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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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夏がくる前に 8

 車で一時間ほどで郊外型のショッピングセンターにたどり着いた。

 竈の火を消し、昼過ぎに出たので混んではいたが平日と降り出した雨に程々の込具合だった。

 一人ではあまり来た事がなかったが飯田さんはなれたような足取りで人混みの中から一件の店を選び出す。あまり人の多くない見るからにお値段から目を背けたくなる紳士服の店だった。

「なんか場違いじゃね?」

 シャツとハーフパンツ、そしてサンダルという姿はこの店に入るにふさわしくない姿でこれはなんの罰ゲームだろうと逃げ出したい気分はピークだった。

 だけど飯田さんは俺を連れて

「だったら普段着も買っていきましょう。

 すみません、彼初めてスーツを買うのでサイズを見てください」

 手慣れたように店員に言えばメジャーを手にした店員はにこやかに俺の首やら肩幅やらをサイズを取り出したのだった。

 あれよあれよとサイズを取られる間に飯田さんは店員さんと細身の俺に合わせて幾つかのスーツを持って来て着替えてこいと言われた。

 試着室でシンプルな紺のスーツを着せられてリクルートスーツかと思うようなスーツを言われるままに着ていればスーツの型を選んでいるだけだと言った。何なんだと思うも飯田さんはテーブルに広げられた布地を物色している。

 いや、ちょっと待て……

 何種類もの布地を並べてあれもこれもと何気なく言っているもののちらりと見えた料金表と布地の隅に貼られたタグの金額にざっと計算。

 二着で大卒初任給ぐらいって何なんだよ!!!

 顔を真っ青にして布地の金額を指差して「これって!」と驚きで声が出ないまま口パクで訴えてしまうも

「ここは東京にもある系列で、私も叔父もよく使ってる店になります」

 そう言ったようにメンバーズカードを見せてくれた。

「いや、だからって俺飯田さんの料理食べるだけなのにこんな服買ってもらう理由って……」

 たった一回の食事にはならないだろうも、だからと言ってこんな高額なスーツを必要とする場面なんて俺にあるのかと途方に暮れる。

 店員さんは俺たちの会話を聞いて微笑ましくしているものの

「それを言ったら綾人さんこそです。

 俺のために俺の憧れのキッチンを作ってくれるのですから。別宅の修理のついでとは言え、全力でおもてなしするつもりなので身に付ける服もその一つです。この程度は当然ですよ」

 にこやかに笑いながらの言葉に担当していた販売員のおじさんは驚いた顔を隠せなくなっている。そんな販売員のおじさんに

「フレンチのシェフってこう言う職種なの?」

 思わずと言うように聞いてしまったものの「さあ、私もよくは……」と言葉を濁してしまっていた。

 それから他の店を冷やかしたり作業用にファストファッションをいくつか見繕う。お気に入りのスポーツメーカーのシューズを買ったり飯田さんが買ってくれたスーツに合わせる革靴も買ったり。もちろん本日の目的もネクタイも買ってくれた。

 シェフって儲かるんだな……

 な訳ない。

 いくらフランス帰りだからといって、叔父の店で働いているからと言ってもチーフでもない。スー・シェフだ。

 もちろん修行を兼ねての地位で、ホテルのような大きい店ではない為に全般に携わると言う。この店で学んでホテルのシェフに変わったり、田舎で自分お店を追ったりと夢を持つシェフ達も多い為に出入りは激しいもののそれを補うのも飯田さんの役目だ。

 もっともチーフは青山さんが店を開く前からの相棒でこの店の調理場はチーフの為に作られたと言ってもいい動作線が確保されて、店内は青山さんの夢が詰まっていると言う店だが、それだけに飯田さんも自分の為の厨房と言うものに夢を持っているのだろう。

 そんな飯田さんの夢を応援する青山さんが後ろだてなのだ。きっと青山さんの配慮があってのこのショッピングなのだろう。でなきゃこんな買い物の仕方なんてサラリーマンにはとてもじゃないができるわけない。

 飯田さんに言った事はないが青山さんの資産の一部を預かっている身としてはこれぐらいは報酬の一部としてもまだお釣りが来るくらい。ありがたく甘えておこうと時々は俺も自分のカードでショッピング。金は天下の回り物、使ってなんぼなのだから使う時は使うと決めている。あまり使うことはないがスーツを着るならあってもいいかと時計をチョイス。過去に囚われた俺を連れて来てくれた飯田さんに感謝して断りにくいようにお揃いで購入。男同士イタイなと思うもプレゼントとして購入すれば自分がもらうのを想定したことがなかったのか突然目の前に大好きな好物を目の前にしてうろたえるような様子を見て俺は背を向けて肩を震わして満足するのだった。

 だけど飯田さんはちゃんと反撃する手を残していた。

 時計のサイズ調整が終わった後に最初の店に戻りスーツ一式を受け取って着替えさせられた。

 あれ?何で俺掌の上で転がされているんだと思いながら大量の買い物した荷物を持って飯田さんの車で移動して一軒のレストランヘとたどり着いた。

 



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