震える足が止まらぬように 9
マサタカに付いて来てもらいながら町を散策した。と言っての家の近く辺り。古い街なので歴史を重ねた神社仏閣と言ったものが見れたし、ちょうど学校が終わったのか友達と歩いて帰宅していた陸斗と会って友達を紹介してくれた。
陸斗の友達なんてと思ったものの、彼らも綾人が勉強を教える教え子であの山の家に足を運んで草取りの手伝いをする仲間だと教えてくれた。
急に仲間意識が芽生えた。
ではなく、一人だけ制服が違う子がいたけどその子は中学生で、今から陸斗の家に行って勉強会をすると言う。
何でもテストが明日からだと言って…… 俺には関係ない世界の話しだと思いながらも羨ましく思っていればポンとマサタカの手が肩に乗せられた。
「じゃあ、勉強の邪魔になるし、綾人君も待ってるから行こうか」
陸斗と俺に説明すればまた今夜も来るだろ陸斗に後でねと手を振るも
「綾っち街に来てるの?!」
ソノダと言ったかこの中のリーダー的なヤツが驚きの声を上げた所でマサタカもそうだと頷き
「俺達は檜風呂にお湯を入れてるからその間街をぶらついていたんだ」
「じゃあ今日の予定は変更で綾っちに会いに行こう!」
「「「おーーー!!!」」」
「おいおい、テストはいいのか?!」
「問題ありだけどテストより綾っちの方が大切なので!」
あっさりと綾人を優先した陸斗の友達一同なぜか真っ直ぐコンビニに向かいタオルとコーヒー牛乳を買うのだった。
ソノダだったかは一番小さい奴にもタオルとそいつはフルーツ牛乳を選び俺には分からない国の言葉で何やら綾人の事を楽しそうに語りながら綾人の家へと向かう道を歩き慣れた様に足を運んで
「綾っちー!檜風呂入りに来たよー!!!」
「うおっ?!おまえら何でぇ?!」
挨拶と大工の人達に挨拶をしながら家の奥へとまっすぐ向かえば迷いなく風呂場へと向かう。そして扉を開ければ既にお風呂を満喫している綾人はほんのりと顔を赤くしながら大の字になって檜風呂を堪能していた。
この風呂はこんな風に入るのかと眺めている間になぜかソノダ、ヤマダ、カワカミが服を脱いでざっと身体をお湯で流したかと思えばその勢いのまま風呂へと飛び込むように入るのを見て何この人達と陸斗の背中に張り付きながら眺めるのだった。綾人も何か予感をして寸での所で脱出して逃げた物の風呂の縁に置いてあったタオルをさっと腰に巻く当たりこれが風呂のマナーだとマサタカが教えてくれた。
「やべー、檜の匂いサイコー過ぎ!」
「お湯は水道だけど、温泉よりいいかも」
「それよりもただで入れるのって幸せー。
せんせー早くここで住み始めないかな?風呂位毎日洗いに来るから毎日入らせてくれないかなー?」
「いや、お前ら進学してこの街から出てくんだろ……」
「「「はっ!!!」」」
安定の三馬鹿ぶりにオリヴィエ以外が笑うのを見て言葉が分らないのを悔しく思っていればソノダが脱いだ服の所に置いた荷物かあ紙パックの飲み物をもってきた。何故かストローと一緒に。
「綾っち、今回の入浴料です。お納めください」
イチゴの絵が描かれたミルク。なにそれと思っていればカワカミだったか人に俺も同じものを貰った。綾人は受け取ったそれにストローを差して
「仕方がないなぁ」
そうやって飲みだしたのを真似して飲む。
『甘っ!』
ミルクって書いてあったのに想像と違う味に驚いてしまえばマサタカが笑う。
『向こうにはこう言った飲み物はないからな』
ヤマダは綾人に俺はコウジに買ったからと胸を張って言えば大工の浩太がありがとうと言っていた。
『浩太と鉄治と彼は家族だから』
綾人がちゅーちゅーといちごミルクを飲みながら陽の当たるウッドデッキで日向ぼっこをしていた。それを見て楽しんでるなーと思っていればすぐ側に居た陸斗も羨ましそうに眺めていた。
俺の周りには陸斗みたいな主張をしない奴が居なかったのでじれったいと思いつつも圭斗が陸斗に何かを言っていた。なんて言ってるのか聞くのもあれだと思ってそっと視線を反らせば
『どうやらい今は彼らを優先しているらしいな』
マサタカが教えてくれた。
圭斗が陸斗に後で入らせてもらおうなって言ってたから。
テスト中の癖にさっさと風呂に入って返れって綾人も言ってるし、彼らも綾人を心配してたみたいでなんだかんだ「綾っち」「綾っち」と呼んで甘えている。
綾人の仁徳なんだろうなと思うも「綾っち」何て呼ばれているんだっていう方がインパクト在りすぎて綾人の仁徳何て吹っ飛んでいた。
だって似合わないだろ?!
全力でマサタカに訴えてみたけど、あの年頃はああいう風に呼びたがるもんだよとおとななマサタカは達観した口調で俺に言い聞かせていた。少しかわいそうな子を見る目で……
それから一時間ほど彼らはプールの如く遊び、その間俺はマサタカが買って来てくれたコンビニスイーツなるものを堪能していた。
これが二十四時間食べたい時に食べれるなんてと感動しながらこっちに来て裸で風呂に入ったり日向ぼっこししたりする綾人達を眺めながら暫く口にしていなかった甘いケーキを食べるのだった。




