嵐の後の空に虹がかかる様に 2
先生と陸斗に任せて薬の威力を借りて二度寝をしていれば内田親子、そして孫がやって来た。
田舎の人間なので朝の時間にやってくる。
先生に起こされて二度目と言うのもあって大分すっきりとした顔で熱もまだ微熱程度残るも体はだいぶ軽く、とりあえず先生に冷蔵庫にある冷たい麦茶を出してもらう。内田三世代は先生がいた事に驚いたみたいだけど、怪我をしたのでと言えば不思議そうな顔をしながら納得してくれた。
「それで、今日は何の用で?」
うちに来る理由は今ひとつわからないと言うかそれしか理由がないと言うか判っていてもちゃんと聞けば両手をついて陸斗の居場所を聞いてきたが、その様子を孫はぎょっとしたように祖父と父の背中を見ていた。
謝罪する為にあの二人の生家の篠田の家に行ったのだが二人は家を出てもう居ない、と言うかどのような御用で?と言われて逃げるようにこちらに来たと言う。
そりゃ村でも有名な鬼の住む家だ。関りたくないと言うのが本音だろうと、ここで圭斗と会っているので行先を伺いに来たと言う所だろう。
「陸斗君の居場所を、お兄さんの圭斗君でも構いません。
もう一度謝罪を……」
となるよなと先生が言うには陸斗はすぐに二階の本の部屋の押し込んで待てをさせている。今はまだ一人にさせたくないんだよなと、でも仕方がないと言う様に圭斗に連絡をして来てもらう事にした。と言うか、宮下の所に既にいた。うちに来る所を既に内田親子が向かっていると一言言う為に車を止めた所だと言う。宮下にもせっかくなら人手不足だから来いと言って来てもらう事にした。
「とりあえず兄の方はこちらに今向ってますのでもう少しお待ちください」
先生はちょうど話をしていた場所が縁側と言う事もあって縁側に座布団とお茶を用意してくれた。
昨日みたいになかなか立ち上がってはくれない様子に孫はだんだん顔色を悪くしていく。ようやく自分がした事を理解したと言う様に頭を下げっぱなしの親と祖父の姿に唖然としたまま立ち尽くしていた。
「内田さん、お願いです。
内田さんには小屋を建てなおして貰いたいのでこのような事で俺達がぎすぎすした関係になりたくないのです」
「ですが……」
「内田家の一族の皆様にこの吉野の家は支えられてきました。そして先行きは不明とは言え半壊しかけた小屋をまた人が住めるようにしてもらいたいのです。
そのような方を何時までも地面に座らせててはバアちゃんに殴られます」
「ですが……」
バアちゃんなら容赦なく内田さんも俺も殴ってそれでおしまいにするだろう。
内田さんもそんなバアちゃんの気性を知っているだけに夢枕に立たれるとでも思ったのかふるりと体を震わせながら立ち上がり、ズボンに着いた埃を払って浩太さん雅治君に座るように言う。
暫くの間俺は内田さんと小屋の話しをする事になった。
予定どおり明日から工事を始めると言う。床を剥がしてジャッキアップをしてかなめ石の様子を見ながら柱の根もとの腐った所を切り落として土台の交換をしてボルトで締めると言う。歩いた感じ大引は大丈夫そうだけど追加して構造的に頑丈にし、根太は怪しいから交換する事になるだろうと予測を付ける。間取りは昔使用人を住ませていた小さい部屋をどうせなら大きな部屋に纏めようと言う事にもなっているし縁側もちゃんと幅を確保してある。今の母屋の台所の隣の畳お部屋も、トイレと風呂で潰した部屋も使用人や下働きの人が住んでいた部屋だったと聞いていたから昔の吉野は裕福だった事がそれだけでうかがい知れる。と言うか、ほぼ解体した方が早いんじゃない?と思うけど、今時これだけの立派な柱は手に入らねえ、もったいないと大反対されてしまった。
この柱を使って家を建てた内田一族の歴史なのだ。
それ以降もうなるべく口を挟まないようにしようと思った瞬間でもある。
そんなこんなな話を進めている合間にも圭斗と宮下がやってきた。
「おはよー綾人、これ母さんからの差し入れ」
「やったー!おばさんのカレーだ」
「お前ん所の怪しげな野菜カレーだから生産者は責任もって食べると良い」
「おばさんのカレーだから怪しげ野菜も心配なし。
台所に置いたら二階の本部屋をよろしく」
言えばりょーかーいと間延びした声で台所に向かい、それから二階へと向かう足音が一室に入るのを確認して俺は圭斗にも座る様に促して縁側を譲った。
俺と先生は台所の方へ向かい後は当事者を含めた保護者達の話し合い。陸斗は間違ってもこの場には混ぜる事が出来ないが、懐いている宮下がいれば大丈夫だと先生は言う。
暖かなお茶を飲みながら様子をうかがっていた。
案の定と言うかやはり圭斗の怒りの声が聞こえ、縁側にいた内田親子の姿がまた見えなくなっていた。
あそこまで陸斗を追いつめたんだ。圭斗の怒りは半端ないし、やっとあの親から解放されたと言うのにこんな目にあうなんてと言う所だろ。
俺と先生は口を挟まないように、何かあればすぐ間に入れるようにと待機していた。何気なくどうなってるか勝手口から回って様子を見るも内田さん達はまた庭で土下座していて、だけど孫の雅治君だけはまだ何でと言う顔をしていた。
一応親がしているから真似ている、そんな姿に俺は先生に拉致があかないと首を振れば、先生は重い腰を上げてこの話し合いにならない場を終わりにしてくると言った。




