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古民家生活憧れますか? 1

 今日は来客のある日だった。

 何でこんな田舎にわざわざ来るのかと思うも趣味がアウトドアで、長い事フランスに修行していたからこう言った古民家に憧れもあるらしくたまたま知り合ったこの環境が理想だと、遊びに来るようになった人だ。

 その人は飯田さんと言ってフランス帰りのジビエ料理を学んできたシェフが自ら解体して捌いて行くというワイルドな人だ。

 うちにはジイちゃんが趣味で猟をしていたから設備は十分にある。とは言ってもコンクリの部屋と水道、ステンレスの机があるだけだけどね。俺も一通りできるけど好き好んでしたくもないしするきもない。

 なので飯田さんがいくつか捌いてくれたうちの一羽を俺が美味しくいただく。

 猟友会の人は飯田さんをライバル視するのは仕方がないと言う物だ。

 とは言っても持って帰るのは月に一羽で飯田さんはレストランでメニューの研究に使ってレストランの従業員と試食しているという。

 お客様に料理として出すにはウチの烏骨鶏達は不適合だから。JIS企画とか生後何日とかまったく不明だし食べる為に予防接種もしていない。鳥インフルエンザになった時は処分しないとなと思うも生憎近くに養鶏所もなく烏骨鶏をくれた家が一番の要注意と言うか気が付いたら鳥小屋が潰れてなくなっていた。

 兄貴の嫁さんが嫌がってとか、まぁ、実家暮らしの二男坊の辛い所だなとたまには触れ合いに来いと言ってあるが、ペットのように育ててた奴らと草刈り要因でほぼ野生化した奴らじゃ愛想が違い、早々に触れ合いに来る事は無くなった。

 つまり我が家の烏骨鶏はなんの検査もしてないし育てる環境も飲み水すらなんの検査を通してないつまり「自己責任でよろしく」ってやつだ。

 嬉しいことに問屋で卸してもらう烏骨鶏より肉の弾力もすごくて臭みもなく脂まで甘いと猟友会の爺様達には好評だ。

 飯田さんがいつも品定めしながら烏骨鶏を見てここは鶏には最高の環境だと何位大して言っている事かは全くわからないけど、ある程度増えると引き取ってくれる人として俺は認識している。


「そろそろ来るんだっけ」


 夏の早起きの太陽を水平に見てのんびりしてられないと準備を始める。

 飯田さんが務めるレストランは水曜休み。火曜の夜に高速を飛ばして街灯のないこの山奥までやってくる。

 今はまだ明るいからいいけどあまり雪が積らないとは言え冬の雪道を毎週のようにやってくる執念マジその気力リスペクト。

 仕事が終わる頃は夜の一時二時なのにそっから高速飛ばすってどれだけだよ。ちゃんと寝てから来いよと思うけど、今の季節なら俺が朝食食って雑草処理班を解放させる頃飯田さんはやってくる。そんでもって寝るんじゃなくって川辺のクレソンを摘んだり、畑の野菜を物色したり長い事放置されていたワサビだなの世話をしたり、烏骨鶏の卵でオムレツ作ってくれたりして昨日の風呂の残り湯でさっぱりしてから俺は頼むから寝てくれと布団に押し込めるまでがお約束だ。もっとも三、四時間で起きてくるのだからまじゴリラって思ったりしている。見た目はドーベルマンみたいな大型犬だけどね。なんだよ身長185センチってコックに必要なのかよと三十歳の年上相手なので心の中で突っ込む俺は170センチもない細やかなひがみだ。

 さて、そんなワンコがそろそろくる時間だと思えば遠くから車の音が聞こえた。

 烏骨鶏達も車の音に反応して小屋の中に行ったり草むらに逃げ込んだり木の枝にとまったりと性格が現れるなと感心する。

 しばらくもしないうちに俺が道路からコンクリを流して作った通路にわざわざこの山道を走りやすい車に買い替えた飯田さんが現れた。

「おはようございます。今日もお世話になります。これオーナーが残り物だけどって持たせてくれて」

 真っ白の四角い箱をもらって早速中身を見ればイチゴやマスカットをふんだんに使ったタルトが箱に詰めれる限り詰まっていた。

「おはようございます。大してお構いできませんが好きなようにくつろいでって下さい。後オーナーにもありがとうございますって伝えてください。

 こんな山奥だとケーキみたいな文明を口にするのは難しいので嬉しいです」

「ありがとうございます。お伝えします。では早速……」

 既にお前子供かと言わんばかりにウズウズしているいい大人はさっさと電気柵に囲まれた畑へと入って行った。

 その背中を見て先に荷物を下ろせよと毎度心の中で突っ込んでるのを飯田さんは知る由もないのだろう。

 その背を見送り俺は小屋に居座っている烏骨鶏達を小屋から追い出して小屋の掃除をする。

 そして集めた鳥フンを刈った雑草や木の葉を集めて作る堆肥の中に入れて混ぜる。

 バアちゃん流だけどウチはずっとこんな感じだからいいんだよと言うアドバイス通りにやっているので本当のことは知らないし美味しい野菜ができているからまあその辺の細かい事はいい。

 その後は水路を開けて水撒きの時間。飯田さんを寝かす頃には水路は止めないとこの季節せっかくの野菜がダメになる。とは言っても天気予報が言うのは最高気温二十九度なので暑いなあと言えば飯田さんに「東京は三十五度ですよ」と産まれた故郷の話に苦笑する。

 そんな合間にラジオからラジオ体操が流れてきた。

 テレビの受信が悪いからとラジオをよく聞いていたバアちゃんの生活習慣はテレビが見れるようになってもしっかりと俺に受け繋がれていて、俺は草刈機を持って道路を覆い隠そうとする雑草を刈るかとスイッチを入れた。


 

 


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