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人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


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似た者同士、と言うのだろうか 3

 先生と言うのはしっかりとしている、と言うよりもちゃっかりしていると言う人種だと思う。

 至福の食事の後、俺も風呂に入ってこれば先生は机一杯にテストを広げて採点を始めていた。急須を横に真剣な顔で赤ペンでチェックを入れていた物の俺の気配に気づいて

「おう、お前の分だ」

 当然の顔をして採点しろと言う。

「まあね、いつもの事だと思ってるけどね」

「子持ちの、そうだな、大学ぐらいの子供がいる先生は自分の子供に手伝わせるものなんだぞ」

「知りませんよ、文句言われても」

「大丈夫だって。それにうちの学校は先生の数が足りなくて俺に数学、化学、英語教えさせてるの知ってるだろ?」

 しかも三学年にわたって教えて、今年は二年の学年主任と忙しく、そして部活顧問もする人気ぶり。と言うか他の先生が高齢な為に押し付けられてる感が半端ない。まあ、面倒見のいい先生だと言うのはいまだに繋がる俺との付き合いで理解しているつもりだ。

「おかげで今も高校の勉強に携われて勉強させてもらってます」

「まーたまた、在学中ほぼ満点で過ごした天才君が」

「勉強できない奴をちゃんと拾い上げる先生こそ教師の鑑ですよ」

「そういや下の宮下商店の翔太は元気か?」

「相変わらず義姉のいびりに耐えてるよ。先週もうちに食料持ってきてもらったからまだ元気にやってるはず」

「宮下兄の嫁さん相変わらず気が強いからなぁ」

「こっちも買いものしていびられてるよ。いつまで働かないんだってね」

「こうやってしっかり働いてるのになぁ」

「労働の対価がビールだとはなんか割り合わなくネ?」

「宮下の所で買い物しなくて済むだろう」

「見えない所でガッツリ売り上げに協力しているつもりだけど」

 問題を読んで採点をしていく。

 一応正しい答えとてらしていきコンマのミスでさえきちんと×にしておく。

 俺は先生と違って救済はしない主義なので容赦なく点を減らして行く。

「少しは大目に見ろよ」

「三年の数学を俺に回すんだから現実を教えないとな。

 そう言う先生こそ一年生をしっかり面倒見てやんないとこんな三年になるぞ?」

 ほぼ白紙の解答用紙から救済する答えが見付けられない。

 どの学年、どのクラスにはいるとは言う物のこれはまた潔しと何故かカレーの料理方法が書いてあった。俺は首を傾げながらどうするか先生に聞くも

「お前の知ってるカレーの作り方を書いておけ」

 なんて無情な一言。

 とは言え俺はカレーはレトルトカレー派だ。一人分のカレーほどレトルトがちょうどいい上に一晩寝かせたカレー何てスパイスの香りが飛んだカレーなのだ。美味いとは思えなくカレーは作るとしたらいつも食べきり派なので煮込まずにフライパンで適当に作る。

 そういやもう一人フライパンで作ってたなと思い出したついでにその時のレシピを思い出す。

 ターメリック、クミン、コリアンダー、レッドチリ。あの時は湯引きしたトマトを入れて圧力鍋で下ゆでした骨付きの鳥肉に絡めてさっと作っていたなと、水分がトマトだけという感動したカレーだった。対抗してそのレシピを書いておいた。改めてみてヤバくね?と思うもこれは先生の問題。俺の関与する所ではない。

 そして他にも答案の裏側にイラストが描いてあったり、いかにも寝てましたと言わんばかりの涎の染みが付いたものまである。

 三年の一学期の期末だと言うのに余裕だなぁと微笑ましく一クラス分の採点を終えて次のクラスの採点へと移る。

 その前に麦茶を取りに行けば先生も欲しいと一応真剣に採点をしているのかいつもよりも低い声で飲み終えた湯呑を俺へとわたしてきた。

 それからシュッシュッとペンが走る音だけがする。

 五十分かけて導き出した回答の採点はものの十分もかからない。

 そして受験生の為に厳しく採点したテストはさらに短い。

 田舎の小さな県立高校は当然のように生徒数が少なく、クラスも少ない。

 おかげで採点する用紙の数は少ない物の、何とか数学の採点を終えた所でごろりと横になる。

「疲れたか?」

 採点するペンの走る音を聞きながら

「今日は色々と集中したから。目の奥が痛いな」

「パソコン六台とにらめっこしたらそうなるな、ほどほどにしないと目が悪くなるぞ」

「東京にいた時より目は良くなった気がしてるんだけどね」

 んな事あるわけないだろうと先生の苦笑する声を聴きながら目を瞑れば眼精疲労の極致にいた俺はそのまま眠ってしまい、真夜中にふと目が覚めればタオルケットが俺にかかっていた。

 先生がかけてくれたのだろう。顔を先生をが何時も寝かせている部屋へと向ければその手前、俺のすぐ側で俺と同様に枕とタオルケットを腹にかけて寝ている先生がいた。

 気を遣わしたかと思うも先生の周囲には缶ビールが三本。良く飲めるなと感心しながらまた瞼を閉じるのだった。


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