアする方法を見に付けた綾人に教師はもう一々真面目に付き合う事は辞めていた。

 本当に迷惑な生徒だったと三年時の担当だった高山は今も思う。

「所で綾っちは今何してんっすか?」

「綾っち言うな。

 とりあえず今は役立たずだから凛ちゃんの寝顔を記憶に留めようと……」

「綾っち、それマジアウト」

「陸斗、綾っちと凛タンの間に入って視界をシャットアウト」

「凛タン!なにそれかーわーいーいー!

 りんりんも良いと思ったけどちょっとNGワードだからね。凛タンも良いけど、ああ、だけどやっぱり凛ちゃんだよな」

 わけのわからない持論を繰り広げる綾人を高校生達は見てはいけませんよと言う様に安全圏から屋根を打ちなおす様子を眺め

「なんか懐かしい光景っすね」

 葉山の言葉に

「だけどバイト代が出ない状況、とりあえず宿題とテスト対策するぞ」

「っすね」

 園田の言葉に下田も頷く。

 この人数と職人の数に対する仕事の数に手を出せる場所はなく

「お前ら、いつの間に仕事に対して潜り込める場所を見つけるようになった」

 うわーと顔を引きつらせる宮下を背に圭斗が呆れていたが

「そこは綾っちの弟子なのでスルーしてください」

「何だそれ、綾人を出されると総て丸く収まるその理由は」

 頭を抱える圭斗に誰もが心の中で呟く。

『誰よりも圭斗さんが毒されてますよ』

 陸斗ですらそっと視線を反らせて眠る凛ちゃんの横で目を閉じて寝たふりする辺りあまりほじくらない方がいいと思う綾人の性癖は烏骨鶏を与えておけばいいんじゃね?と言う所で高校生ズは纏めるのだった。




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