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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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心は広く持ちたいと言う事を願っております 1

『先生、短い間だけどお手伝いありがとうございました』

 感謝を表すように深々と頭を下げれば

『ねえ、綾人。綾人が効率主義なのせんせーよーく知ってたけど。

 十二時間飛行機に乗って何一つ観光してないのにさようならって何かひどくない?』

 今日は先生が帰国する日で、飯田さんが空港までお見送りをしてくれる予定となっている。俺はこれからカールと一緒に先日行けなかったドイツに行く事になっている。

『別に遊びに誘ったわけじゃないからいいじゃん。

 それに飯田さんから聞いてるよ?遊ぶ暇ないからって先にお土産を買ったって。先生だってその気なのに今更文句言わないでよ』

『うん。判ってた。先生は綾人の事理解してて綾人も先生の事ちゃんと理解してくれてた。

 嬉しいはずの出来事なのに何でこんな虚しいんだろうって綾人の成長に先生ちょっと涙が出てきちゃった』

『そんな先生の為に植田達が五右衛門風呂準備してくれてるってさ』

 言いながらも先生にご実家と宮下家と植田達に渡す土産を差し出す。

『土産用にこっちだとソーセージが缶詰めになって売ってるの面白がるだろうから帰ったらみんなで食べて。この瓶のはパテだからそのままでもおいしいけどパンに塗って食べて』

『せんせーね、綾人のそんなクールな所好きだけど、ここは感謝とか敬いとかそう言うのが優先だろ?!』

 涙を流してしがみ付きながら先生もっと遊びたい―!と喚くのを無視をして

『飯田さん、悪いけどまた留守頼むね。俺は明日には帰って来る予定だけど、先生を送った足で圭斗達を連れてくる案内お願いします』

『はい、任されました。

 一応俺の車だけじゃ荷物運び切れないからオラスの息子さん達に応援したので任せてください』

『綾人お前圭斗達まで巻きこんで。そりゃあ何かあった時の為にってパスポート取らせたけどお前の手足の代わりにさせるために取らせたんじゃないからな』

『判ってるよ。ちゃんと観光に連れてって遊びに行かせればいいんだろ?』

『綾人さん、その優しさちょっとでいいから先生にも分けてください』

『次回の時にいい場所探しておくね』

 誤魔化すようににっこりといい笑顔をしておく。

 飯田さんは圭斗達の着陸予定時間に応援をお願いしており現地集合としてある。入国手続きの間に合流しようとなっているらしいのでそこはお任せしておく。そして当然の如く綾人から報酬が出るのでオラスの息子さん達は運よく休日なので良い顔で手伝うと言ってくれたと言う。今年の干支のお年玉袋に入れて準備をして飯田さんに預かってもらう。日本らしいアイテムに飯田さんも笑ってくれて、俺が留守の間にしてほしい事を申し送りをしておく。

『でもほんといいいのかな?』

 綾人はオラスの息子さん達とお互い顔を直接知るわけじゃないのにと言うも

『俺も何度もお世話になってますし、それ以上にお世話をしたと自負してますから、その借りを返してもらうと思えば問題ないですよ』

『いや、なんだかすごい問題を聞いた気もするけど……』

 何故かドヤ顔の飯田さんにそこはあえてつっこまずにお願いしますとお任せをする。

『では、先生を送ってきますね』

『お願いします……』

『いやだー!せんせーだって観光したいー!!!』

 なぜか満面の笑みで先生をワイン樽を軽々担ぐその腕力の力押しで先生を引っ張って車の後部座席に放り込んでエンジンをかけて

『では行ってきますので綾人さんも気を付けてくださいね』

 颯爽と車を走らせるのだった。

 あまりに名残所かあっさりではなくあっけに旅立っていく先生を見送っていれば

「あの二人は仲が悪いのか?」

 オリオールのどこか呆れた声に

「同族嫌悪って言うか、キャラがかぶっててマウントの取り合い?

 いざとなったら俺の知らない所で連絡取り合う位には仲はいいよ」

 そう言う物なのか?と言う様にオリヴィエは頭を傾けるもそこでタクシーが到着した。もうほとんどお抱えタクシーと言うようなご近所さんのタクシードライバーさん。

 俺は鞄を持ってタクシーに乗り込み

「オリヴィエ、オリオールの動画戸惑っていたら手伝ってくれよ?」

「もちろん。ご飯が温かいうちに食べれる為なら協力は惜しまないよ」

 リヴェットまで顔を反らして笑い

「あと、昨日も言ったけど明日からバーナード達が工事に入るから。

 向こうのキッチン、こっちのキッチンの使い勝手はオリオールの使いやすさにかかってるから任せるよ」

「ああもちろん。離れが終われば使い心地を兼ねて完成披露をしよう。

 近所の友人のマイヤーが是非お祝いをしたいと言っている。沢山料理を作ってこの城の再生となる様に友人方も招待しても良いだろうか?」

 ああ、これは既に約束を取り付けられているのだな?なんて、多分反論できなかったんだろうなと思うも

「それと今日からお客さんが来るので食事のお世話をお願いします」

「言葉は判らないがカオルもいるから任せてくれ。あとスマホの自動翻訳はほんと便利になった」

「確かに」

 思わず頷いてしまうのは全く知識のないフランス語なのに山奥では高校生達がスマホ片手にオリヴィエとたどたどしくも会話を成立させていたのだ。あまり優秀とは言い難い自動翻訳だったが、それでも大体あってる、それと勢いで何とか目的を達成したのは奇跡だろうか。

 動画には俺が丁寧に訳した言葉の字幕を張ったので大変な内容の会話になっていたがそれでも目的を無事達成したのは目標が全員一致していたからとしか言えない。

 まぁ、そこまでは大事故にならないと信じたいしバーナードが連れてくる大工さん達にも日本から見学したい人が来ていると説明して、良かったら使ってくれとも言ってある。

 体験に勝る経験はない。

 そこは同じ職業の人同士バールで語り合ってもらえればいいと思ってる。

 ヤバい集団が出来上がりそう……

「じゃあ行ってくる。

 オリヴィエも煩かったらマイヤーの家に避難しろよ」

 手を振って走り出したタクシーが麦畑の道から脱出する所で代わりと言う様にバンが何台も連れだってすれ違う。間に合わない事は先に伝えていたが、これならもう少し待っていればよかったと思いながらもやがて辿り着いたパリの駅にはすでにカールとバーナードが待ち構えていた。

「お待たせ」

 二人に手を上げて挨拶をして

「バーナード、来る時大工さん達とすれ違ったよ。随分気を使ってくれたみたいでありがとう」

「なに、息子に頼むと任せてきたからな。打ち合わせ通りなら私もアヤトもいなくて充分。それに今の時代連絡を取るのは容易いから心配はいらない」

「バーナードの息子は本当に優秀だから信頼しても大丈夫だよ。

 だが、我々にはアヤトが国に帰るまでに出来る限りの事を教えてあげたい。

 今日はストラスブール経由でフランクフルトに行こう。ここも見ごたえのある建築物がたくさんある。まだまだたくさん改築しなくてはいけない城ばかりだからな。少しでも参考になればいい。ところでドイツ語は?」

「ちゃんと勉強してきた。発音は怪しいかもしれないけど実戦で学ぶよ」

「それは頑張った」

 あまり期待してないかのような顔でポンと俺の肩を叩いてさて行こうと笑い、俺達は約四時間の電車の旅を楽しむのだった。


 



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