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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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山の音楽家が奏でる山の景色 8

 病院から帰る間車内はラジオが流れる中会話はなく、ただ綾人は静かに泣いて疲れて寝ている間に山奥の静かな家に帰って来た。

 朝宮下から電話かかって来た時に聞いた話しではこんな状態の綾人を就職先から戻ってきて三度お世話をしたと言っていた。

「綾人が帰って来てもこれと言ってお世話しなくていいから。部屋のベットに寝かせて静かにそっとしていてあげて」

「それでいいのか?」

 もっと何かしてやれる事はないのかと思うも

「後はたくさん寝かしてあげて、沢山食べさせてあげて。

 そのうち綾人が色々自分の中で折り合い付けるはずだから。

 後俺から飯田さんに連絡しておくよ。綾人の好きな物作ってあげてって、先生は役にたたないから。好きにさせておくのが先生の正しい使い方だよ」

 そしてできたのがゴミ屋敷。

「また一週間ぐらい前みたいにおばあちゃんになってるけど気にしなくていいから。ただお客様がいるのならご飯の買い出しお願いしても良い……」

「なぁ、まて。

 前から聞きたかったけど綾人の奴なんで婆さんなんだ?爺さんじゃないのかよ?」

 思い出すのは年齢からは想像もできないシャキッとした気の強い婆さん。だけどそれとは違い穏やかな顔で笑みを浮かべていて、きっとそれが綾人の婆さんの、綾人に向ける顔だったのだろう。

「あれね。ほら生活する上で弥生ちゃんの方があの家に最適な動きが取れるじゃない?」

「竈とか、五右衛門風呂とかな畑とか?」

「うん。圭斗は知らないと思うけど、綾人のお爺さんはどちらかと言うと開拓民だったから」

「開拓民?」

「弥生ちゃんの為に花畑作ったり、五右衛門風呂作ったり、炭窯を作ったり。

 囲炉裏が煙たくならないようにって下の畑の一部で炭窯作って、今は誰だったかに管理させてたはず。母さんが炭貰って来るからまだやってるはずだよ」

 誰だったかうろ覚えだけどねと言う物の

「炭窯…… 

 あそこのか。あれも綾人の家の持ち物……」

 この一帯の山の主と言う位には吉野の家を認識していたが敷地広くね?なんて改めて途方にくれてしまうも

「炭が必要だったらついでにお願いしておくから言ってね?」

 そう言う問題じゃあない。

「で、話は戻るけど、時々綾人あんな感じでフリーズするんだ。そん時ほんとに笑えないくらいポンコツでカップラーメンも作れなくなるくらい酷いんだ」

 話しを覚えてたかというか、宮下には言われたくないと綾人が怒る姿は想像が容易い。

「さすがに五右衛門風呂沸かそうとして火事になりかけた所でさすがにヤバいって思ったらしくてさ、まだちょうどここでの一人暮らしも慣れてなかったって言う時だったしね。あの時の綾人なりに考えて出した結論が、弥生ちゃんの行動をトレースするって事だったらしい」

「何じゃそら……」

 先人の真似をするのは悪くはないが、意味わからねーとスマホ越しの宮下にもっとわかりやすく言えと言ってしまうが

「綾人の言う事俺が理解できると思う?」

 謎の自信に満ちた声に項垂れてしまうも、幼馴染は俺を無視してなお説明を続ける。

「そんな感じでわけのわからない事をポンコツ状態で言ったんだ。

 俺が一人で暮しても安心なようにバアちゃんの真似をすればいい。俺を最適化すれば問題ないはずだ、って……

 意味わかる?」

「綾人の事俺が理解できると思うか?」

 奇しくも先程宮下が胸を張って言った事を繰り返す俺は自分でも何言ってるんだかと思うもその前にだ。

「んなこと出来るのか?」

 他人の行動を自分の行動に重ねてトレースするなんて馬鹿げた事をと考えながらも、綾人の頭の中なんて謎だらけだ。きっと一生かかってもあいつの思考なんて理解できないんだろうが、それでもコミュニケーションをとる為に俺達に合わせてくれている。

 そう言えば前になんかの漫画の話しの流れから綾人が言っていた。

「狼の鳴き声はワンワンじゃなかったんだ。

 何でワンワンって鳴き声になったのかは狼が人間とコミュニケーションを取ろうとした結果、その鳴き方になったらしい。

 実際昔マンションで隠して飼っていた野良猫の鳴き方はニャーニャーって鳴き方じゃなくって酷い鳴き方だったけど、幼馴染が可愛らしい声でニャーニャーって語り続けたらいつの間にか真似をするようになって可愛くニャーニャー鳴くようになったしな」

 あの時は宮下と動物の方が人間より器用www何て笑っていたが……

 自分の行動が信用できないからって一番環境に馴染んでいる人の動きを真似するなんて出来るのかとわけわからねーと頭を抱えるも、実際綾人の婆さんになりきって食事も生活も問題ない行動を前回していたのだ。

 動きが婆さんだったけど。

「とりあえずご飯をいっぱい食べて沢山寝ればまたいつもの綾人に戻るから。

 週末様子見に戻るから、それまで頼むね?」

 なんて京都から帰る宣言をした宮下を正直頼もしく感じながら寝ていた綾人を起こしておぼつかない足取りに転ばないようにと支えながら綾人を部屋まで案内してベットに寝かせるのだった。

 

 その後、綾人の叔父から何があったかという話を聞いた浩太さんは怒り、泣きながら母親との決別の話しを聞くのだった。





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