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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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木漏れ日が差し込む白い部屋で 1

 朝オリオールさんの作る朝食を頂きながら何だかなーとこの食卓を眺めていた。

 飯田さんも手伝ったと言う様に美味しいご飯の匂いを纏わせながら起こしに来てくれて、昨晩同様の顔ぶれにここは一瞬どこだったかと素直にねぼける事にして置いた。

「ほら、時差ボケしてないで温かいうちに食べましょう」

 現実逃避はさせてくれないらしい。

 出されたパンと野菜がたっぷりのシチュー。野菜をじっくりと焼いてスクランブルエッグを添えて、なかなかどうして烏骨鶏の卵が恋しいと思うのは単なる卵の味を知ってしまった味覚が訴えかける贅沢だ。

 脳内が記憶する味覚と実際味わう味覚との差に違和感を覚えていれば

「何だ、アヤトは卵が嫌いだったか?」

「好き嫌いはいかんぞ」

「子供は体の為にもしっかりと食べないと大きくなれないぞ」

 クソジジイどもは揃いも揃って朝から俺をイラつかせるのが上手いらしい。

 俺の不機嫌の理由に気付いてか

「オリオール、綾人さんはもう立派な成人だし身長はもう伸びません。好き嫌いはおばあ様がちゃんと育てて下さったので出された物を食べない真似は致しません。

 それに卵料理は好きな方ですが、この卵がいつも食べている卵より味が薄いので不満なだけです」

「飯田さん、それを正直に俺の前で言われると複雑なんだけど」

 俺のコンプレックスな所をそれだけ堂々と紹介されるのってこれは何と言う嫌がらせかと思いながらチクリと言えばすぐにあまりのぞんざいな紹介だった事に気付いてくれたようですみませんと謝っていってくれるも

「若い若いと思ってたのにもう大人か」

「カオルを預かった時は子供だったがもっと大人びていたからな」

「俺、外の時の飯田さんよりも年上なんですが」

 二十三歳だと言えば三人とも大げさな悲鳴とポーズをとって頭に手を置いて

「通りでこんな小さな子供が旅行が出来るわけだ」

 わけのわからん感想を無視してスープを頂く。

 うん。こっちは舌に馴染のある味で安心すると言う様におかわりを貰う。

「で、出発は何時頃に?」

「一応朝一でエドガーがここに迎えに来る事になっている」

 と言った所で車のエンジン音が聞こえてまさかのタイミングでチャイムが鳴った。

「ああ、そう言えば出かける前に打合せするんだっけな」

 思い出せば折角の料理だが味わう前にガツガツと腹に収める。皆さん微妙な顔をされてますが、自慢じゃないですがオリオールさんの元に残った最後の弟子にしっかりとこの舌は調教されてますのでこの程度のお料理は週一で堪能させてもらっている故に慣れたお味。ガキのように味わう前に満腹を満たせてもらいますと食べつくす。

 ふむ、足りないな……

 なんて事は言わずに食べ終えたタイミングで迎えに行ってくれた飯田さんがエドガーさんを迎え入れてコーヒーをお出ししてくれていた。

「アヤトおはよう。昨日の今日で、すごいな……」

 キッチンが使えるようになったとか、視線がオリオールさんに釘付けだとかいろいろ俺同様思う所はある物の

「すみません、顔洗って来るので少し待っていてください」

 使える部屋はここと俺が巣に決めた部屋だけなのでそちらに来てもらうと着替えをお見せしなくてはいけない罰ゲームなので皆さんの食事風景に居心地悪くもここで待ってもらうとする。

 シャワーを浴びる前に寝たので着替える前にざっと浴びて身支度を整える。

 そして再びキッチンに戻ってこれば……

「アヤト、ご馳走になってるよ」

 エドガーは何故か朝食を食べて待っていた。

 何してんだこの人と思っていれば、俺の感情の乏しいと定評のある表情から飯田さんは何かを察して片づけを始めてくれた。年寄りよりもこう言うのは若い方が空気を察してか食事のスピードが上がり、ジジイどもが食べ終わる頃には何とか食べ終える努力をしてくれた。

 その後は飯田さんが三人に一度帰る様に説得してくれて、やっと打ち合わせをするのにふさわしい静かな空間を確保するのだった。

 口元を拭うエドガーはまず俺にご馳走になった事を感謝して

「さて、まずはお知らせしたい事があります。

 あれから事務所に戻った所、あちらから親族の同席を求められました。一応遺産と言う試算になる予定の物だからと仰られましたが」

「想定内。別に構わないよ。って言うか、拒否しても来るだろうからそう言う事なら見える場所に居て貰う方が安全だしね。

 それと俺の方も彼、飯田さんを連れていくから」

 そんな俺の返答にエドガーは器用に右目側の眉毛を跳ね上げて

「なかなか肝が据わってるなー?

 彼はボディガード?言いたい隠しているけど?」

 なんて茶化すも

「一度遺産相続で殺されかけられた体験をするとこれぐらいの度胸は付くさ。

 因みに彼はボディガードでもなんでもありません。

 ただ、ジビエなんかが大好きで、狩りなんかも嗜むシェフです」

 事実を並べたが聞きようにはとても怖い事を連想できるワードにエドガーは一瞬呼吸を忘れたかのように飯田さんを見るも、飯田さんは俺がこんな紹介の仕方をするのはいつもの事なのですっかり耐性をつけてにっこりと笑って黙って俺に緑茶を淹れてくれた。

 知らない事はないだろうが抹茶入りの深蒸し茶は今のエドガーさんにはそれはそれは毒々しい色に見えるようで、俺が息を吹き付けて飲む様子にそれは本当に飲んでいい物なのかというような視線でおかわりを貰わないようにゆっくりとコーヒーをすするのだった。 




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